正確に言えば、クリスマスが明けて、翌日の英国のボクシングデーが終わると、金融機関も含め多くの欧米企業が新年度に入ってきます。
今年の場合は、ボクシングデーが28日ですので、翌29日から新年度になる企業が多いということになります。
尚、全ての企業の新年度がボクシングデーの翌営業日からという訳ではなく、企業によっては1月に入った最初の営業日というところもあります。
新年度に入った欧米の為替ディーラーは、例年猛攻を加えてくる傾向
さて、新年度に入った欧米の為替ディーラーは、例年猛攻を加えてくることが多々見受けられます。
これは、なぜかと言いますと、欧米のディーラーの特徴として、利益を前倒しで稼ごうとする癖があるからです。
つまり、バジェット(年間収益目標)を前倒しで稼ぐことが、自分自身への収益プレッシャーを軽減できるからです。
言い換えれば、早めに儲けていれば、"クビ"の危険性も減るわけです。
ですので、年末年始に猛攻を掛けてくる欧米勢は多く、その昔、1月2日にドルを対欧州通貨で1000ポイントぶち上げ、翌3日に逆に1000ポイントぶち下げて、年間のバジェットを達成した投機的で有名な米系銀行という剛の者もいたほどでした。
それほどではないにしても、やはり、最近でも、年末年始は狙われやすいと言えます。
なお、最近の傾向としては、新年最初の営業日に攻撃してくるケースが増えています。
例年、ドル/円が狙われやすい
また、例年、ドル/円が狙われやすいとも言えます。
なぜなら、クリスマスが明けると仕事始めの欧米勢に対して、クリスマスが終わるとお休みの始まりである日本とでは、基本的なスタンスが全く異なるからです。
日本勢が正月気分になり、脇を甘くしている一方、クリスマス休暇を終えた欧米勢は「さあ、攻めるぞ」とばかりにエンジンふかしているわけですから、ドル/円が狙われるのは、ある意味、必然的とも言えます。
そして、欧米勢の攻め方は、巧妙です。
過去にあった例としては、年末、ドル/円をジリ安に持って行って、本邦勢の気を引こうとします。
そして、新年に入りマーケットが始まると順張り方向に相場を本格的に誘導して押し下げます。
たとえば、もどりなく、下げ方向に向かう相場に、最初のうちこそ半信半疑だった本邦勢も、「相場に乗り遅れるな」と、たまらず売ってしまうのです。
ここで、欧米勢は、少し低めの買い注文を出して、静かにショートポジションを利食い始め、買い逃げるという具合です。
そして、気がつけば、欧米勢は買戻してスクエア(ノーポジ)なっている一方、本邦勢はパンパンのショートになっており、後は本邦勢の買い戻しがいつ出るかということになり、それ程、時間を掛けずにロスカットが集中することになります。
年末年始の相場は、十分な警戒が必要
このように、年末年始の相場は、結構荒っぽいですから、十分な警戒が必要です。
注意点としましては、年末年始の相場の多くはトレンド相場ではなく、あくまでも仕掛け相場ですので、上がれば下がる。下がれば上がる相場です。
従って、「この相場は長く続く」と過大な期待を持たないことです。
年末年始相場、一般的に1月15日前後に終わりますので、それまでには、いったん手仕舞うことが、賢明かと思います。
年間でのイベントは!?
こうした年間でのイベントも、他にいくつかあります。
大きいところでは、以下の通りです。
4月 : 本邦勢の新年度--実際に、資本筋や実需が動き出すのは、4月後半で、前半は投機的
6月 : 欧米金融機関の中間決算--今までキャリーしてきたポジションを反対売買して手仕舞
9月 : 欧米勢の下期のスタート、新しいトレンドの探り合い
10月 : ファンドの45日ルールによる手仕舞いが多い
12月 : 欧米勢の本決算による手仕舞い(中間決算程のことはありません)
執筆者プロフィール : 水上 紀行(みずかみ のりゆき)
バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀に於いて為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売される。詳しくはこちら。