9月3日のレイバーデーが終わり、欧米勢の実質的な下期が翌4日からスタートしています。

世の中では、新興国通貨安、米中貿易摩擦という二大テーマで、8月に続き、今月も狙っているように思われます。ただし、この二大テーマは、8月前半に、マーケットが油断しているところに出たからこそ、リスク回避のドル買い円買いになりました。

(ドル買い円買い:ドル/円、ユーロ/ドル、ユーロ/円、ポンド/ドル、ポンド/円等の売り)

しかし、マーケットの大勢は、ドル高円高になってから、相場の更なる進行を確信し、ドル買い円買いにポジションを大きく傾けたため、その反動が出て、8月後半には、全戻しとなりました。

  • ユーロ/ドルの日足 (8月の往って来い相場)

しかし、8月も最後になって、また、上記2大テーマを、下期のテーマにしようとする動きが強まり、再度ドル高円高に行き掛けたものの、もうこの段階では、マーケットがこの2大テーマに対して身構えていたため思うようには、ドル高円高にはなりませんでした。

つまり、もうこれら二大テーマは、フレッシュではなくなったということです。

しかも、マーケットの構造から申し上げれば、相場のトレンドを作る投資家が8月は不在の中、投機筋だけが売ったり買ったりしたのに過ぎません。

なお、ここで言う投資家とは、政府系ファンドとか、年金運用のペンションファンドとか、生保のような機関投資家とか、中央銀行など、いわゆるお堅い人たちです。彼らは、お堅いだけに、8月の夏休み時期は動きません。

一方、投機筋には、宿命があります。売れば買い戻さなければなりませんし、買えば売り戻さなければ、損益を確定できません。つまり、投機筋は、長くはポジションが持てないということです。

8月はこうした投機筋だけの相場だったというのが、8月の往って来い相場の舞台裏です。

そして、9月に入り、投資家たちがマーケットに戻ってくると、トレンドができると期待したいところですが、今年は、多分すぐにトレンドはできないものと見ています。

なぜなら、11月6日にある米中間選挙が、今年下期の最大のイベントと思われるからです。したがって、トランプ大統領の通信簿と言える中間選挙の結果が出るまでは、投資家は投資判断を下せないと考えられます。

これは、過去の例を見ると、良くうなずけると思います。

それは、2016年11月の米大統領選です。あのときは、トランプ氏が大統領になったら、ドル/円は下がると言われていました。

しかし、いざ蓋を開け、トランプ氏勝利が報じられると、確かに最初は、104円から101円に急落しましたが、その後118円まで急騰となりました。私は、正直言って、その上げの意味が分かりませんでした。

ただし、今は分かります。それは、大統領選まで投資判断を待っていた投資家が一気にドル買いに出たということだと思います。

そして、どうしても、激しく動いたところばかりに目が行きがちですが、2016年9月・10月相場は、どうだったでしょうか。

  • ドル/円 週足(2016年9月、10月)

  • ユーロ/ドル (2016年9月、10月)

チャートでも、ご覧のように、ドル/円もユーロ/ドルも、500ポイントぐらいのレンジ相場だったことが分かります。つまり、米大統領選まで、投資家が動いていなかったと言えると思います。

そして、今年の11月は米中間選挙ということになれば、投資家の姿勢は、中間選挙を待つということになり、やはり9月、10月はレンジ相場になるものと思われます。

その間、ジッとはできない投機筋の売ったり買ったりが続き、レンジ相場を更にレンジ相場にすると見ています。

しかも、2016年の9月・10月ほどの値幅は今の相場には求めにくく、更にタイトなレンジ相場となって、中間選挙を待つことになるものと思われます。それだけに冷静さが求められる時期ではないかと考えています。

水上紀行(みずかみ のりゆき)

バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀において為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売された。詳しくはこちら