メキシコの首都であるメキシコシティは、人口2,000万人を抱える巨大都市。そんなメキシコシティの中心部に、世界遺産登録地であるソカロ地区はある。このソカロ周辺には、有名な観光地が集中し、「テンプロ・マイヨール遺跡」、「国立宮殿」、「メトロポリタン・カテドラル」、「青いタイルの家」など一度は聞いた事があるようなスポットが徒歩10分圏内に立地している。
ソカロ地区から伸びる通りの様子 |
ソカロ地区では現在、とある深刻な問題に直面しているという。それは地盤沈下。テンプロ・マヨールを中心にあちらこちらで地盤沈下現象が起きており、少し離れたところから都市を見てみると、建物が水平ではなく、ガタガタと歪んだように建っているのがわかる。
なぜこのような現象が起きているのであろうか。それは、歴史を振り返ることで納得ができる。ここで一旦、16世紀にさかのぼるとしよう。現在のメキシコシティにあったアステカ帝国は、わずか500人ほどのスペイン兵を率いたエルナン・コルテスによって制圧される。その後、スペイン人たちは神殿などを次々と破壊し、その上に土砂を盛って埋め立てていったという。コルテスはそこへ新たに宮殿や大聖堂を建設していくのだが、時間の経過と共に、土砂によってつくられた地盤が建築物の重さに耐えることができなくなり、現在の地盤沈下現象へとつながっていく。
ソカロ地区中心部に建つメトロポリタン・カテドラルは、メキシコでも最大級の教会。この有名な教会もまた、地盤沈下の影響を受けている。歪みが激しくなっていくため、地面を掘りつつ水平レベル調整しているとのこと。
ソカロ地区にある国立宮殿は、アステカ帝国宮殿跡地にコルテスが建てた宮殿だ。無料で見学することができるが、警備によるボディーチェックを受けなければいけない。宮殿内部を見学しながらも、「ここの地中にも、素晴らしい遺跡があったのだろうなぁ」と考えてしまう。
この宮殿内部では、メキシコを代表する画家ディエゴ・リベラが描いた壁画を見ることができる。アステカ時代から現在までの歴史絵画となっており、制作期間はなんと16年!!オギャーと生まれた赤ちゃんが中学生に成長するような年月なのよ、16年は……。
さらに観光は続き、次はサンフランシスコ教会と青いタイルの家。この2つは、日本人にとっても馴染みのある建物だ。17世紀初め、伊達政宗の家臣である支倉常長は、遣欧使節を率いてヨーロッパへと渡るのだが、フランシスコ教会の副使としてこの青いタイルの家にも滞在していたのだという。遠い昔、日本人が滞在した建物に日本人である私が訪れるとは、なんとも不思議な気分である。サンフランシスコ教会は、前述のコルテスによって建てられた教会。ここで支倉常長一行も洗礼を受けたとされている。