さて、今週末には9月になります。9月から欧米の本決算のある12月までによく出る傾向がありますので、トレーディング上、十分注意してください。
ここで、例としてあげたのは2005年の9月から12月までの動きです。
9月に入り、第1週の月曜がアメリカの「レイバー・デー(Labor Day/労働者の日)」となります。今年で言えば9月4日がその日です。そしてその日が明けると学校は新学期となり、ファンドマネージャーも下期のトレーディングを開始します。ここにあげました週足チャートでも、9月早々からトレンド相場になっていることがわかります。
こうしてトレンドになることが全部上げという訳ではなく、下げのときもあり得ます。しかし、傾向的に上がる場合が多いように思っています、
アマチュアがプロに勝利した記念すべき年
さて、この2005年を例にあげたのにはいくつかの理由があります。ひとつ目は、この年が「アマがプロに勝った」記念すべき年だからです。
個人が為替に参入できるようになったのが1997年で、詐欺まがいのことをされた時期もありましたが、それを乗り越えて今の個人層があると思います。そして2005年の9月相場で、個人層は高金利通貨買い円売りを積極的にトレードして儲けに儲けました。
一方、プロディーラーは相場、特に一方向への動きには必ず調整が入るからという彼らの経験則から個人に対して売りで応戦しました。しかし、個人層の買いはビクともしないどころか、それ以上に買ってきました。これにはプロも勝てず、売ったポジションを損切り的に買い戻しためにさらに相場は上昇しました。
この、アマがプロに勝った話は新聞にも載るまでになりました。こうしたことでアマも自信をつけましたが、実はそれからが試練でした。
相場の流れは永遠に続くものではない
12月に入り、相場は高止まりしていました。そこへ米貿易収支の発表があり、結果は予想外に悪いものでした。
アマは「大丈夫」で押し切ろうとしましたが、そこに百戦錬磨のシカゴIMMが現れ、強烈な売りを浴びせ掛けてきたため、一気に約6円も下げました。その後いったんは戻そうとしたものの、急落だったために売り遅れたマーケット参加者が多く、本当にポジションが調整されるまで半年かがりとなりました。
相場が一方通行になるとなりがちなことですが、「この相場の流れは永遠に続く」という誤解が生まれます。覚えておかなければならないことは、「(相場の流れは)永遠に続かない」ということで、どこかでは利食わなくてはなりません。
この話には後日談があり、9月の段階でシカゴIMMは相場をドル高に誘導させようとした模様です。そしてマーケットを上げようとサポートし、12月決算のころの米貿易収支で、結果がどうであれ、利食う方針でいたということです。しっかり取るだけ取っていった感がありますが、これが世界トップレベルのトレードです。
最初に申しあげた9月~12月は確かにひとくくりではありますが、2012年のアベノミクス相場のように米系ファンドがそのテーマに乗り、12月どころか翌年の5月まで買い上げたケースが、まれにではありますが過去にありました。
やはり基本系は知っていても色々な応用編がありますので、冷静に見ていく必要があります。
執筆者プロフィール : 水上 紀行(みずかみ のりゆき)
バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀において為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売される。詳しくはこちら。