よく寝ること

株の往年の大相場師である故是川銀蔵翁が、相場の心得の第一として、「よく寝ること」と説いています。この言葉は、為替トレーダーのためにあるような言葉です。

月曜の早朝から土曜の早朝まで、ノンストップで為替相場は動いています。ともすると、ニューヨークの相場に見入ってしまい、寝るチャンスを逸してしまうことがあります。

しかし、それを繰り返しやっていると体力を消耗するだけではなく、冷静な判断力も失い、思いがけない損失を被ることになります。そうしたことを避けるためには、割り切ることが必要です。

絶対変えない就寝時間、起床時間を決め、その間は、ロスカットオーダーを入れて、寝ることに専念することが大事です。

昔、私も、36時間ノンストップディールなどと称して、無茶をやりましたが、そもそも、そんなに長時間ディールをすること自体、相場に負けているためでした。

そして、体力を消耗し、頭が回らくなっただけで、結局ロスカットして終わりました。残ったのは疲れだけでした。これでは、やっている意味がありません。

それだけに、割り切って寝ることが大事になるわけです。

頭をカラッポにする

相場に煮詰まってしまったり、相場以外の日々の生活の場でも頭が煮詰まってしまうと、私は頭をカラッポにすることにしています。

具体的に何をするかと申しますと、私の場合は、ウォーキングです。ウオーキング中は、あえて何も考えないことにしています。もちろん、他のスポーツをすることでも、頭を手っ取り早くカラッポにすることができると考えています。

はじめて、頭がカラッポになっていたと気づいたのは、スポーツクラブにはまっていた頃で、トレーニング中、何も考えていなかったことに気づき、それがいかに気持ちをリフレッシュさせているかを知った時でした。

この頭をカラッポにすることによって、煮詰まっていた頭がリセットされ、再びフレッシュな頭で物事が考えられるようになると思います。また、頭をカラッポにするには、座禅を組むとか、釣りをするなども、効果的ではないかと思います。

つまり、頭をカラッポにするということは、無我になるということではないかと思っています。相場が見えなくなったら、頭をカラッポにすることをお勧めします。

旅に出る

ある人に、「お前の趣味はなんだ?」と尋ねられて、思わず「旅行です」と答えてから、我ながら、ああ俺の趣味は旅行なんだと実感したことがありました。

中学生の頃から旅行が好きで、高校生になってからはヒッチハイクをしたり、大学に入ってからは、念願の海外旅行にも行きました。

私の最初の海外旅行先は、ギリシャでした。そして、西ヨーロッパをバックパックを背負っての旅もし、就職後、海外駐在になるとさらに出張やプライベートでいろいろなところに行きました。

こうして各地を回ることは、ディーラーとしては目の肥やしになり、それぞれの通貨の特性を知る上で、とても役に立ちました。

よく旅好きの人が言うように、非日常的なところに行くのが好きです。

エーゲ海のトルコ寄りの島で、ラジオから流れるイスラム独特の抑揚のある歌を聴きながら、ベッドに寝転がって窓外の闇夜に目をやると、ああ俺は本当に遠くにきたもんだと思いました。

日々の生活においても、月に一度は小旅行をしています。

というのも、土日も関係なく24時間365日仕事のことばかり考えてしまいがちで、PCも何もないところに無理矢理でも行かないと、本当の意味で休んだことにならないと思ったからです。

土曜の早朝には金曜の海外市場のコメントを書いてから出発し、日曜の午後帰宅後に週間見通しを書きながら、月に一度の一泊旅行で山へ海へと出かけていきます。

もちろん安上がりな旅行ですが、行った先で山を見たり海を見たりしながら、ボケーッとすることがなによりの気分転換だと思っています。

小旅行は、時間的には限られてはいるものの、自分の気持ちをリセットする上では、十分な休息の時だと思っています。

またこうしてメリハリをつけることが、相場に向かう意欲を新たに駆り立てるには必要なことではないかとも思っています。

水上紀行(みずかみ のりゆき)

バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀において為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売された。詳しくはこちら