マイホームの共有名義、持分比率は「資金拠出に比例して」が大原則!
夫婦で購入するマイホームの持分比率は、資金拠出に正確に比例して設定する事が大切です。拠出金額が少ないのに持分が多いと夫婦間でも贈与とみなされ、贈与税の対象となることもあります。その問題のほかに重要な点は、これからの人生に予期せぬ局面が生じても実力どおりの配分にしておく方が、トラブルを回避しやすくなるからです。なぜなら拠出金額はそれぞれの実力にほかなりません。実力以上の持分にすると対処が難しくなる場合も考えられます。
【事例1】は夫婦でそれぞれローンを組み、50%ずつ持分とした場合の拠出し金の配分図です。同額の頭金を準備し、同額のローンを借り入れ、諸費用も50%ずつ負担する例です。
【事例2】は拠出資金の内容に違いがある事例です。
【事例1】
【事例2】
設定条件 : 夫婦共働きで結婚と同時にマンションを購入
マンション購入費3,800万円、諸費用200万円
妻は預貯金と親からの住宅取得資金の贈与で2,000万円を準備
夫は預貯金がなく住宅ローン2,000万円を借り入れ
新婚生活のための家具や調度類は2人で半分ずつ負担(マンション購入予算外)
持分は拠出金とローン借り入れ費が同額なので50%ずつとする
上記の【事例2】は厳密には頭金1,800万円とローン2,000万円の比率ですが、半分ずつの持分で問題になることはないでしょう。しかし、この事例は今後の夫婦の資産配分上注意が必要です。
諸費用の内訳は借り入れるローンによっては保証金や生命保険料などが含まれる場合があります。その部分は本来ローンを借り入れる夫が負担すべき費用を妻が負担していることになります。
ローン返済は夫婦で行う形になり、最初に頭金を拠出した妻はローン返済も負担することになり、資産形成上不利です。それを解消するには下図のように妻の預貯金額に反映させる必要があります。
下記の図は家事を当分に分担した場合であり、一般的に妻の家事分担比率が高い傾向にあり、そうした場合夫の預貯金はゼロかマイナスになることも考えられます。
極端な事例ですが、頭金を寄り多く拠出したほうが不利にならないように配慮する必要があります。
妻が育児休暇中や退職したときの妻住宅ローン返済は?
妻が育児休暇や子育てのために退職した場合、妻の収入は無くなりますので、妻のローンの返済はできなくなります。その分を夫が肩代わりしたら、それは夫から妻への贈与とみなされ、贈与税の対象になってしまいます。実際は、この期間の妻のローン返済の資金の出所について問題視されるケースは少ないと思いますが、大切なことは互いの財産を尊重することです。「住いは資産である」「努力は資産に反映させる」ことを原則に考えることが、将来のリスクを少なくし、トラブルを回避するポイントなのです。
【対処方法1】妻の預貯金を事前に増やしておく
育児休暇を取得するまでの期間、妻に預貯金を集中させて育児休暇中のローン返済金を準備をする方法です。出産までの期間が充分にあり、夫婦の収入に余裕がないとできませんが、ローン返済以外の生活費はどちらかだけの収入でまかない、節約して出産に備えるのがベストです。事前に繰上げ返済して、毎月の返済額を少なくしておく方法もあります。
【対処方法2】夫が妻に返済金額相当分を贈与する
年間110万円までは基礎控除があり、贈与税はかかりません。しかし、育児休暇が長引く場合や退職した場合、毎年贈与をすることになります。毎年110万円を10年間贈与すると約束した場合、1,100万円から基礎控除分の110万円を指し引いた額に贈与税がかります。先々までの約束はできないのです。それでも年間のローン返済額を基礎控除額以内にしておくと、なにかと便利です。
【対処方法3】妻が夫から借金をする
夫婦間で、住宅ローンの返済を肩代わりする分の金銭消費貸借契約(できれば公正証書で)を結んで、収入が増えたときに返済する方法もあります。若干でも利子をつけて返済することが必要です。実際に返済している証拠を残すことも忘れず行ってください。手数料は必要ですが、復職したら振込み通帳を用意して、毎月夫の口座に約束した金額を振り込むのがベストです。手数料を省くには、返済通帳や領収書で返済を記録し、夫の通帳に毎月入金して、返済分の残高が毎月増えている実績をつくる方法もあります。大切なことは、実際に返済することなのです。
【対処方法4】ローン返済の肩代わり相当分を夫に売却
あまりお薦めしませんが、夫婦間で売買契約書を作成し、持分登記を変更する方法があります。登記費用は必要で、夫は不動産取得税、妻は売却益が発生する場合があります。私はこの方法で親が所有していた住まいの持分を買取りました。売買契約書を作成し、登記も自分で行いました。不動産取得税も多少ですが発生しています。支払いは利子をつけた月賦方式にしましたので、親の口座に毎月振り込みました。他の兄弟に対して後々相続でトラブルにならないように、振込み通帳を保管しています。
(※写真画像は本文とは関係ありません)
<著者プロフィール>
佐藤 章子
一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。