ここにきて、円高が進行しています。直接には、2月12日、トランプ大統領が「不公正」な貿易相手国には報復関税で対抗すると明らかにしました。これをきっかけに、年初から下落していたドル/円は下げ足を早めました。
もっと長期的に俯瞰する意味では、月足が適当です。実は、104回でもご紹介しました、月足ベースの変形ダブルトップが、着実に形成されようとしています。
まず、変形ダブルトップについてご説明します。
通常のダブルトップは同じぐらいの山がふたつ並び、その麓に当たるネックラインを下回ってくるとトップとネックラインの高さ分、さらに下がるとされています。
それに対して変形ダブルトップの場合、左の山が大きく右の山が小さいもので、ネックラインを割り込むと左の山のトップとネックラインとの高さ分さらに下がるというものです。現段階では月足ベースで形成過程にあり、右の小さな山のトップ(天井)部分が出来上がり、下がり始めています。
トランプ大統領の存在とドル買い支え
具体的な数字を入れてみましょう。左の山が125円で、ネックラインが100円、この差が25円です。
そして、もしネックラインを月足の実体(ロウソク足の寄り付きと引け値の間の太い部分)で割り込む、つまり実体で100円を割り込むと、トップとネックの差の分、ネックから下がります。すなわち、100円-25円=75円方向に向かうということになります。
実は、大変な円高リスクが内包されているのが今の相場だと言えます。また、文頭でも述べましたように、トランプ大統領の存在は大きいです。
一昨年の2016年までは、財務省・日銀は「投機であれば、介入する」と事あるごとに言い、また緊急会合も度々行っていると公表していたのが、昨年1月、トランプ大統領が就任すると、パッタリと口先介入は止み、深く海底に潜航してしまったかに見えました。
しかし、度々、マーケットでうわさに上るようになったのは、GPIFはじめゆうちょ銀行、かんぽ生命、KKRなど三大共済をはじめとする公的運用機関が、外債運用と称してドルを積極的に買っているということでした。これはあくまでも推測ですが、財務省・日銀の意を汲んだドル買い支えだったのではないかと思われます。
とはいうものの、買ったらそのまま買い放しにすれば為替リスクが膨らむばかりですから、上がったところはしっかり売り戻していたものと考えられます。それを強く感じたのは、114円台で、全く顔の見えない筋が、かなりの額のドルを売っていたことによる値動きからでした。
しかし、こうして昨年来の安値107.30台も下回ってくると、途中に心理的抵抗線である105.円はあるものの、それほどの抵抗もなく、100円に向かうものと見ています。
円高による懸念事項
懸念されるのは、GPIFが国民年金や厚生年金を運用していることです。今の状況では、財務省・日銀のサポートもないままに円高が進行する可能性があります。そのとき、GPIFの外債投資は多大な為替リスクを負うことになり、公的年金の支給にも不安が出てくるのではないかということです。
さらに、最近の輸出企業に感じていたのは、昔の輸出企業に比べて円高抵抗力が弱くなっているということです。まだ、100円以上にいても、悲鳴が出てくるのではないかと思います。これで、100円を割っていくことになると、またしても景気後退になる可能性があります。
また、最近では見ることも当たり前になった外国人旅行者ですが、彼らは為替レートには敏感です。超円高になれば、蜘蛛の子を散らしたかのようにいなくなってしまうものと思われます。そうしたときに残るのは、いつもながらの公的なハコモノです。これがまた、いろいろと問題になるのではないかと懸念されます。