共有名義とは - 共有名義は財産保全とリスク対応力を考えて

財産は全て個人に帰します。しかし不動産の場合は額の大きな資産であり、分割もできません。不動産を取得したときは、その所有権を明確にするために所有権保存登記をしますが、二人以上が共同で取得した時は、共有名義として拠出額に応じて、持分比率を明記して登記します。拠出額には頭金の額とローンの借入額などが含まれます。親などから住宅資金援助を受けた額も、受けた本人の出資額となります。夫婦で住まいを購入する時も拠出額に応じて持分を分けます。拠出額以上の持分を登記すると、差額分は共有名義者からの贈与とみなされます。それだけでなく、各自の拠出金額や共有名義として持分を決める場合は、万一の場合にも対処が可能かどうかの視点も必要です。

(C)佐藤章子

住まいの取得資金を負担したらその分は共有名義にしなければなりません。拠出資金に比例して持分負担をするのが原則です。高度成長期の時代と違って、低成長の時代は将来の予期せぬ変化への対応力が弱くなります。共有名義がリスクを少なくできる場合もあれば、その反対の場合もあります。どのような変化が予測されるか、その場合はどう対処が可能かを考えて、頭金の負担やローン借入額等を決める事が大切です。

住まいの取得と共有名義のメリット - 拠出額はその人の実力。実力どおりの持分配分がトラブルを軽減する

共有名義のメリットはいろいろありますが、第一は自分たちにとって最善の住まいの取得計画・返済計画を立てて、その結果として資金拠出額に比例して持分を取得すれば、将来の予期せぬ事態にも対応しやすい形になる点です。拠出額は拠出した本人の実力です。実力どおりに登記する事が、一般的にはリスクを少なくする方向に働きます。

  • 夫婦でも自分の財産を明確にできる

  • 住宅ローンを分担していれば、ローン控除がそれぞれに受けられる

  • 売却の時に、居住用財産の譲渡の3000万円の特別控除がそれぞれ受けられる

  • 子供に相続する時に資産が分散される

住まいの取得と共有名義のデメリット - 共有名義にするに際して、デメリットの知識は不可欠

  • 妻が育児休暇を取得したり子育てのために退職したりして収入がなくなる場合がある

二人の収入を前提にしていますので、片方が無収入になった場合はもう一方の負担が大きくなります。育児は思わぬ事態も発生します。終生働くつもりでも、やむを得ず退職といった事態も考えられます。その様な事態も想定して、資金計画や名義配分を考えることが肝要です。少なくとも育児休暇期間の対策は立てておきましょう。

  • 売却には共有名義者全員の同意が必要

離婚の際や夫婦間以外の共有名義の際は問題になりがちです。

  • 売却時に売却益の分配(または買換え物件の持分登記の持分配分)でトラブルになる場合がある

共有名義にする際にきっちり拠出し金に比例して持分を決定する事が大切です。諸費用の分担もしっかり取り決めておくとトラブルを少なくできます。

  • 離婚の時にトラブルになる

住まいは財産の中で大きな比率を占めます。分割できない資産ですので、離婚となると財産分与でトラブルになります。片方が住み続ける場合は、もう片方が住宅ローンを負担し続けたり、住む方が持分を買取ったりしなければなりません。

  • 資産価値が下がり、売却時にローンの残債が発生した場合

妻2,000万円の現金、夫2,000万円のローンで4,000万円の物件を購入したとします。持分は1/2ずつです。3500万円で売却し、残債は1,800万円とします。持分比率からすると売却による現金の取り分1,750円ずつとなりますが、妻は‐250万円の赤字で夫は-50万円のみで、何となく不公平感があります。

  • 共働きの場合、ローン返済の負担、家事寄与分等、その後の家計管理の取り決めを行う必要があり、面倒である

親との共有名義のデメリット

  • 共有名義人の親が死亡した場合の兄弟間の相続トラブルが発生する場合がある

  • 配偶者が舅・姑とうまく行かず、2世帯同居を解消が難しい

  • 親の土地に夫婦名義の家を建てた場合

建物の共有名義ではありませんが、土地の資産価値は高いので相続時に他の兄弟に分与する資産がない場合はトラブルになります。

(※写真画像は本文とは関係ありません)

<著者プロフィール>

佐藤 章子

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。