アゲンスト(不利)のポジションを抱えたままでは、やられておしまい。
しかし、やりようによっては、活路を見いだすことができる場合もあります。そのためには、何よりも前向きであることが必要です。
倍返し
私は、倍返しを結構多用します。時には、三倍返しをすることもあるため、「三倍返しの水上」と呼ばれていました。
この例は倍返しではありますが、死地に活路を見いだすという意味では、良い例になると思います。
昔、ニューヨークでドル/マルクのディーラーをやっていた頃のある日、多数のヨーロッパの銀行が北米の銀行をダイレクトに呼んできて、ドル/マルクのプライスを聞きまくってきたことがありました。
このバックは、欧米間での資本移動が頻繁に行われていることによります。それは、あたかも敵機の襲来のような有様でした。私もヨーロッパの銀行のひとつから1億ドルのプライスを求められました。この金額は、インターバンクでも、結構な金額でした。
敵は同時に複数の銀行を叩いたようで、プライスを出して叩かれた瞬間に、マーケット・プライスが100ポイントぶっ飛んでしまいました。これにより、私は1億ドルのショートポジションを持ったことになり、評価損はマルク/円が80円とすると、瞬間的に8,000万円のやられとなりました。
そこからは、瞬時に「これは大量のドル買いが出ている。この窮地から抜け出すには、『倍返し』しかない」と腹をくくり、他の銀行を呼んで、売った金額(ショートポジション)の倍、つまり2億ドル買って1億ドルのロングに転じました。
そうしましたところ、運よく「倍返し」した水準から、更に200ポイント急騰し、窮地から逃れることができました。
これはうまくいった例ですが、死地に活路を見いだすには、そういう開き直って「倍返し」するときも状況によっては必要です。
「倍返し」の注意点
倍返しの注意点は以下の通りです
(1)必ずしも、損失を取り戻し、利益に転換する保証はありません。しかし、死地に活路を見いだすという意味からは試してみる価値はあります。プライスが一方向に行く勢いが強いほど、うまく行く可能性は高いです。
(2)自分が思っていた方向感を自分で否定することになりますから、勇気が要ります。
(3)「倍返し」の決断は早く決断することが大事です。決断できなければ、ストップロスがついたら休むに越したことはありません。
(4)「倍返し」は、特に自分で考えていた相場観が全く間違えていたためにストップロスがついた、あるいはストップロスまで届いていなくても、その前に「間違えた」と気づいたときの方が、次の(5)より、うまく行くことが多いと思います。
(5)相場観は合っていたのに、相場に入るタイミングが、早すぎた場合 トレンド自体は元々の考えと合っていますから、ストップロスがついても、あまりそれ以上には行かず引き返してくる可能性が高いので「倍返し」は、お勧め出来ません。
(6)たとえ(5)の場合で「倍返し」したとしても、早めに手仕舞った方が安全です。「往復ビンタ」、つまり、やられたロングのポジションを「倍返し」して、ショートにしたら上昇に転じて、ショートのポジションでもやられる可能性があります。
負けっぷり
英米勢の負けっぷりには、学ぶ点が多いと思っています。彼らが自分の見方が間違っていると認識したときは、躊躇なく一気にロスカットして、すべてのポジションを解消します。
この、自分の非を認め、行動に移すことは、マーケットで生き残るためには必要不可欠なことです。ポジションが大きければ、マーケットに厚みのある東京、ロンドン、ニューヨークの各センターのオープニング直後をロスカットのタイミングにすることが多いと言えます。
彼らのロスカットによって相場が大きく動くこともありますが、彼らにしてみれば、負けたとわかれば、一刻も早くマーケットから脱出することしか頭にありません。 そして、一たびポジションがスクェア(ノーポジ)になれば、傷を癒す、つまり休むことに徹します。
このように、やめること、休むことそれぞれにメリハリがあるため、ロスカットからの立ち直りも早く、翌々営業日ぐらいからはまた普通にマーケットに戻ってきます。
負けっぷりが良ければ、おのずと勝ちっぷりも良くなるものと、個人的には思っています。
(画像は本文とは関係ありません)