年頭に当たり、今後のドル/円の長期見通しを、テクニカル面からお話しします。ここで使うテクニカル分析は、ボリンジャーファイブです。
ボリンジャーファイブは、一般的なボリンジャーバンドが20あるいは21の期間を取るのに対して、もっと短い5を期間として取り、偏差を2にします。
相場がレンジになるとバンドが収束し、そこからトレンドに移行するとき、バンドが拡張します。つまり、このバンドの収束から拡張することにより、レンジ相場からトレンド相場への変わり目を知ることができます。
これを、2011年以降のドル/円相場で見てみますと、中でも、顕著なものは、東日本大震災のあった2011年から2012年9月の収束から、アベノミクスが始まった2012年10月にバンドは拡張を始め、2013年5月までで約25円の上昇を見たことです。
さらに、2013年7月から2014年7月まで収束、その後2014年8月から12月まで拡張し、黒田バズーカ第2弾もあって約20円の上昇となっています。
2015年5月から2016年1月まで収束、2016年2月から6月まで拡張し、原油価格の大幅安により貿易赤字が縮小したこともあって、約23円の下落となりました。
そして、2016年7月から9月まで収束、2016年10月から12月まで、トランプ氏が米大統領に選出されたこともあって、約17円の上昇となりました。
しかし、2017年以降2018年に掛けて、おおむねレンジ相場続き、特に、2018年は9円88銭と、1973年に変動相場制に移行して以来、年間としては最小の値幅となりました。
ただし、それは、ボリンジャーバンドの収束から拡張することにより、レンジ相場からトレンド相場への変わり目を知るという点から言えば、2018年が過去最小の値幅だということは、その後に訪れ始めている拡張は相当なものになる可能性があると考えます。
2011年以降のドル/円の月足チャートを見てみますと、大きく2つの25円幅の価格帯に分けられます。
ひとつは、2011年から2013年頃の75円~100円の価格帯。もうひとつは、2014年以降現在に至る、100円から125円の価格帯です。
そして、2018年に最小値幅で、かつ前年2017年から言えることは114円台が強烈に重く抜けきれず、上に行く余地が限られている中で、大きな拡張の可能性があるとしたら、それは下方向ということになるものと考えます。
そして、2つの大きな価格帯の仕切りとなる100円が大きな意味を持つものと思われます。つまり、100円は相当に堅いサポートになると思われます。
最近の円高傾向に、マーケットも円高を見るようになってきています。
しかし、105円と102円といった見方が多く、これは、多分に100円を意識したものと思われます。
しかし、ニューヨークダウは、昨年の高値から、一時5000ドル下げ、また米国債10年物利回りも、高値から0.5%と急低下しているスケールの中で、ドル/円の105円、102円は、あまりにもスケールが小さく、それで収まるとはむしろ考えにくいと思います。
しかも、マーケットは、2017年以来の狭いレンジに目が慣れてしまい、大きな変動に対しての心の準備ができていないと思います。
既に申し上げましたように、例えばたった7年前の2012年から2013年に掛けてのアベノミクスのときは、8カ月で約25円の上昇を見ています。
決して、ドル/円は、動かない通貨ペアではありません。100円の堅いサポートが下にブレイクしたら、75円~100円の価格帯の下限に向かう可能性はあると見ています。
さらに、申し上げるなら、今回、もし円高になっても、財務省・日銀は、意図的な通貨安誘導を禁じる「為替条項」導入を要求するトランプ大統領がいる限り、為替介入はできません。
あえてやるとしたら、GPIFのような公的な運用機関にドル買いを依頼することですが、そうした行為が米国側に漏れた場合、問題は大きくなるものと思われます。
変動に目が慣れていないマーケット参加者、為替介入のできない通貨当局とくれば、やはり大幅円高に対する備えはしておくべきかと思います。