「買いが強いうちに売れ」。もちろん、「売りが強いうちに買え」とも言えます。
例えば、買いのポジションを持つときは売りが強い相場のうちに買い、手仕舞うときは買いが強い相場のうちに売るということです。逆も裏返しにして同じで、売りポジションを持つときは買いが強いうちに売り、手仕舞うときは売りが強いうちに買うということです。
マーケットの大勢の裏をかくとも言えますが、もっと具体的に申し上げれば、マーケットの売りが強い、あるいは買いが強いというときは、「何でもいいから売りだ!」、「何でもいいから買いだ!」と盲目的になっていますので、それを待ち構えていると、結構良いレートで買ったり売ったりができます。
つまり、冷静な目で見ていると、良い持ち値のポジションが持てたり、うまく利食えたりできるものです。さらに、米系ファンドなど、10億ドルといった大量のポジションを持つところでは、これは必須です。
売りが強いうちでなければ、新規のロングポジションは良いレートでは作れません。なぜなら、買いが大きいとわかれば、売りが逃げてしまい、ロクロク買えないからです。ですから、ポジションを作るのに、1週間掛けることもあります。
利食いのときもそうです。ロングポジションを利食いたくても、しっかりとした買いがなくては、売りは消化できません。ですから、マーケットが熱意を持って売るなり買うなりするところを、買っていったり、売っていたりしなくてはならないわけです。
私が実際経験したのでは、10億ドルとは行きませんが、それでも結構な額のポジションを2カ月間、バイアンドホールド(買って持ち続ける)したときのことです。
さすがに、そろそろ利食い時かと思い、確か当時注目されていた米貿易収支の発表後に売ろうと思いました。
本来であれば、リスクの大きな指標発表の後、利食い売りをするのはどうかと思いますが、そう決意したのは、マーケットの熱気でした。つまり、過去2カ月余り上昇を続けてきた相場だけに、マーケットは「これは上がるしかない」という熱気に包まれていました。
こうなると、結果が悪くても、何が何でも買いになってしまう雰囲気にマーケットは包まれていました。それなら、予想より悪くても、十分売れるマーケットだなと思い、貿易収支発表後を利食い場としました。そして、結果発表となり、予想より良い貿易収支の発表に、ドル/円は、2~3円吹っ飛びました。
そこからは、ただひたすら、静かに静かに利食っていきました。そして、こんなにマーケットがヒート(熱く)しているのは行き過ぎだと思い、ロングの利食いが終わった後も売り続けショートにして帰りました。
深夜になった帰宅途中、レートを見たところ、売ったところから、既に1円下がっており、ラッキーとばかりに利食い、帰宅して風呂に入って寝ました。
翌日の朝、どれどれと思って、レートを見たらビックリ! 昨晩の高値から10円も下げていました。為替相場に限らず、相場は流動性(交換のしやすさ)のあるなしが重要です。
多分、前夜、マーケットはオーバーヒート(熱くなり過ぎて)して買い過ぎ、気がつけば右も左もロングになっていて、そうなると買いの流動性がなくなり、売りたくても売れなくなって、相場は急落したものと思われます。
こうしたことは、決してまれに起きていることではなく、結構あります。特に、マーケットが思いこんだときが怖いです。
「これは、絶対上がる!」あるいは「絶対に下がる!」のムードが立ち込めたら、赤信号直前の点滅している青信号のようなものです。決して、のめり込んではいけません。
ディーラー仲間でよく言いました。「バスに乗り遅れるな!」と思ったときが、終点間近のときだということを。