日本で最大規模のキャンピングカーショーである「キャンピング&RVショー 2008」が2月9日(土曜)から11日(祝日)までの3日間、千葉県の幕張メッセ北ホール(9、10号館)で開催された。主催は日本RV協会で、出展社数は約110社にも及ぶ大規模なものだ。国内、海外自動車メーカーの一部やキャンピングカーメーカー、アウトドア用品メーカー、キャンプ場、アウトドア関係企業や出版社などが出展している。国内キャンピングカーメーカーのほとんどがクルマなどを展示しているから、一度に多くの車種を見ることができる絶好の機会だ。キャンプの関連情報やキャンプグッズのセールスもあるため、多くのキャンプファンが心待ちにしているショーなのだ。
毎年この時期にキャンピング&RVショーが開催される。春の需要期に向けて各社がニューモデルをこのショーでリリースする。秋にもキャンピングカーショーが開催されるが、ショーの規模とニューモデルはこのショーのほうが多い |
キャンピングカーのショーらしくペットも同伴できる。ペットも100円の入場料を取られるが、そのお金は日本盲導犬協会に寄付される |
キャンピングカーというと、高価だというイメージを持っている人が多いのではないだろうか。確かに輸入モデルの一部や国産高級モデルは高額だが、最近人気を集めているのは低価格のキャンピングカーだ。このショーに昨年来場した人数は14万1,673人で、キャンプ関連のショーとしては最大集客数。数年前から目立ち始めたのが熟年層で、それまで来場者の中心だったファミリー層を上回る勢いなのだ。団塊の世代の一部は、今確実にキャンピングカーに興味を持っている。それは自分の趣味を思う存分楽しむためのツールとして、キャンピングかーを見ているのだ。例えば趣味の写真。富士山やこれから各地で咲く桜など被写体の対象はいろいろあるが、多くの場合アウトドアで写真を撮る。富士山周辺では朝からカメラを構えて、シャッターチャンスを待つ熟年層をよく見かける。こうした人々は近くの駐車場にクルマを止めて、仮眠をしてシャッターチャンスに備える。こうした使い方にピッタリ合っているのがキャンピングカーというわけだ。登山や温泉巡り、滝巡りなど趣味をより快適にローコストで楽しむために、こうしたキャンピングカーを購入しているのだろう。
熟年層の多くに人気なのは軽自動車をベースにしたキャンピングカー。じつは団塊の世代の多くは夫婦で同じ趣味を楽しむという人は少なく、奥様は友人と旅行や食事を楽しむというパターンが多く、夫の趣味に付き合うということが少ないらしい。そのため1人で寝るタイプの軽自動車のキャンピングカーで十分というわけなのだ。こうしたクルマを「軽キャンパー」と呼ぶのが一般的だ。価格は200万円ほどするものが多い。軽だと考えると高い印象だが宿泊費はいらないし、ETCの割引を使って夜間に移動して趣味を存分に楽しめればかえって安いわけだ。税金などの維持費も軽自動車ならば安く、ガソリン代もそれほどかからない。200万円ほどで「男の隠れ家」を持てるというのも魅力。奥様とケンカした時に逃げ込めるシェルターとしても使える。車内で寝られるし、クルマによっては食事も作ることができる。だから確実に軽キャンパーはブームになっていて、今回のショーでも軽自動車ベースのキャンピングカーや価格が安いモデルには多くの熟年層の熱い眼差しが注がれていた。熟年層でも公務員や団体職員などの退職組は多少様子が違う。比較的退職金が多く、年金も多いためか高額車を購入する人が多い。子育て世代では手を出しにくい、高価格な輸入モデルを購入するのはこうした人たちだ。
