第145回で、「ドル/円の見方を(ドル高に)変更します」と、述べましたが、その後の展開を見てみたいと思います。
トランプ大統領の発言で状況が変化
第145回では、テクニカルに、日足でも、週足でも、月足でも、重要なポイントが上に抜けてきているとお伝えしました。また、ドルがアジア通貨に対して上昇し、ドル/円についてもアジア通貨のひとつとして、同じようにドル高が進んでいると申し上げました。
しかし、状況は大きく変わりました。その火付け役は、ご存じ、トランプ米大統領でした。
7月20日の金曜日、トランプ大統領は「EUや中国などが為替を操作し、金利を低く抑えている」とツイッターに投稿しました。これにより、ドル/円は112円台半ばから111円台前半まで急落しました。
トランプ発言に一番震え上がったのは、財務省・日銀だったかもしれません。つまり、円安に持って行くことによって、過度に米国から円高調整を求められては困るということで、目先の円安を調整しようとした形跡があります。
つまり、週末に日銀の緩和策見直し観測を流し、ドル/円を当局はさらに円高に誘導しようとしたもようです。その結果、23日月曜の朝には一時110円台後半まで下げました。
今回のドル高は、多くのドル高派にとっては待ってましたのドル高でしたが、当局にとっては、ドル高円安がトランプ大統領の逆鱗に触れるのではないかと、事前に警戒していたと思います。
しかし、日本は名指しにはされなかったものの、トランプ大統領からのドル高牽制を実際に受けることになり、苦慮しているものと思われます。
日本の当局の求める相場は、動かない相場だと思います。円安に行けば今回のように、トランプ大統領は噛みついてきますし、円高になれば国内景気や株の足を引っ張ることになります。
ですから、たとえば、108円から111円ぐらいのレンジにいてくれることが一番望ましいのだと思います。
そのために、本邦機関投資家が、当局の意を汲んで丁寧に売ったり買ったりして、相場を狭いレンジに収めていたと推測していました。しかし、相場の仕組みとして、狭いレンジに押し込むと逆にエネルギーが溜まってしまい、トレンド相場に転換してしまうものです。
今回、111円を上抜いて113円台まで行ってしまったのは、まさにレンジに押し込んだために逆にトレンド性のある動きが出てしまい、これをトランプ発言や当局の火消しによって、いったんは下火にしたものと見ています。
ただし、これでトレンド性のある動きが終わったかと言えば、それは違うと思います。また、狭いレンジに押し込めば、トレンド性のある動きが出てくると思います。
日本の当局は、あまりにもマーケットに自由度を与えなさ過ぎだと思います。たとえば、ユーロ/ドルなど、何千ポイントという上下動をしますが、為替に触れるのはドラギECB総裁の定例記者会見か、他の限られた要人からの発言です。むしろ、自由度を与えた方が、収まるべきところに収まるものだと思っています。
現状のドル/円推移
さて、直近のチャートから、現状のドル/円がどのように推移しているのか見てみたいと思います。
ドル/円の日足で見てみると、4月後半から7月初旬まで、実質的に2円幅のレンジ相場に押し込まれていました。これにより、レンジブレイクのためのエネルギーが溜まってしまったものと見ています。
そして、7月11日に、ウェッジ(楔形)・フォーメーションの上限である111.03を上抜いて、7月19日には113.18の高値まで駆け上がりました。
しかし、既述の7月20日のトランプ発言をきっかけに、全戻しとなりました。ただし、下げた後は、下げ渋っています。
このことによって、それまでの4月後半からの、実質109円~111円レンジには戻れなくなっているように思われ、再び上値を試す局面が来るように、個人的には見ています。