就職・結婚・出産・子育てを迎える年代の場合
20代・30代は、就職や結婚、子育てといったライフイベントを迎える可能性がある年代になります。そこに、女性は出産というライフイベントも加わってきます。ライフイベントを迎えるにあたって、病気やケガに備えておくことを考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
病気やケガの治療にかかる医療費に備える場合は、公的医療保険を基本として、不足する分を準備するとよいでしょう。医療費が高額になる場合は、高額療養費制度が適用されます。高額療養費制度は、「同じ月に同じ病気でかかった医療費の自己負担が自己負担限度額を超えたとき」に高額療養費が支給される制度です。
■参考リンク:厚生労働省ウェブサイト「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
いつ起こるかわからない病気やケガには保険で対応
公的医療保険で不足する分を預貯金や民間の医療保険(以下「医療保険」)で準備する場合は、それぞれの特徴を押さえておきましょう。一般的に、預貯金は幅広い使い道に対応できます。一方、医療保険は保険特有の仕組みにより、いつ起こるかわからない病気やケガのリスクに対応できます。
保険特有の仕組みとは、保険は複数の加入者がお金を出し合って共有の準備財産をつくり、加入者の誰かがいざというときに決まった金額が支払われる助け合い(相互扶助)で成り立っていることです。いつ病気やケガをするかは誰にもわかりません。
20代・30代の方は、今後迎える可能性のあるライフイベントにおいて、備えるべき費用が発生することも考えられます。例えば、子育てにかかる費用は、どちらかというと必ず発生する費用になります。そのため、どのくらい費用がかかるか、目安をたてることができます。
一方、病気やケガの治療にかかる医療費はというと、「いつ病気やケガをするか」「病気やケガの状態もわからないので、どのような治療を行うのか」現時点ではわかりません。そのため、医療費の自己負担額を予測することは困難です。
人によって、迎えるライフイベントや預貯金など金融資産の保有額が異なります。それに伴い、公的医療保険で不足する分を準備する金融商品も異なってきます。
最終的にはご自身が決めることになるものの、いつ起こるかわからない病気やケガの備えは、保険特有の仕組みを活かして、医療保険を検討してみるのもよいのでは、と考えます。
そして、知っておきたいのは、保険は「いざというとき」「万一のとき」というように、必要となる費用にあらかじめ備えるもので、何か起きてから入るものではないということです。いざというときにお金が受け取れてよかったというのが保険です。
20代・30代の若くて健康なときは、病気やケガの備えについてイメージがわかないという方もいらっしゃると考えます。しかしながら、20代・30代の女性が入院する割合は、同じ年代の男性よりも高くなっています。
内閣府「平成29年版少子化社会対策白書」によると、第1子を出産した母親の平均年齢は30.7歳(第2子:32.5歳、第3子:33.5歳)となるため、女性の場合は、手厚く備えることを検討してもよいでしょう。ちなみに、通常の医療保険は、若い年代で健康なときに加入した方が、保険会社に払い込む保険料は安くなります。
医療事情を把握することが重要
医療保険を検討するにあたって、これからの医療事情を把握しておくとよいでしょう。というのは、治療方法の進化に合わせて、医療保険の商品開発が行われているからです。
また、病気やケガをして給付を受ける手続きをする際に、治療内容を記した書類を医療機関から取り寄せ、保険会社に提出する必要があります。つまり、加入している医療保険において取り扱っていない治療を受けても、給付を受けることができないのです。そのため、治療方法の進化に対応した医療保険に加入することが重要となります。
治療方法の進化に伴い、医療保険がどのように変化したのか確認する前に、医療保険の構成について押さえておきましょう。一般的な医療保険は、主契約と特約で構成されています。
主契約は、ベースになる部分で、入院したときや手術を受けたときに備えることができます。特約は、主契約につけることができるオプション部分です。主な特約としては、3大疾病(ガン・急性心筋梗塞・脳卒中)や女性特有の病気にかかったとき、先進医療の治療を受けたときに備えることができる特約があります。
さて、変化したのは、入院治療から通院治療への備えにシフトしたことです。背景には、入院日数の短期化傾向があります。入院前後に80%以上の方が通院されていることもあり、通院への備えに対して必要性が高まっています。
なお、日帰り手術(外来手術)治療に備えられる医療保険は多いものの、日帰り手術後の通院には備えられませんでした。そこでいち早く、日帰り手術後の通院に備えられるように開発されたのが、『アクサの「一生保障」の医療保険 スマート・ケア』です。入院前後の通院と日帰り手術後の通院に備えることができます。
治療と仕事の両立支援は道半ば
治療方法の進化による入院日数の短期化・入院治療から通院治療へのシフトといった傾向は、社会環境にも変化をもたらしています。不治の病とされていた病気も生存率が向上したことで、治療と仕事を両立することが可能となりました。仕事を持ちながら、通院する方が増えています。
一方、厚生労働省「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」によると、仕事上の理由で適切な治療を受けることができず、離職する場合もあるようです。また、治療と職業生活の両立支援の取り組み状況は職場によって様々で、道半ばであるように思えます。こういった状況からみても、安心して治療に専念するためには通院治療への備えが必要となります。
古川 悦子(ふるかわ えつこ)
FP事務所「フェリースライフ」代表。
生命保険会社に20年間勤務。保険金の支払い・契約内容変更などの保険事務やコールセンターでお客様相談を担当する。退職後2006年にFP独立。実務経験を活かし、Webや雑誌の連載執筆、セミナー講師、業界向けに保険事務ツールの企画などの活動を行う。取り上げるテーマは、保険商品の解説・相談事例・保険と相続の関係など多岐にわたる。その他、ライフプランの見直しや家計診断など有料相談を行う。CFP、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」相談員(2011年)。