テオティワカンには、「太陽のピラミッド」と「月のピラミッド」という2つの巨大なピラミッドがある。ピラミッドを眺めていると、「どうしてこんな壮大な建築物をつくったのか」という素朴な疑問がわいてきた。しかし残念なことに、今はその疑問を解決することができないのだという。それは、テオティワカンの住民たちが文字を持っていなかったので正確な記録的文献などが見つかっておらず、当時の情報が得られない、というのが理由である。また、王の墓も見つかっていないため、「貴族による共和制」であったのか、はたまた「王権制」であったのかといったことも明らかになっていない。テオティワカンは、今も尚多くの謎に包まれている遺跡なのだ。ミステリアスとなると、一層興味がわくのは私だけであろうか……。
話は戻って、ピラミッド。大きくそびえ立つ太陽のピラミッドを初めて真下から見た時は、あまりの存在感に圧倒され、「スゴイ……」と呟くことしかできなかった。上の写真を見ていただきたい。人とピラミッドの対比で、いかにピラミッドが巨大かということがわかってもらえると思う。このピラミッドは、エジプトにあるクフ王のピラミッドに高さでは負けているものの、容積では世界一という可能性もある。
容積で世界一だと断定できないのは、メキシコ・プエブラ州にある「グレート・ピラミッド」の存在が影響している。このピラミッドは、スペイン人による征服後、なんと頂上部分にカトリック教会が建てられてしまったのだ。ピラミッド自体の高さが不明で、それ故に太陽のピラミッドが容積で世界一と言い切れなくなっている。
地上からじっくりと見た後は、太陽のピラミッドを這い上がっていく私たちグループ。這い上がるという表現は決してオーバーではない。あまりの急勾配に、ほとんどの人が設置してある手すりにつかまってよじ上っていた。メキシコシティが富士山の7合目に匹敵する程の高地にあるため、私たちの中には、高山病にかかる人もいた。頂上に着くまでの間、更に空気が薄くなるのを感じ、肺に酸素が届かないような苦しさに襲われて何度も休憩してしまった。
ピラミッドの頂上に着くと、そこには雄大な景色と感動があった。2000年近く前の古代人が建てたピラミッドの上から見る景色は、感慨深いものがある。ここに、約20万人が暮らす大都市が確かに存在していたのだ。
現在、多くの謎を解明するべく、メキシコだけではなく日本からも考古学者らがテオティワカンに集まり、発掘にあたっている。研究の一環で、太陽のピラミッドの地中にある洞窟には宇宙からの軽粒子を測定する機械が設置されているという。これは、ピラミッド内部に存在しているかもしれない空洞(墓室)を探すための機械。数年後には、新発見の事実が発表され、長年にわたって謎のベールに包まれてきたテオティワカンの歴史が紐解かれることになるかもしれない。