大幅な景気後退の中で、減益・赤字企業が相次ぐものですが、そんなご時世でも、経常利益が前期に比べて2ケタ増でかつ最高となる企業も、そこそこあると言われています。
それらの企業に共通するキーワードは、「独自性」です。 「独自性」が正しく行われていれば、他との差別化ができ、好不況に関わらず競争を優位に運べます。
トレーディングでも「独自性」が重要になる理由
個人的には、為替のトレーディングでも、この「独自性」が大事だと言えるのではないかと思っています。 相場観という点でも、皆と同じような相場の見方になって同じようなポジションを持てば、マーケットのポジションは一方向に偏ってしまい、結局はポジション調整に巻き込まれてしまいます。
たとえ同じような相場観を持つにしても、人より早く相場に入って、皆が気づいてポジションを持ち始めたところを、逆に利食いのタイミングにするとか、全く大勢とは違う見方でポジションを張り、大勢が違うと気づいてロスカットしてくるところを涼しい顔をして利食うとか、独特の相場観を持つという「独自性」によって道は開けます。
また、流動性の低い通貨はお勧めしませんが、あまり一般的でない通貨ペアの達人になるとか、トレーディングの一般的とされる期間や時間帯を変えるとか、MACD・ストキャスティックス・RSIなどポピュラーな分析法でないものに精通するとか、いろいろ工夫の余地はあると思います。
私の邦銀時代の同僚がやっていたことですが、当時、ロイターからの情報は、ロール紙にプリンターで、ジコジコと印字されていました。彼は、この印字された用紙を、巻き直し、古い分から、全て目を通していました。それを、毎日繰り返すことで、千三つ(千回に三回のチャンス)で、貴重な情報を見つけ出し、実際に情報にしたがいポジションを張り、儲けていました。このスタイルは、足で稼ぐデカのようであり、学ぶべき点は多いと言えます。
つまり、「人の行く裏に道あり花の山」なのです。そのためには、相場観を鍛え、またいろいろなことを経験し、また学ぶ必要があります。 利益を得るということは、決して簡単なことではありませんし、道端に落ちているものではありません。工夫と努力があってこその利益獲得だと思います。
なお、諸般の事情から、情報収集の仕方自体が大きく変わってきています。2008年のリーマンショック以降、銀行批判が内外で強まり、現在では、銀行はコンプライアンス(法令順守)や規制を受けて、情報を外部に漏らすことはできません。
実際、海外では、顧客情報の漏えいで、銀行の為替担当者が逮捕される時代ですから、銀行も、また担当者も相当神経を使っていると言って過言ではありません。
こうした時代に大事なことは、工夫、言い換えれば推理だと私は思っています。つまり、実際の情報は得られないのですから、関連する状況を推理して利益につなげるということです。
例えば、2011年8月と10月に、政府・日銀は、大量介入を実施しました。あまりの巨額介入のため、誰も太刀打ちできず、何をやったかと言えば、政府・日銀と一緒にマーケットもドル買いに回りました。
このことが意味するのは、マーケットはみんなロングになってしまったわけですから、介入をやればやるほど、上がらなくなるどころか、逆に値が底に張り付いてしまいました。
要は、力に任せて介入しても、効かないということです。介入が効果を見せるのは、マーケットが下を攻めてショートになってこそです。
したがって、逆に、マーケットのロングポジションが膨れれば膨れるほど、結局下がりやすくなるということを推理することが大事です。
執筆者プロフィール : 水上 紀行(みずかみ のりゆき)
バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀において為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売される。詳しくはこちら。