女優の波瑠が主演するテレビ朝日系ドラマ『未解決の女 警視庁文書捜査官』(毎週木曜21:00~)。原作の麻見和史氏は、映像化された作品をどう見たのか。 5月31日に放送された第7話のチェックとともに、7日で最終回を迎える同ドラマの特徴を振り返ってもらった。
第7話と最終話は最終章として、前後編の構成に。03年に未解決の現金輸送車襲撃事件が起こり、18年に二千円札と9枚のアルファベットカードが残される不可解な殺人事件が発生。そのカードを鳴海理沙(鈴木京香)が解読したところ、SOSメッセージらしいことが判明。やがてまた別のカードが発見されるという展開だ。
ほぼ原作どおりだったトリック
アルファベットカードの解読は、原作小説『警視庁文書捜査官』にも登場する。麻見氏は「理沙と矢代朋(波瑠)がカードを並べ変えて意味を探るところも、ほぼ原作どおりです。小説を執筆するとき、私が一番苦労したのはこの部分でした」と振り返り、「これまでドラマオリジナルの仕掛けやトリックが描かれてきましたが、第7話で原作のアイデアを使っていただけて本当にうれしく思っています」と語った。
また、第7話について、麻見氏は「過去と現在の事件がそれぞれダイナミックに描かれていました」と感想を述べる。さらには、「一般的な刑事ドラマではすでに発生した事件を扱うことが多いのですが、今回は大手コーヒーチェーンの社長の娘・百々瀬佐智(谷村美月)がさらわれた可能性が出てきます。早く救出しなければという警察側の焦りもあり、スピーディーな展開となってとても見応えがありました」と話した。
そして「衝撃的だったのはラストの部分」と振り返る。「朋があんなことになったというのも驚きですが、理沙が何かを感じたようなシーンには、ハッとさせられました。これまで私たちは理沙と朋が少しずつ歩み寄るのを見てきましたから、ここは非常に効果的な場面だったと思います」(麻見氏)。
このドラマの特徴について、麻見氏は「刑事ドラマでバディものは定番ですが、『未解決の女』は女性2人を組み合わせたところに新鮮味がありました。しかも同年代の女性ではなく、歳の差のあるコンビです」と解説。この設定についても、「朋は刑事として成長できるし、理沙は先輩としての立場を自覚することができます。その結果、それぞれが相手の不足部分を補いながら行動する場面も増えていきました。そういう2人の関係の変化は、とても魅力的なものだったと思います」と分析する。
嫌なキャラクターが1人もいなかった
ドラマに登場する登場人物についても、麻見氏は「熱血キャラの朋に引っ張られる形で、財津係長(高田純次)や草加(遠藤憲一)が捜査に乗り出し、チーム感が出てくるところも見どころでした。特に第6話では、朋を勇気づけるように先輩たちが動いてくれて、非常に頼もしく感じられました」と話す。
麻見氏は、沢村一樹演じる古賀室長について、単なる憎まれ役ではなかったと振り返る。「テレビドラマでは多くの場合、嫌なキャラクターが登場するものです。『未解決の女』では古賀室長がそういう立ち位置だったと思いますが、話が進むにつれ、彼にもコミカルな部分が見られるようになりました」(麻見氏)。
そして「川奈部係長(光石研)はベテラン刑事としての存在感を持っていたし、迫力がありながらユーモアを感じさせる桑部(山内圭哉)の演技もよかったですね。岡部(工藤阿須加)は朋に惹かれながらも厳しく捜査に取り組むという役で、好印象でした」と語る。「こうして見てくると、このドラマには嫌なキャラクターが1人もいなかったことが分かります。だからこそ私たちは安心して彼らの行動を見守り、その変化を楽しむことができたのでしょう」と解釈した。
ところで麻見氏は「エピソードによっては『文書解読係が捜査しなくても解決できたのでは?』と感じた方がいらっしゃるかもしれません」と指摘。しかし「もともと理沙たちは捜査を進める”きっかけ”を見つけるのが仕事です。そのきっかけによって捜査本部の刑事たちが動くわけですから、理沙たちの存在はやはり重要だと思います」と話した。
最後に麻見氏は「理沙と朋のバディ感、親しみやすい登場人物たち、そして文書解読という新しい捜査方法。この3点が『未解決の女 警視庁文書捜査官』の魅力なのではないかと私は考えています」と、実写化されたドラマを総括した。