多くの人の支持を集めることが人気のバロメーターである一方、常に評価の目にさらされ、時には辛辣な言葉も浴びる宿命を負う芸能人。それぞれの職業観の中で、どのような言葉を支えにして苦境を切り抜け、仕事と向き合っているのか。連載「わたしの金言」は、芸能界に携わる人々が心の拠り所としている言葉を聞いていく。
第1回は、モデルで一時代を築きながら、小説家の顔も持つ押切もえ(37)。2017年7月に自身初の児童書『わたしからわらうよ』(ロクリン社/177ページ/1400円税別)を出版するなど、常に意欲的に活動してきた彼女にとっての金言とは――。
私にとっての金言は、オードリー・ヘプバーンの言葉「自分にとっての最高の勝利は、自分と他人の欠点を受け入れ、ありのままに生きられるようになったこと」です。自分も含めて、欠点は人それぞれだと思います。自分の欠点を受け入れるのは良いことですが、受け入れて直すのか、そのまま活かすのかも人次第です。
「嫌」だけで終わらずしっかりと受けとめていくことが、自分なりの生き方につながるんじゃないかと。初めてこの言葉に触れたのがいつだったか覚えてないのですが、今回出させていただいた本(『わたしからわらうよ』)でも扱ったテーマにも近いので、思い出しました。
自分ができないことと他人ができないことは違って当たり前です。オードリー・ヘプバーンが注目を集めた頃といえばグラマーな女性が主流だったと思いますが、彼女のスレンダーな個性があったからこそ、今でも愛される存在になっています。太眉でのあの髪型は、それ以前にはいなかったのではないでしょうか。
私がモデルになった時も「身長が足りない」とか、「美人顔じゃない」とかすごく言われました。メイクや表情で変えようと意識したり、ファニーフェイスと言われていたので、ファニーフェイスならではの愛嬌を大事にしたりとか。嫌なところは「嫌」と決めつけるのではなくて、今は多様性の時代ですし、まずは受け入れてみる。モデルさんでも、今はいろいろな個性の方が活躍しています。
モデルとして知ってもらえるまでは、そういう欠点によって低く評価されることもあります。モデル事務所の面接はすごく過酷でした。今思うと、よく心が折れなかったなと……あの時期に言われたことは全部覚えています(笑)。自分が載った雑誌を持っていったんですけど、「スタイル”は”いいね」と言われました。すごくはっきり言われたので、ショックを受けて……。でも、選ぶ側も大変なんでしょうね。
こういうことが続くと自分の欠点が嫌になってしまう。私の仕事は表に出る仕事ですから、嫌でも自分の目で見ることになります。でも、そういうところも含めて受け入れた時に、私は強くなれるのかなと。何よりも楽しいからこそ、ここまでやってこられたのだと思います。
■プロフィール
押切もえ
1979年12月29日生まれ。千葉県出身。高校生の頃からティーン誌で読者モデルとして活動をはじめ、ファッション誌『CanCam』(小学館)の専属モデルを経て、現在は2006年に創刊した姉妹誌『AneCan』の専属モデルを務め、2016年に卒業。テレビ、ラジオ、コラム執筆など多方面で活躍するほか、『モデル失格』『心の言葉』など著書も多数出版。2015年に『浅き夢見し』で小説家デビューを果たし、2016年にも『永遠とは違う一日』を出版した。