マーケットにいったん出れば、そこはプロもアマもありません。まったく同じ土俵です。

そうした中でも、特に日々つき合っている手強いプロ集団がいます。その相手が、得意とする手口(売買のやり方)についてお話ししましょう。

手強いプロ集団の正体と手口

その相手とは、ロンドン勢です。ロンドン勢は、たたき上げの職人集団です。ひところはリーマンショックの影響で、英系銀行も銀行批判の矢面に立たされ、為替ディーラーも大変な時期がありました。

しかし、今のロンドンタイムの商いを見ていると、依然と遜色ないとまで言える状態に戻っています。

銀行自体への規制は厳しくなっていることは確かですから、為替ディーラー自体が別の形態で為替取引に参画している可能性はありますが、実際、依然と変わりありません。

夏時間で言えば、彼らは毎日日本時間午後2時過ぎから姿を現し、本格的には、午後3時、4時から戦闘態勢に入ってきます。

彼らが得意とし、頻繁に行っている手口は、「ショート・スクイズ」です。ショート・スクイズとは、ショート筋を炙り出す、あるいは絞り出すという意味です。

つまり、東京はじめアジア勢がショートになっていると気づけば、強烈に買い上げてアジア勢を苦しませ、たまらず買い戻しが入ったところを利食うというものです。

我慢すれば済むのではないかと思われるかもしれません。しかし、その執拗な攻撃は、イギリス伝統のキツネ狩りのように、キツネの心臓が破裂させるまで追いつめて狩るというのに似て、いったんこのショート・スクイズが始まると、我慢しきれず、たまらず降参したくなるものです。

実際にどんなものか、実例を見ながらお話ししましょう。これは、ある日の東京の8時頃から21時頃までの流れです(15時はロンドンオープンです)。

最初は、ロンドン勢も売りで入ってきましたが、下げ渋っていることを確認し、マーケットはショートになっていると判断、一転して買いに回りました。

ここからが、キツネ狩りです。マーケットのセンチメントが下げを見ているのを逆手に、売られても売られても買いの手を緩めません。

その結果、マーケットもある程度までは我慢していますが、売り上がってショートが膨らみ我慢しきれなくなり、あとは、損切りの買い戻しを連発させます。

そして毎度おなじみなのは、ニューヨークが参入してくる日本時間午後9時を前に、午後8時前後に利益確定売りをして、しっかり儲けを懐にいれます。というのも、ニューヨーク勢はアジア勢とは違って手強いことをわかっているからです。

しかし、基本的に、どうしてロンドン勢は、アジア勢のポジションがわかるのかと言えば、アジアタイムにアジア勢がどういうトレードをしていたのか、そしてどういうポジションが出来ていたのかを事前に良く研究しているということがあります。

この例でも、アジアタイム、徐々に下げに加速がつきショートになっていっているのがわかります。

逆に言えば、ロンドンが何をやってくるかは、アジア勢も自分たちが何をやってきたかでわかるわけですから、ロンドン勢がショート・スクイズを始めたらそれに乗って買っていくぐらいの気概が必要です。

水上紀行(みずかみ のりゆき)

バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀において為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売された。詳しくはこちら