多くの人の支持を集めることが人気のバロメーターである一方、常に評価の目にさらされる宿命にあるのが著名人たち。それぞれの職業観の中で、どのような言葉を支えにして苦境を切り抜けているのか。連載「わたしの金言・名言」は、著名人たちが心の拠り所としている言葉を聞く。
第28回は、初自叙伝『ひだりポケットの三日月』(講談社 1,540円)を上梓したスキンケア研究家の三上大進。目には見えない自分の個性が大事だと思えるようになった金言とは。
目には見えない個性が大事
サン=テグジュペリ先生の『星の王子さま』に、「本当に大切なことは目に見えないんだよ」と書かれているのですが、私はその言葉をすごく大事にしています。自分がたまたま障がい者として生まれて、私の場合は、指の数が3本足りないという違いが目に見える。でも、本当に大切なのはこの違いじゃなくて、目には見えない私の個性が大事だというふうに思っています。
パラリンピックの仕事を通して思ったことも同じでした。選手も様々な障がいを持つ方がいらっしゃいましたが、大事なことは障がいではなくて、その障がいを生かして、残されたものをどういうふうに輝かせているか。努力や挫折、いろいろな経験をしてきたことが全部詰まった、目には見えないその人らしさ。障がいそのものよりも、競技に打ち込む姿勢や、工夫を凝らすその強さがまぶしくて美しいのだと気付かされました。
本当に大事なものは目に見えないものなんだ。そう思うと、全ての人に物語やドラマが必ずあって、目に見えるもので何かを判断してしまうのはとてももったいないことだと思うようになりました。そうすると、人の違いがすごく心地よく感じるようになって。この人面白いな、どんな魅力があるんだろう、もっと知りたいなと思って、相手のことを深く知ると、自分のことも知ってほしくなる。自分のことを知ってほしくなると、自分のことを深く理解しないといけない。そして、自分を理解できた深さの分だけ、相手のことを深く理解できるようになる。目に見えないものを大事にするという気持ちを、これからも忘れずに生きていきたいです。
(C)講談社
三上大進(みかみ だいしん)
1990年10月20日生まれ。東京都出身。立教大学卒業後、日本ロレアル、ロクシタンジャポンで勤務。2018年、日本放送協会入局。2018年平昌パラリンピック、2020年東京パラリンピックにてレポーターを務める。現在はスキンケア研究家として活動中。スキンケアブランド「dr365」をプロデュース、運営。