このグラフのベースになる資料は、スイスのバーセルにある中央銀行相互の決済をする国際決済銀行の2016年の調査によるものです。
1日の外国為替取引額の上位五つのマーケットセンターを上げていますが、結構、内容の濃いものです。
ロンドンがシェアトップの理由
まず、ダントツは全体の37.1%のシェアを占めるロンドンです。ニューヨークがトップだと見ている方も結構多いと思いますが、実はロンドンがトップです。
それがなぜかといえば、世界地図をご覧になればおわかりいただけますが、東はオセアニア、アジア、中東、北はロシア、北欧、目の前にはヨーロッパ大陸、南はアフリカ、西には北米、南西には中南米と、ほぼ世界を網羅しています。したがって、潤沢な資金のフロー(資金の流れ)が各方面からロンドンを経由していくわけで、そのため、ロンドンは無理をしなくても儲かるわけです。
しかし、そんなロンドンも、リーマンショックの後、銀行の儲け過ぎで批判され、極端な話ですが、ディーラーのボーナスまで議会で決められたり、コンプライアンス(法令順守)や規制でがんじがらめにされたりして、トレードもろくろくできない状況となりました。それでも、最近は持ち直してきている様子ですが、あのキレの良いロンドンのトレードが本格的に復活してもらいたいものです。
そして、2位が全体の19.4%を占めるニューヨークです。ニューヨークが2位とは意外に思われることと思いますが、それはドルが基軸通貨であることと大きく関係があります。なぜなら、基軸通貨がドルだと、アメリカの輸出入企業は、主にドルで海外と取引を行います。ということは、実需取引の多くはドルであるため、ニューヨーク市場では、実需の為替取引はほとんどないということです。
つまり、ニューヨーク市場の為替取引はほとんど投機の売買ということになるわけです。それが分厚い実需取引・資本取引のあるロンドン市場とは違ってくるわけです。
実際、ニューヨークに駐在したときに驚いたのは、マーケットの英ポンドの最低単位は東京ですら100万ポンドだったのが、ニューヨークではその半分の50万ポンドだったことでした。また、ドル/スイスフランなどは常時値が建っているわけではなく、必要になったらブローカー(仲介業者)に聞いてほかの銀行でスイスフランを出す銀行はないか、探すほどでした。
私自身、ロンドンにも駐在していましたので、このふたつのセンターの違いには、大いに驚きました。
日本がやるべきこと
さて、次の驚きは東京です。三大市場のひとつといわれているはずが、他のアジアの有力センターであるシンガポールが7.9%で3位、そして香港が6.7%で4位、それに対して東京は6.1%で5位と、「なーんだ」と思う結果です。
原因のひとつには、もう20年も前になりますが、バブルの崩壊が痛かったです。バブル期、日本の一般事業法人や機関投資家が、東京外国為替市場で気が狂ったように為替取引をやっていた反動がバブル崩壊後出て、はっきり申し上げて、ほとんどの企業が為替市場から撤退しました。その結果、東京市場は「世界の昼休み」と揶揄されるほどに落ち込みました。
その後、それが立ち直るきっかけになったのが1998年の外為法改正です。これによって、今や世界的にも存在感を示してきている個人投資家が参入してきました。
そんな中にあってまだシンガポールがアジアで強いのは、アジアのセンターの合理化で、シンガポールをアジアの為替の拠点にする銀行が増えているからです。彼らに理由を聞くと、「英語でのスムーズなコミュニケーションが取れるから」だそうです。
日本が、やるべきことは、そんなに遠くないところにあるように思います。