「国際線のパイロットと国内線のパイロット、どちらの腕が上か」という質問がありました。もちろんパイロットにもよると思いますが、傾向的には国内線のパイロットに軍配が上がるそうです。

なぜかと申しますと、国内線のパイロットの方が、国際線パイロットよりも最も危険とされる離着陸の回数が格段に多いためだと聞きます。つまり、離着陸の回数が多いほど操縦の熟練度が上がるということです。

国内線パイロットのほうが腕が上とされる理由(画像はイメージ)

習うより慣れろ

これは、相場の世界でも言えることです。「習うよりも慣れろ」という言葉もありますが、トレーディングの回数をこなすことで、いろいろな状況を経験し自分のものにすることは大変大事です。

チャートを見る上でも同様で、チャートを見る回数を増やし、いろいろな局面を頭に刷り込んでいくと、直面する新たな局面をどう解釈すれば良いかチャートを見るだけでもわかってくるものです。トレーディングも飛行機の操縦と同じで、刻々と変化する状況に対して反射的に対応しなくてはならない局面があります。

そうした反射的に対応をするためには日頃から経験を積み重ねることが大切ですが、頭に刷り込む、つまり反射神経で動けるようにすることが更に大事なのです。

反射神経

野球中継を撮るテレビカメラマンは、バッターが打った瞬間にその打球がホームラン性のあたりかどうかを判断し、カメラを反射的に打球の飛ぶ先の方向に一気に向け、それで画面中央に飛球を映し出しているという話を聞いたことがあります。

随分前に聞いた話ですので、現在はもっとずーっとハイテクを駆使しているのかもしれません。しかし、まさに経験に培われた名人芸であり反射神経だと思いました。

相場においても、経済指標やテロなどの事件が発生したときにはその事象がマーケットに与えるインパクトの大きさや、どの通貨が買いになってどの通貨は売りになるといったことを瞬時に判断できるようになることが必要です。つまり、的確な初動ができるかどうかで勝ち負けは決まってきます。また、たとえ負けだとしても、損失の大きさをできるだけ軽減することができます。

経済指標の場合は事前に発表予定日時や予想が公表されますから、身構えてもいられますが、テロなどの突発的な事件の場合は、全く唐突に事態はやってきますので、反射的に事の重大さ加減をざっくりとでも判断する必要があると言えます。

発生時にポジションを持っていた場合、まず、反射的に確認しなくてはならないことは、発生した事態は自分にとって損なのか得なのかの判断です。そして自分にとって損失につながるのであれば、どんなに相場が急騰・急落していようと躊躇せず損切ることです。

往々にしてあるのは、突然発生した事態に驚き固まってしまうことですが、アゲンスト(不利な)のポジションを持っていれば、その間にもどんどんポジションは損失を拡大していくことを忘れてはなりません。

こうした突発的事態への対応は、実弾で取引しているトレーダーには訓練はなく、あくまでも経験の積み重ねによって身につけていかざるを得ないと言えます。

自分の五感を信じる

五感などという非科学的なことを申し上げますが、以上で申し上げた「習うより慣れろ」にしろ、「反射神経」にしろ、つまりは五感を磨くということです。五感が研ぎ澄まされてくると、自分に迫りくるリスクを感じるようになります。

私のインターバンクでの全盛期には、自分にとって不利なことが迫っていることを、事前に感じ取っていました。例えば、機関投資家が大口の取引を持ち込もうとしていると、電話が鳴る前に「来る」と感じました。そうして、リスクを軽減していました。

この感覚を磨くには、やはり経験の積み重ねだと思います。いろいろな数値は客観的なようで、頼ることがあると思いますが、危険を察知して対応するには、五感にはかなわないと思います。

※画像は本文とは関係ありません。

執筆者プロフィール : 水上 紀行(みずかみ のりゆき)

バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀において為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売される。詳しくはこちら