最近はガソリン価格が高騰しているため、給油をためらうほどだ。だが、クルマは燃料がなければ走らない。仕方なく給油することになるのだが、燃費を計算するとどうもカタログに書かれている数値よりかなり低いことがほとんど。ドライバーの多くはこう感じているはず。

カタログに書かれている燃費は10・15モード走行燃費というもの。市街地走行を想定した10モード(パターン)の走り方と、比較的流れがいい郊外路走行まで考えた15モードを走行したときの燃費を計測したものが10・15モード走行燃費。燃費を比較する基準が必要としいうことで、当初は10モード燃費のみが導入された。しかし、比較的低速走行が多い市街地モードでは実際の燃費と差があるということで、15モードが追加され現在のようになったのだ。だが、こうした計測方法でも実際の燃費と大きな差があるのはドライバーならばだれでも実感しているはず。

なぜ、実際の走行と燃費に差があるのかというと計測走行のモード自体に問題があるからだ。10・15モード走行燃費での加速は実際でかなりゆっくりとした緩慢な加速。実際の交通で10・15モード走行燃費計測時と同様の加速しかしなかったら、後ろのクルマからホーンを鳴らされるはず。さらにクルマは暖機もすんでいてエンジンがもっとも燃費がいい状態のときに計測される。燃費が悪い冷えた状態からの燃費ではない。いいとこ取りをしている計測だから実際の燃費と差ができてしまうわけだ。また、計測はシャシーダイナモと呼ばれる台の上で走行し、ドライバーは各メーカーのプロのテストドライバーが行う。現在のエンジンはコンピューターで制御されているため、10・15モード走行燃費に合わせた燃料噴射マップを持っていて、この制御から外れないプロドライバーの緻密な運転がなければ実現できない燃費なのだ。

なんだかインチキな燃費のようだが、こうした批判があることは国もわかっていて新しい燃費基準をついに導入したのだ。「JC08モード走行燃費」と呼ばれるのが新燃費計測方法。これは省エネ法に基づいて経済産業省と国土交通省が策定したもので、乗用車などの燃費測定として適用される。このJC08モード走行燃費の特徴はエンジンが冷えた状態からのスタート(JCのCはコールドの意味)が加えられている点だ。燃費が悪く、排ガスを浄化するための触媒が活性化する温度に達していないうちから計測するので、排ガス性能の向上も見込まれる計測方法。それに10・15モード走行燃費の最高速が70km/hなのに対しJC08モード走行燃費は80km/hまで加速する。また加速度も通常走行に近くなるため、より実祭の燃費に近くなると言うわけだ。

21世紀に間に合ったプリウスがここでも一番乗り

燃費の王様といえばトヨタのプリウス。JC08モードでの計測一番乗りは、燃費に自信があるためかやはりプリウスだった。トヨタは8月10日に、新燃費基準の試験方法で計測したプリウスを9月3日から発売する発表したのだ。気になるプリウスの燃費は、JC08モード走行燃費で29.6km/Lを記録している。これまでの10・15モード走行燃費は35.5km/Lだったことを考えるとやはり燃費の数値はかなり悪化した。5.9km/Lも燃費が悪くなったように思う方もいるかもしれないが、現在プリウスを愛車としている者として実際の燃費にかなり近づいたと思う。走行モードは違うが、高速道路のみ走ればプリウスは25km/Lという燃費はラクラクマークできる。条件がよければ27km/Lも可能なのだ。コールドスタートからの市街地燃費で、JC08モード走行燃費の29.6km/Lを実祭の走りでマークすることは難しいと思うが、今までの10・15モード走行燃費と比べれば大幅に差が縮まったと言っていいだろう。

今後はJC08モード走行燃費がカタログに併記されるクルマが増えるので、クルマ選びのいい目安になる。それと省エネ法に基づいて策定された新たな燃費目標基準「2015年度燃費基準」もプリウスはいち早く達成している。この2015年度燃費基準はトップランナー方式と呼ばれるもので、もっとも燃費のいいクルマに合わせて燃費基準を策定したもの。例えばある自動車メーカーの2004年度の乗用車平均燃費が13.6km/Lだったとすると、2015年度の燃費基準は16.8km/Lになる。燃費の改善率は23.5%にもなるというから結構ハードルは高い。自動車メーカーは今後さらなる燃費の向上が求められているわけだ。もちろん04年の燃費もJC08モード走行燃費での比較となる。新しい燃費の測定と新燃費基準の導入で、ますます各車の燃費は向上するはずだ。

いち早くJC08モード走行燃費を発表したプリウス。従来より大幅に燃費数値はダウンしたが、それでも29km/L台の燃費を記録したのは立派だ

1.5Lのアトキンソン(ミラーサイクル)サイクルエンジンとモーターの組み合わせで優れた燃費を叩き出すユニット。高速走行だけならば実際の燃費でも27km/Lを記録できる。新燃費測定は実走行燃費にかなり近い感覚

今プリウスを購入するなら10周年記念車が買い得。装備を充実させているにもかかわらず車両価格を低く抑えている

丸山 誠(まるやま まこと)

自動車専門誌での試乗インプレッションや新車解説のほかに燃料電池車など環境関連 の取材も行っている。愛車は現行型プリウスでキャンピングトレーラーをトーイングして いる。
日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員
RJCカー・オブ・ザ・イヤー選考委員