相場を何年もやっていると、「神の手」の存在を否定できなくなります。
相場の下落局面でいくら抵抗を試みても、神の手が下を向いていると抗しきれず、結局下げてしまうとか、上げの相場でいくら下押しされても、反発して高値を更新したりすると、上を向いている神の手の存在を感じずにはいられません。
また相場の転換点で、そのきっかけとなる事由がタイミング良く出てきて相場が動くと、神の手の存在を感じます。こうしたことは非科学的なことですので、無理にお勧めするものではありません。
ただし、相場とのつきあいが長くなると、そういったことを感じるときをきっと体験されると思います。そのときはあえて頭ごなしに否定するのではなく、身を委ねてみてはいかがでしょうか。つまり、神の手を感じたときは素直にそれに従うことが良いように思います。
不思議なこととの出会い
トレーディングを経験すればするほど不思議なこととの出会いがあり、それを否定せずに受け入れることで、更に一歩、トレーディングが上達するように思います。
以下、最近あった具体例です。
上段は、10月31日から11月17日までのドル/円の4時間足です。11月に入って、いったんは上がりましたが、その後はジリ安が続いています。一方、下段は10月31日から11月14日までのシカゴIMMの円のネットポジション(売り買いのネット)の推移です。
シカゴIMMポジションは毎週火曜のポジションを金曜に公表するもので、この該当期間中のポジション抽出日を申し上げますと、10月31日、11月7日、11月14日となります。この間のポジションの枚数(1枚:12,500,000円)の推移は以下の通りです。
ちなみに11月14日の円相当のポジションは、135,999枚×12,500,000円=約1.7兆円です。約1.7兆円とは、円のシカゴIMMポジションの中でも相当円ショートになっていることを示します。
つまり、ドル/円は期間中、ほとんど下げて(円高)いるのに対して、円売りポジションはどんどん増加しています。
しかし、さすがに11月16日から17日に掛けてドル/円の下げ足を速めていますので、次回のポジション抽出日である11月21日には、円売りポジションも減ってはいるものと思われます。
要は、申し上げたかったことは、いくらドル・ブル(ドルに強気)になって、ドル買いポジションが増えていっても、神の手が下を向いていれば相場は下がるということです。もっと一般的な言葉で申し上げれば、トレンドが下を向いていたらいくら買っても下がるということで、これが相場の不思議なところだということです。
ただ、現実的にこの下げ相場で何が起きているかは、値動き分析から説明がつきます。
つまりドル買い志向が強く、しかし高いところではなかなか買いづらいので、ジリ安の過程で値頃感(下げもこの辺かな)から、ドルを押し目買い(円売り)したために、どんどんドル買いポジションが増えていきました。
しかし、それでも上がらず一人止め二人止めしていきましたが、下げたところでは、新たに買いで入ってくるマーケット参加者もいて、結局円売りポジションは増えることはあっても減らないまま来ましたが、とうとう先週後半から、投げに転じてきているものと思われます。
しかし、まだ円売りポジションは相当額あるものと思われますので、続落の可能性は高いと見ています。
いずれにしましても、これだけドル買い円売りをしている上に、本邦機関投資家が112円以下でも買いで待っているという話もあり、買ったために下がるという神の手はまだまだ下を向いているように思われますので、下値にはご注意ください。
執筆者プロフィール : 水上 紀行(みずかみ のりゆき)
バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀において為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売される。詳しくはこちら。