ANAマイレージクラブやJALマイレージバンクで貯めたマイルは、同じアライアンスに加盟している航空会社をはじめ、提携航空会社の特典航空券に交換できることは前々回前回の連載で取り上げたが、あまり知られていないのが系列のLCC(格安航空会社)の特典航空券への交換。国内線では片道5,000~6,000マイルでLCC便に乗れてしまうなど、上手に活用することで費用対効果の高い特典交換になるのだ。

  • ANAマイルはバニラエアで、JALマイルはジェットスター・ジャパンで、それぞれのマイルを特典航空券に交換できる

    ANAマイルはバニラエアで、JALマイルはジェットスター・ジャパンで、それぞれのマイルを特典航空券に交換できる

LCCでも20kgまで預け手荷物が無料

ANAマイレージクラブでは、グループ傘下のLCCとして、バニラエアとピーチ・アビエーションの2社があるが、このうちバニラエア便に限って特典航空券の予約が可能となっている。また、JALマイレージバンクでも、JALが出資しているジェットスター・ジャパン便への特典航空券への交換が可能となっている。

両社の特典航空券における共通部分としては、国内線・国際線共に片道・往復の両方で特典予約が可能なほか、国際線においては燃油サーチャージの設定がLCCではないことから、ANAやJAL便の国際線特典航空券で予約するよりも金銭部分の支払額が少なくなる。また、必要マイル数もANAやJAL便よりも少ないケースが多い。

さらに、LCCの航空券を有償で購入する場合には、預ける手荷物の料金は別途必要になるが、両社共に特典航空券利用時には、20kgまでの預け手荷物料金は含まれているのもポイント。ただ、事前の座席指定料金は含まれていない。

  • ジェットスター・ジャパン特典航空券は便出発の24時間前まで可能だが、電話予約(手数料2,160円)のみでの対応となっている

    ジェットスター・ジャパン特典航空券は便出発の24時間前まで可能だが、電話予約(手数料2,160円)のみでの対応となっている

一方、ANAマイレージクラブの「バニラエア特典航空券」とJALマイレージバンクの「ジェットスター・ジャパン特典航空券」では大きく異なる部分もある。ANAマイル利用のバニラエア特典航空券ではインターネットからのみ予約可能であるのに対し、JALマイル利用のジェットスター・ジャパン特典航空券はインターネットからの予約はできず電話予約のみとなっている(加えて航空券1枚あたり2,160円の手数料が必要)。

また、特典航空券の予約締め切りについては、バニラエア特典航空券では搭乗日4日前までであるのに対し、ジェットスター・ジャパン特典航空券は便出発の24時間前まで可能となっているなど、それぞれでルールが異なるのだ。

7月1日就航の成田=石垣線もANAマイルで

気になるのは、LCCの特典航空券でどこへ行くことができるのかだろう。ANAマイルを使ったバニラエア特典航空券については全路線が対象で、成田発着の国内線では新千歳/函館/奄美大島線は片道5,000マイル・往復1万マイル、那覇線は片道6,000マイル・往復1万2,000マイル、7月1日就航の石垣線は片道8,500マイル・往復1万7,000マイルで特典交換可能。

ANA国内線特典航空券(レギュラーシーズン)では、北海道往復で1万5,000マイルであることを考えると、往復で5,000マイルも少なく済む計算となる。那覇往復もANA便だと往復で1万8,000マイル必要なので、往復で6,000マイル少なく済む。そのほか、関西=奄美大島線や7月1日就航の那覇=石垣線も片道5,000マイル・往復1万マイルでの特典交換が可能だ。

国際線については、成田からの台北/高雄/香港線及び関西/福岡/那覇からの台北線は片道8,500マイル・往復1万7,000マイルで特典交換できるほか、成田からのセブ線(フィリピン)は片道1万5,000マイル・往復3万マイルの必要マイル数になっている。

  • 成田/関西/福岡/那覇=台北線は片道8,500マイル・往復1万7,000マイル

    成田/関西/福岡/那覇=台北線は片道8,500マイル・往復1万7,000マイル

注意しなければならない点は、通常の特典航空券においては無料で便変更が可能となっているが、バニラエア特典航空券については4,000円の手数料が必要で、バニラエアのコールセンターでの手続きとなる。土日祝はコールセンターが営業していないので、変更希望便及び予約便の1営業日前までに変更手続きが必要だ。また、キャンセルはできず、特典航空券が未使用であれば変更は可能だが、マイルの払い戻しは不可となっているので気をつけよう。

JALマイルも片道5,000マイルから使用可能

JALマイルを使ったジェットスター・ジャパン特典航空券については、成田発着の国内線では関西線は片道5,000マイル・往復1万マイル、新千歳/福岡/那覇/高松/松山/大分/熊本/鹿児島線は片道6,000マイル・往復1万2,000マイルとなっているほか、関西や中部発着の国内線も片道6,000マイル・往復1万2,000マイルの設定となっている。

国際線では、成田から就航している台北/香港/マニラ/上海線、関西から就航している台北/香港/マニラ線、中部から就航している台北/マニラ線は片道1万500マイル・往復2万1000マイルで特典交換が可能となっている。

  • 成田/関西=香港線は片道1万500マイル・往復2万1000マイル

    成田/関西=香港線は片道1万500マイル・往復2万1000マイル

最初にも触れたが、電話予約のみで航空券取扱手数料の2,160円が必要となるほか、現状では成田=宮崎/上海線、更に9月に就航予定の成田=長崎線は特典航空券の対象外となっている。また、予約変更については空席があれば便出発前に手続きをすることで可能(ただし、航空券取扱手数料として2,160円が必要)なほか、航空券未使用時については3,000マイルの手数料を差し引いたマイル数が戻ってくる。

制約はあるものの、LCCの特典航空券への交換が5,000マイルからできるのは大きいポイントだ。また、往復に必要なマイル数を保有していない時や満席で特典予約ができない時など、片道は特典航空券、片道は航空券を別途購入することもできる。さらに、20kgまでの預け手荷物が含まれているのもありがたい。

ANA・JAL共に、LCC便への特典航空券はマイレージ会員本人/配偶者/2親等以内の親族のみが利用可能となっている。つまり、家族旅行にもマイルが使えるということだ。フルサービスキャリアのANAとJALで貯めたマイルをLCCで特典利用できることを知っているだけで、特典利用の幅が大きく広がると言えるだろう。

筆者プロフィール: 鳥海高太朗

1978年千葉県生まれ。帝京大学経済学部地域経済学科非常勤講師。また航空・旅行アナリストとして、航空会社のマーケティング戦略を主研究に、自らも国内外を様々な航空会社を利用しながら体験談を中心に各種雑誌・経済誌などで執筆しているほか、テレビ・ラジオなどにも出演するなどメディアを中心に情報発信をしている。著書に「天草エアラインの奇跡」(集英社)、「エアラインの攻防」(宝島社新書)などがある。