キャンピングカーを欲しいと思っている、潜在需要はかなり高いはすだ。特に子育て世代のファミリー層は興味がある。だが価格が高いと思い購入に踏み切れない人が多いようだ。そこでお薦めしたのがキャンピング(トラベル)トレーラー。トレーラーという名前からもわかるように、普通のクルマでトーイング(けん引)するキャンピングカー。メリットはズバリ価格の安さだ。キャンピングカーとしての装備とファミリーで使うのに必要最低限のスペースを確保したモデルならば250万円ほどからある。自走式で同じ装備と同じ居住スペースを持つモデルならば500万円ほどするので、約半額で買えるわけだ。トレーラーはエンジンなどがないから、十分な装備を持つモデルでも割安。それに税金などの維持費も安いのがメリット。トレーラーは引っぱるためのクルマも必要だから2台所有することになって大変という人がいるが、それは自走式のキャンピングカーを所有してもほぼ同じだ。キャンピングカーで通勤や買い物に行くのは難しいから、もう1台普通のクルマを持つことが多い。ハイエースなどのバンコンバージョン(バンコン)のキャンピングカーはミニバンのように使えるものもあるから、1台で通勤からすべて使える場合もあるが、キャンピングカーとしての機能は中途半端になりやすい。本格的なキャンピングカーとしてもトレーラーはとても魅力的だ。
でもトレーラーをトーイングするには"けん引免許"を取らなくては…と思っている人もいるようだが、普通免許でも750kgまでのトレーラーならば運転できる。ファミリー向けのモデルでもこのクラスに入るものが多くあるから、改めてけん引免許を取る必要はない。最初から大きくて豪華なトレーラーに乗りたいというのであれば、やはりけん引免許を取得しなければならないが、現在は2トン未満のトレーラーをけん引できる"ライトトレーラー免許"が新設されている。これはキャンピングトレーラーのために作られた免許制度だが、全国の免許試験にこれに合った試験車両がないため取得する人が少ない。だが、トレーラーを販売するショップのなかにはこの免許を取るために持ち込み車両を貸してくれることもあるから、相談してみることをお薦めする。最近は中型免許ができた影響で大型免許やけん引免許の教習をやめている自動車学校が多いから、けん引免許を取るときにはショップなどに相談するのがいい。
キャンピングカーは生活を豊かにしてくれるツール。ライフステージに合わせてクルマを選べば楽しいカーライフが待っている。子育て世代には少々高い買い物かもしれないが、子供が一緒にキャンプに行くのは小学生のときだけだ。中学生になれば部活動などが楽しくなり、親とは行動を供にしなくなる。多くに人にキャンピングカーで思い出作りをしてもらいたい。
このページで紹介したキャンピングカーは日本RV協会会員のメーカーやショップが扱っている。日本RV協会のHPか、このキャンピング&RVショーの公式HPから各ショップの連絡先がわかる。
キャンピングカーステーションがヨーロッパから輸入しているコンパクトトレーラー・ニワードRE-440S。全長:4,470mm、車幅:2,050mm、車高:2,250mmというコンパクトなボディだが3人が寝ることができ、カセットトイレも付いている。横のハイエースと比べると大きさがよくわかる |
室内前方にレイアウトされているダイネット(ソファーが置かれたところ)には4人がテーブルを囲んで座ることができる。このテーブルを下にしまってクッションを並べ替えるとベッドになる |
キッチンのシンク下には冷蔵庫も備わる。LPGガスで冷却できるため電源がなくても食料を保管することができる |
こんなにコンパクトなトレーラーでもキッチンも用意されているので、車内で食事を作ることができる。災害時の緊急避難場にも使える。避難所にはペットが入れないが、自分のキャンピングカーならば問題なく一緒に過ごせる |
室内がコンパクトな割りには収納が多く、使い勝手がいい |
洗面ボウルもついている。ここに排水口がないのがわかるだろうか。ヨーロッパ仕様の中にはここに水をためて顔を洗い、その水は折りたたみ式のボウルをしまうことで裏側に水が流れる仕組みになっている。トイレ使用時にはもちろん折りたたんでおく |
小型ながら服などをしまっておけるワードローブも付いている |
アメリカントレーラーの中には、このようにリヤゲートが大きく開いて4輪バギーなどを積載できるキャンピングトレーラーもある。もちろんバギーなどを積載しないときには荷室スペースを居住スペースとして利用できるようになっている |
