「心が休まらない」「不安を感じる」など、忙しい現代社会においてメンタル不調を来す人は少なくないはず。本連載では、臨床心理士の松島雅美先生が心の仕組みをはじめ、メンタルを鍛える方法などを紹介していきます。
→連載 第1回目から読む:「メンタルが強い人」「弱い人」の違いとは?
→前回の話を読む:心が疲れにくい人のスキル「モニタリング」って何?
前回「客観的な自己理解」は、心を健康に保つために必要なスキルだとお話ししました。最終回となる今回は、これまでのお話を踏まえて、「病まない」自分を作るもっとも大切なことを説明したいと思います。
Je respire代表取締役であり臨床心理士の松島雅美先生は、専門用語を使わない心のケア方法「メンタルブレス」を監修。誰でも簡単に日常生活に取り入れられる「メンタルブレス」は、これまで延べ2万5千人以上のカウンセリングをしてきた松島先生の知見や経験、想いが詰まったものなんだとか。
今回はメンタルブレス講座でも伝えている、メンタル不調になりにくい人の絶対的な共通点『自己決定力』について話を伺いました。
■自己決定力に必要なスキル
松島先生によれば自己決定力を身に付けるには、2つのスキルが必要なんだとか。1つ目は、前回取り上げた「モニタリング」。さまざまなシチュエーションにおいて自身がどんな行動や考え方をするのか、自己理解に必要なスキルです。今回はその次のステップとして、物事を多角的に捉え、対応力を身につける「リフレーミング」という他者理解に通ずるスキルについてお伝えしていきます。
「『リフレーミング』は、一つの事柄を違う視点で見たらどう見えるか?という枠組みを変えるスキルの一つです。人間誰しも、苦手なタイプの人がいるのではないでしょうか。例えば、頑固な人がいたとします。そこでその人を、頑固だから嫌いとなるのか、頑固だけど筋が通っている人と捉えられるのか。その違いはとても大きいのです」
では、この「リフレーミング」を身につけるには、どうすればいいのでしょうか。
「他人の考えをたくさん聞くことです。自分が嫌だと感じているものでも、他の人はそう感じていないかもしれない。ただし、これは決して嫌いなものを好きになれと言っているわけではありません。ネガティブをポジティブに変換するのではなく、あくまで違った見方をできるようになることが大切。これも身につけるべき一つのスキルですね」
実際にメンタルブレスを教える講座では、他者とグループワークを行ない「リフレーミング」スキルを身につけていくそうです。
これまでに説明した「モニタリング」と「リフレーミング」、この2つのスキルを身に付けられたらなら、すでにメンタルには大きな変化が生まれている、と松島先生。
「(モニタリングとリフレーミングができるようになると)自分がどうしたいかも見えてきて『自己決定』ができるようになってきます。よく自信がないから決められないという方が多いですが、大切なのは自信ではなく、自分がどうしたいか。すべての行動を自分軸で決めることができるようになれば、確実にメンタルは安定していくでしょう」
連載の第一回目でもお伝えしたように、自分で決めたかどうかによって、人は受けるストレスの度合いが変わります。他人に自分の行動や判断を任せるのは、自分のメンタルやストレスコントロールを誰かにゆだねているようなもの。だからこそ、自己決定で自身の心の安定を手に入れる必要があるのです。
ちなみにメンタルブレス講座では「コーピング」と言って、ストレスへの対処法を学び身につけていくこともするそうです。
「世の中は簡単なことばかりじゃないので、ときには失敗することもあるはず。ですが、日常的に自己決定できるようになれば脳がスカッとするのではないでしょうか。メンタルは生き物です。"呼吸を整える"のと同じような感覚で、ぜひメンタルも整えていってほしいと思います」
全5回でお届けした松島先生の連載。メンタルは脳にあり、どのような仕組みでどのような働きをしているのか。鍛えるためにはどうすればよいのか。少しでも生活のヒントは得られたでしょうか。
この連載を読んでくださったみなさんが、これまでより毎日を生きやすく思えるようになっていたらうれしいです。