前回第152回「今年の下期のテーマは?」では、今月から始まった欧米の実質的な下期のメイン・イベントは、11月の米中間選挙で、それまでは、長期のトレンドを作る投資家は投資判断を下せないため動けないので、レンジ相場は続くというシナリオを立てました。
先週木曜には、トルコ中銀が政策金利を予想以上の24.0%に引き上げたり、米中貿易協議に期待感が膨らんだりで、リスクが回避されたとして、ドル/円は久々の112円台に乗せてはきました。
とはいっても、それでも今年4月以降の108~113円のレンジ内の動きが変わった訳でも何でもありません。
しかし、このところ、気になっていることがいくつかあります。
ひとつは、9月7日に発表された8月の米雇用統計で平均時給が、年率2.9%と、過去2年ほどの2.5~2.7%のレンジを上に抜いてきたことです。
これにより、9月の利上げは既に織り込まれているものの、いったん下火になっていた12月の利上げ観測が強まっています。
そして、ニューヨークダウも、調整を予想する向きも多いのにも関わらず、熱狂感のないままにジリジリと上げ続けています。
確かに、昨年の暮れにいったん急落する場面もあったにはあったのですが、その後、また下値を切り上げたジリ高が続いています。
さらに、米国債10年物利回りも、注目に値します。
2016年半ばに、一時1.45%割れがありましたが、同年末頃から上昇を始め、今年に入り3%台に乗せませした。その後、いったんは緩んだものの、先週末には一時3.00%超えとなり、強気です。
そして、アメリカの産業構造も、FAANG(Facebook、Amazon.com、Apple、Netflix、Googleの頭文字をつなげたもの)と呼ばれる第4次産業へと産業構造が脱皮しているというところは、旧来の産業から脱却しきれない日本とは大きく異なり、日米のファンダメンタルズ格差が拡大しています。
既に申し上げましたように、11月6日の米中間選挙までは、投資家は動かない以上、この9月・10月はレンジだと、前回予想しました。
しかし、歴然としたアメリカの1人勝ち状態では、これは既に兆候が出ていますが、米中間選挙を待たずして、一部投資家はアメリカ買い(=ドル買い)に走り始めているもようで、中間選挙まで投資家は動かないという見方を変えざるを得ないと考えています。
しかし、そうは言っても、今のところ、ガジガジのレンジ相場です。
ただし、ドル/円は動かないという見方が広まれば広まるほど、実はポジションは、上がれば逆張りでショートになり、しかし一方ではアメリカ1人勝ち状態の中でアメリカ買いが出ると、ドル高に、たとえゆっくりだとしても、進行する可能性が出てきているように思っています。
確かに、まだまだハードルはたくさんあるとは思いますが、今はあえて、上を見たいと思います。
そして、これで、もし11月の中間選挙で共和党が勝利をおさめたら、強烈なドル買いになるものと見ています。
あくまでも、ラフなイメージですが、2年前の2016年11月の大統領選挙でトランプ氏が選出されたとき、ドル/円は118円台まで上昇しましたので、取りあえずのメドは、この118円台だと考えられます。これは、中間選挙後1~2カ月で行くものと見ています。
ただし、2年前の118円台に向かう前の発射台(上昇のスタートライン)よりも、今回の発射台は高くなっていますので、多分、118円台では止まらず、さらに上昇する可能性はあるでしょう。
ドル/円の月足チャートを良く見てみると、既に2015年以降の三角保ち合い(もちあい)は、上に抜け始めています。あとは、投資家が本格的にアメリカ買いに出るのを待つだけのような気がします。