旅の楽しみといえば、食事。海外旅行において、空港を出発して最初に口にする食事といえば、機内食ではないだろうか。本連載では、様々なエアラインの機内食を紹介。誌上機内食ツアーをご堪能あれ。

今回は航空業界の革命児、ヴァージン アトランティック航空(VS)のアッパークラスを利用してロンドンへ。成田→ロンドン間の機内食を体験した。VSは成田空港に自社ラウンジを擁している。機内食ではないが、食へのこだわりはここからすでに始まっているといえる。

空港ラウンジでも本格的なメニューが

「Club House」と名付けられたこのラウンジの利用者は、VSアッパークラス利用者のみ。午前中発便なのでメニューは朝食のみだが、シリアルやフルーツ、ヨーグルトなどの軽食のビュッフェのほかに、注文制のホットミールが用意されている。ここでは英国のクラブハウスにはないメニュー、焼き鮭のお茶漬けを食す。海苔とあられが香ばしく、大きな鮭も食べごたえががあっていい。旅行前の一品としてはかなりおすすめ。他に、とろ~りと半熟のポーチドエッグにスモークサーモン、オランデーズソースがまろやかなエッグ・ベネディクトも人気だそうだ。

日本路線でのみの和風メニュー

和風前菜はメニューを見ると「海老の芝煮仕立て、鶏つくね、豚ひき肉の昆布巻き、野菜巻き」となっている

さて、本題の機内食である。VSは航空業界において初めてエコノミークラスに和食を持ち込んだ歴史があり、当時は竹の皮を模した包みに入った俵型のごはんが印象的だった。というわけで、今回も和食を選ぶつもり。ちなみに、アッパークラスでは前菜、メイン、デザートと和・洋の組み合わせは自由で、例えば洋風の前菜に和食のメインという選択も可能だ。しかし和風メニューは日本路線でのみの提供ゆえ、前菜からメインまで和食にすることにした。

和風前菜は「海老の芝煮仕立て、鶏つくね、豚ひき肉の昆布巻き、野菜巻き」の盛り合わせだ。鶏つくねとメニューにはあるが、お節でおなじみの松風焼きと、なかなか本格的だ。味付けはだしがきいた醤油味とシンプル。素材の味はわかるのだが、日本酒が飲みたくなる濃さではある。

メインは「鶏のグリル 柚子焼き味噌仕立て」。焦げ目が香ばしい鶏もも肉のグリルに、柚子の香りをきかせた甘い味噌が塗られている。俵型のごはんも同じ皿に盛られており、付け合わせの野菜の煮物とともに供される。ごはんは表面が少し乾いているものの、適温での提供でおいしくいただけた。

メインは「鶏のグリル 柚子焼き味噌仕立て」

デザートは洋風のみで、カラメルナッツ・タルトとストロベリーケーキの2種類から選べる。さらに、3種類のチーズとポートワインというアッパークラスならではのチョイスもあり、デザートと両方を注文してもOKだ。

デザートはカラメルナッツ・タルトとストロベリーケーキから選べ、写真はストロベリーケーキ

チーズはポートワインと一緒にどうぞ

アフタヌーンティーが最後の食事

到着時刻がちょうど15時過ぎゆえか、到着約2時間前の最後の食事がアフタヌーンティーなのが英国の航空会社らしくなかなか粋。3種類のサンドイッチとスコーン、チョコレートケーキ、スイートムース・ケーキ、フレッシュフルーツタルトを取りそろえ、2段のスタンドに盛り付けてくれる。全部食べられる人は全種類を盛ってもらってもいいし、いくつかをチョイスしてもいい。サンドイッチはちゃんとハムとキュウリ、スモークサーモンと伝統的。スコーンは温かく、クロテッドクリームもちゃんとついている本格派だ。

こちらがアフタヌーンティーのメニュー。サンドイッチやタルト、スコーンにクロテッドクリームも

乾燥した機内ではスコーンやタルト系はちょっと……と思ったが、クリームたっぷりなのでパサパサ感は気にならない。チョコレートケーキはしっとりこってりしていて文句なくおいしく、満腹で完食できなかったのが心残り。しかし……昼食のデザートと合わせて、VSのアッパークラスでいただけるケーキは全部で5種類。これほど何種類もスイーツを積んでいるフライトはほかにないのではないかと感心する。

機内でサーブされるお茶は、18世紀創業の老舗「ジャクソンズ・オブ・ピカデリー」から7種類。煎茶までも薫り高く、「ほぉっ」とつい深く一息ついてしまうほど。これも食事やスイーツの味を引き立てるポイントになっていることは間違いない。

(写真:Kiyofumi Kuratani)