このところの日経平均とドル/円は異例な動きになっています。下記の二つのチャートを見比べてみましょう。

上段:日経平均(日足)、下段:ドル/円(日足)

9月に入り顕著になっていますが、これまで株高円安(あるいは株安円高)であったものが、株高円高(あるいは株安円安?)になりかけています。

そもそも株高円安(あるいは株安円高)はいつからかと言えば、2008年のリーマンショックからでした。リーマンショックが勃発すると、米系大手証券会社は米株の急落によって大きな損失を被りました。そしてこの損失を穴埋めするために、当時盛んに行われそして利益が出ていた、円キャリートレード(高金利通貨買い円売り)のポジションを大量に手仕舞おうとしました。

つまり、合わせ切り(損失の出ている株を手仕舞うのと同時に、利益が出ているキャリートレードのポジションも手仕舞うことによって損失を薄めようとする)を行いました。

しかし、円キャリートレードの手仕舞いにあたっては、高金利通貨の流動性が極めて低く思うように手仕舞えませんでした。これにより、高金利通貨が急落し、例えば、豪ドル/円などは3カ月前後でほぼ50円の大幅な下落を見ました。

豪ドル/円(月足)2008年9月前後

しかしこれ以来、株安のリスクを回避をしようとする場合、円買いすることが習い性となりました。つまり、リスク・オフ(円買い)、リスク・オン(円売り)の発想が、リーマンショック以来これまで続いてきたということです。

しかし、最初に戻ってここのところの株価とドル/円の関係を見比べてみますと、株高円高となってきていて今までと様子が違います。

この背景は、リーマンショック以降のグローバルな景気後退・金利下落局面が、最近、IMFも指摘しているグローバルな景気回復見通し、それに伴う金利上昇局面へと転換していることが、従来の株と為替の関係に根本的な変化をもたらしてきている可能性があります。つまり、相場構造の大転換期になろうとしているものと見ています。

ただし、まだマーケットのコンセンサス(同意)を得ていない上に、押しつけられることを嫌うマーケットのことですから、これから身を持って経験し、痛みを味わってこそ、納得するのではないかと思います。

なお、こうした大転換がこれまでなかったというわけではなく、古くは終戦、プラザ合意、リーマンショックなど、全くガラリと時代が変わってしまったことはあり、今回が、2008年9月のリーマンショックからだとしても、たった9年のことですから特に驚くには値しないと思います

ただ、こうして見方を大きく変えるにあたっては、ひるまず自分を信じることが大事だと思います。あれだけトレーニングを繰り返して、マインド・コントロールをしようとしているスポーツ選手ですら、自分を信じることがいかに大変かをことあるごとに語ってくれますが、常に決断を求められるトレーダーもまた、「自分を信じる」ことが大切だと思います。

スポーツ選手ならトレーニングでどうにかなりますが、トレーダーは実弾で鍛えるしかありません。それだけにメリハリは必要です。

大きな転換のとき、なかなかその変異を受け止められないことはありますが、だからこそ自分を信じることが大切になるわけです。

執筆者プロフィール : 水上 紀行(みずかみ のりゆき)

バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀において為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売される。詳しくはこちら