「心が休まらない」「不安を感じる」など、忙しい現代社会においてメンタル不調を来す人は少なくないはず。本連載では、臨床心理士の松島雅美先生が心の仕組みをはじめ、メンタルを鍛える方法などを紹介していきます。
→連載 第1回目から読む:「メンタルが強い人」「弱い人」の違いとは?
→前回の話を読む:メンタル不調を防ぐなら『前頭前野』を鍛えるべし! 今スグできる"心の整え方"とは?
これまで、メンタルが強い人と弱い人の違い、脳と心の関係性、心がスカッとするメンタルの鍛え方をお話してきました。第4回目となる今回は、心を健康に保つために必要な「自己理解」について。
お話を聞くのは、Je respire代表取締役であり臨床心理士である松島雅美先生です。先生が監修する心のケア方法「メンタルブレス」では、心のメカニズムを正しく理解し、客観的に自己理解できる力を身に付けていくそうです。
この「客観的な自己理解」とは、具体的にどのようなことで、どんな時に必要な力なのでしょうか。私たちの生活に紐づけて考えていきましょう。
■いろいろな自分を受け入れる意味
はじめに、自己理解の必要性について尋ねてみました。
「人は「自己理解」ができていないと、メンタル不調につながりやすい。モニタリングとは、自分自身を客観視し、それを言語化できるようにすることを目的として行うものです」
松島先生の研修や講座では、自分を客観的にモニタリングするためのチェックテストを行なっています。
「モニタリングの方法は様々ですが、メンタルブレス講座では、5つの簡単な質問に答えることで、自分の現在の心の快適度を測ります。1週間に1回これを繰り返すことで、自分の心身の変化が感覚的にもわかるようになってきます」
このテストで、ストレスがかかった時に自分はどう思うのか、通常時とストレスがかかった時の行動にはどんな変化があるのか、といったことが見えてくるのだとか。
「意外と私たちは、ストレスがかかった時に自分がどんな態度をとってしまうのかを把握していません。例えば大親友といる時の自分と、上司といる時の自分。そこには当然、違いがあるはずです。しかし日本人は、その違いをあまり良しとしない人が多く、リラックスしていない時の自分は本当の自分じゃないと考えがちです」
先生によれば、どんな場面でどんな振る舞いをしていても自分であることには変わりないとのことです。そのことを理解し、受け入れることで心の安定につながるのですが、人によっては違和感を抱いてしまったり、本当の自分ではないと拒否したりしてしまうことも。そうならないためにも、自身にどんな側面があるのかを、"客観的に自己理解"することが重要になってくるのです。
また、理解するだけではなく、その先のステップについて松島先生は次のように説明します。
「さらにもう一歩、自分はどうしたいのかを理解し言語化できるのが理想です。現状の理解プラス、どうしたいかを言語化する。簡単ではないかもしれませんが、そんなモニタリングの習慣をつけると脳はさらに鍛えられていきますよ」
ふだんの自分と、その時々の自分は違って当たり前。まずは自分のベースを理解し、そこから変わる自分も知ってみてください。大切なのは、どれも本当の自分だということです。
次回は、ついに最終回。これまでお伝えしてきた心が「病まない」カギを握る自己決定力と自己理解、それを踏まえた上で自分のメンタルと改めて向き合っていきましょう。