損切りは「ロスカット」とも「ストップロス」とも言いますが、同じ意味です。そして、損切りは身を守る上で大変重要です。

なにも、そんなに現状レートから近いところに入れる必要は決してありません。

なぜなら、根本的な損切りの意義は、なんらかの突発的な事情によって、相場が急騰あるいは急落した時に、ある程度で、ポジションを強制的に切って、ロスの拡大を防ぐためのものだからです。

ですから、ある程度離れていても良いですから、命綱として入れておくべきものです。

  • 損切りは命綱として入れておくべき(画像はイメージ)

損切りはどうすればいいか

私がトレーディングをはじめた30年以上前には、実は、その発想は組織的にはなく、リスク管理は個人個人に委ねられていました。

ですから、正直なところ、損切りを入れずにトレードをしていました。そして、「これはもう観念するしかない」と決意した時に、ロスカットオーダーに頼らず、自らの手で損切りをしていました。

しかし、この経験自体は、それはそれで良かったと思っています。

なぜなら、ロスカットオーダーに頼ると、「まずい」と思っても、損切りをロスカットオーダー任せにしてしまい、自主的に観念するということをしなくなるからです。

実は、トレーディング上、主体的であることは非常に大事です。ポジションを持つ時、利食う時、損切る時、基本的に自分から積極的にやるべきことです。

しかし、もし自分で決められなければ、ポジションを持つタイミングも、利食うタイミングも逸してしまい、損切りだけが、ロスカットオーダーで強制的に切らされるというどうにも儲からないトレーディングスタイルになってしまいます。

ですから、どのタイミングも、自分から行動すべきだと、私は考えています。

特に言えるのは損切りで、もちらん突発事故を避けるために遠くて良いから、ストップロスをいれておくべきですが、切る時は基本的には自分の手で切るということが大事だと思っています。

私はニューヨークにいた頃、上司から、あるファンドがトレーダーにやらせている自分に合った損切りポイントの見つけ方を、お前もやってみろと言われてやったことがあります。

計算方法は簡単です。うまく行ったトレードの、ポジションを持ってから利食うまでに受けたアゲンスト(不利)幅の平均値を出すもので、私は、半年分ぐらいのデーターから算出してみたところ、平均値は35ポイントでした。

つまり、うまく行ったポジションは、それほどアゲンストにはならないということです。そこで、遊びを10ポイントつけて45ポイント幅の損切りで実際に何年もやりました。しかし、これぐらいだと、結構ヒヤヒヤすることも多く、少々精神的に疲れました。

そこで、既に申し上げましたように、主体的に行動(損切り)するポイントのメドを45ポイントとし、実際の損切りポイントは突発事故を避けるため、倍の90ポイントにおくことにしました。

そして、実地にやってみたところ、気分的に楽な上に、これはまずいと思った時は主体的に止めやすくなりました。

しかも、そのやめたアゲンスト幅、35~45ポイントと、当初設定していたロスカット幅とあまり変わりません。

そして、思ったことは、突発事故を損失の限定としてのロスカットの存在意義は大きいが、もういい大人なのだから、一般的なトレードとしては、自分からやめていくべきものではないかということです。

あと、これはご異論もあろうかと思いますが、利食い幅は、損切り幅より狭くても、それはそれでいいのではないかと、割り切っています。

むしろ、損切り幅より儲けるべきと決めつけるよりも、パッとレートを見て、「良いレート!」と思えば、ドンドン利食っていくことが必要です。儲けも損切りも、こだわりなくやることが大事ではないかと思っています。

水上紀行(みずかみ のりゆき)

バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀において為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売された。詳しくはこちら