「自分の相撲を取り切れて良かった。弱い自分が何度も出そうになったが、あきらめずにやって良かった」

これは、11月の大相撲九州場所で初優勝した貴景勝が、優勝後インタビューで語った言葉です。あんなに元気一杯飛び込んでいく力士ですら、場所中も口に出ましたが、「弱い自分が何度も出そうになる」ものなのです。

相撲力士のみならず、鍛え抜かれたいろいろなアスリート達からも、異口同音の言葉を聞きます。要は、どれだけ鍛えた人間でも、弱い自分が出てくるのを抑え、逆に自分を信じようと、自分を鼓舞しているのだと思います。

トレーダーも同じだと思います。

トレードしていれば、自分のポジションに逆風が吹くこともたびたびです。ここで止めてしまおうかと、まさに弱い自分が何度も出てきます。しかし、そこは自分を信じてこらえることができるかどうかで勝敗は分かれると思います。

そして、自分が信じられるようになるには、やはり経験の積み重ねが必要です。

トレーダーの場合、結局実戦の積み重ねにしか経験を積み重ねることはできないと思っています。もちろん、デモトレーダーというものもありますが、リアルなトレードで自分のお金が増えたり減ったりするあの緊張感はデモ取引では味わうことはできないものです。

良く私がたとえに上げるのは、「旅客機の国際線のパイロットと、国内線のパイロットのどちらが腕が上か」という質問です。

結論から申し上げれば、国内線のパイロットの方が上だそうです。なぜなら、難易度の極めて高い離発着を短距離を飛ぶ国内線のパイロットの方が長距離を飛ぶ国際線パイロットよりも頻繁に経験しているためだと聞きました。

まさに、「習うより慣れろ」ということです。

経験・知識を頭に刷り込みこむことによって、無意識な所作にすることが大事だと思います。

これは、特にリスク発生時の対応には、なくてはならないものです。

リスクが発生したら、もちろん事前に優先順位がついた対応策を練っておく必要がありますが、それが頭に刷り込まれ、とっさの判断・行動が順番通りに出来るかどうかで、具体的に成績に響きます。

そして、もちろん「技」を持ち、磨くことです。また、言い換えれば、「技」を持たなければ、自信もつきません。

これは、できるだけ、ご自分オリジナルなものを持つことだと思います。それは、単に変数を変えるだけでも良いと思います。

実は、たとえばFX会社の提供する色々な分析ツールを見ていて思ったことなのですが、MACDにしても、ストキャスティクスにして、RSIにしても、私が新人だった30年以上前と変わらないものを未だに使っているのです。

ですから、初期設定のままでは、もういったいどれぐらいの人が見てきたかわからないぐらい、皆が見ているものだというわけで、それでは当たるものも当たらないと思います。

やはり、カスタマイズして、自分オリジナルなものにする必要があると思います。

こうして、自分に、フィットしたものを作ることです。

最近、そういう意味では、凄いと思ったのは、日本の銀行時代の同期の話でした。たまたま、同期会があり久しぶりに会いましたが、彼は、昔、ボートのオリンピック候補選手でしたが、今は、株のトレーダーをしているとのことでした。

そして、彼の話を聞いて驚きました。彼は、1銘柄だけをやっていて、もう長年手掛けているため、クセもなにもわかっていて、毎年安定的に高収益を上げているそうでした。

彼の例に限らず、オリジナリティーを持つことが大事だと思います。「弱い自分が何度も出そうに」ならないようにするためには、実はいろいろのことをしなくてはならないわけです。

水上紀行(みずかみ のりゆき)

バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀において為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売された。詳しくはこちら