いつも残業して休日も働いているのに、なかなか結果が出ない。
無茶ぶりだと思いつつ、つい「頑張ります」と言ってしまう。
転職したいのにブラックな環境から抜け出せない。
要領よく成功している人を見ると心がざわつく。

ダメな自分は人より努力しないといけないんだ……。そんな風に自分を追い込んでしまう人は少なくないと思います。

もちろん、なにかを得るために努力するのは当たり前。より効率的にできたほうがスマートですが、日本人は特にコツコツ努力することに価値を見出す傾向があります。

ただし、努力することにこだわり過ぎるのもNG。結果が出ないと「努力が足りない」としか考えられず、努力以外の方法を無視するようになってしまいます。

それだけでなく、ふいに結果が出たときでさえ、これは運がいいだけで自分の力ではないと、結果を素直に受け入れられないこともあります。

そんな、努力しているのに結果が出ないと悩んでいる人に多いのが「ドMノイズ」です。

  • 努力中毒とは?

努力中毒になっていませんか?

努力の大切さは、どこの家庭や学校でも、繰り返し教えられます。目標を達成したり、大きな願望を実現したりするためには、努力して当たり前です。

ただし努力にとらわれすぎても問題があります。それは、努力そのものに過剰に価値を置いてしまうこと。 努力が大切になりすぎると、「つらいことをしていれば良いことがある」という勘違いに変換されてしまいます。これが意味なく自分を追い込んで、努力を空回りさせる「ドMノイズ」の正体です。

このノイズに汚染されると、困ったときにとりあえず努力しておこうという、安易な考えに流されて、本当に効果的な解決策にたどり着けなくなる危険があります。

さらに、努力は人に認めてもらいやすいので、結果が出なくても「努力していれば大丈夫」と潜在意識レベルで思い込んでしまいます。これでは、努力するために努力をする"努力中毒"です。

例えば仕事でなかなか成果が出ないけれど、残業時間はナンバーワンだとか、休みなく働いている自分にすがっているような人はいないでしょうか。懸命に努力することは美徳ですが、もしかすると努力の価値を高く見積もりすぎているかもしれません。

努力中毒に陥る原因は、本当の努力とはなにかを知らないからです。一流のアスリートや実業家など、突き抜けた結果を出している人は、人並みならぬ努力をしています。しかし実は本人には、いわゆる一般的なつらい努力、きつい努力をしているという感覚がなかったりします。

スポーツにしても仕事にしても、ただ好きすぎて、もっとうまくなりたい、もっといいものをつくりたいから、ひたすら熱中して取り組んでいる。その打ち込む姿勢が、まわりから見ると、すごい努力をしているように見えるだけなのです。決して、努力することが目的ではありません。

つい夢中になってしまうことや、オタク的に詳しいことなどが、あなたにもありませんか? 努力が苦にならない仕事、やりたいことを見つける。そんな風に少し目線を変えるだけでも、ドMノイズはやわらいでいきますよ。

「TODO」を減らして「STOP」を増やそう

いつも「もっとやらなきゃ」と追い詰められている人におすすめのエクササイズが「STOP(やめること)リスト」です。

TODOリストを書いている人がいるかもしれませんが、その逆です。「もうやめよう」と思うことを毎日ひとつ書いてみる方法です。TODOリストは、どうしても「やらなきゃいけないこと」が増えていくので、つらくなったりします。そして、できなかったことが残ると、「私って……」と凹んでしまいます。

だから、やることを減らす方向で考えてみましょう。「寝る前に勉強する」ではなく「寝る前のスマホをやめる」とか、ですね。

大事なのは、やらされ感がなく、自分で決めて、しかも挫折しないこと。「STOP(やめること)リスト」はそのいい練習になります。

著者プロフィール:山根洋士(やまね・ひろし)

心理カウンセラー
心理学に、ノンフィクションライターとして活躍したインタビュー経験や脳科学などを取り入れて「メンタルノイズ」メソッドを開発し、8,000人以上の悩みを解決。著書に『「自己肯定感低めの人」のための本』(アスコム) など。