アドリアの最新08モデルで登場したのがアディバ462PD。全長6,680mm、全幅2,290mm、全高2,580mmという比較的大きなボディを持つトレーラーだ。車両重量は1,084kgになるためけん引免許が必要なモデル。価格は318万円で就寝定員は4人 |
リヤにはU字型をした大きなソファが備えられ、ダウンライトとブラウンのキャビネットが高級感を感じさせる |
ヒーターの上にクローゼットをレイアウトするのがヨーロピアンの基本形。このモデルもそのレイアウトで、奥に見えるパイプはヒーターの排気用。そのためヒーターを点けているとクローゼット内はかなり暖かくなり、濡れたスキーウエアなどでもすぐに乾いてしまう |
オーディオなどAV機器を取り付けるスペースも確保されている |
スカイライトルーフは大きく、開ければ換気性能も高い |
キャンピングトレーラーの普及に大きな役割を果たしているショップのインディアナRVがリリースする最新モデルがこのが「レン」。トレーラーは輸入モデルが多いが、このレンは数少ない国産モデル。ショーの2日前にようやく出来上がり、工場から直接会場に運び込んだという。重量を750kgに抑えているのでけん引免許なしてトーイングできる |
国産モデルだがヨーロッパのいいところは取り入れている。この冷蔵庫など室内装備などの多くはヨーロッパ製だ |
リヤにも対面式のソファを備える。もちろんここは二段ベッドにすることができる。その上段ベッドの収納方法がユニークで、天井にセットされているベッドを下に下ろしてセツトする。生産1号車のためスライドして下ろすのに苦労したが、今後は対策を考えているという |
ベッドメイクにはコツがいるが、スペースは大きく大人でも使えるほど広い。上段に小さな子供を寝かせるときには転落防止用のガードやネットを付けたい |
下もベッドにできるがあえてこうした写真を撮ってみた。上段ベッドを使っていても、下のテーブルで子供ならば勉強などが十分にできる |
トイレ&シャワールーム。10Lの温水ボイラーを装備している |
トレーラーを知り尽したインディアナRVが企画しただけあり、ホイールハウスにはドックライト付く。実際に運転してみるとわかるが、このライトのおかげで夜間トレーラーのタイヤがどこを通っているのかが変わりやすくなるため、バックなどが格段にしやすくなる |
デザインテイストはヨーロピアンとアメリカンがうまく融合した感じだ。気になる価格は302.4万円 |
最近人気を集めているが軽自動車をベースにしたキャンピングカー。ホワイトハウスがリリースするこのクルマは、ホンダ・ホビオをベースにしている |
ボディは小さいが装備は充実している。もちろんシンクもある |
小さな軽に魔法のように広々した空間を実現するのがこのポップアップ。車名もマイボックス・ポップアップという。両親が下に寝て、小さな子供2人がポップアップルーフで寝るという使い方ができる。こともが大きいとムリだが、小さければ何とか4人家族でキャンプができる |
助手席側は多少長さが取れるので、身長が高いお父さんでもなんとか寝られる。だが2人とも太っているとこの横幅スペースではちょっと苦しい |
スペースが小さいクルマだけにあらゆる工夫がされている。バックドアのスペースもムダにせず収納に使っている |
これもアイデア装備だ。ステアリングにボードを引っ掛けてシート側はリクライニングで高さを調節する。これは他車にも流用できそうなアイデアだ |
サイドオーニングを広げると立派なキャンピングカーだ。最近"道の駅"など公共の駐車場でこうしてオーニングを広げたり、イスを出して休んでいる人を見かけるが、そうした行為はマナー違反。駐車場などではポップアップルーフを展開するだけにとどめ、車内で食事などをとるべきだ |
ポップアップルーフはサイドがメッシュになっているので、夏場は開けておけば涼しい空気が通り抜ける |
トルマに代表されるLPGを使ったヒーターを装備しない、こうしたバンコン(バンコンバージョン)に必需品なのがエアヒーター。クルマの燃料を使ってヒーティングしてくれる。もちろん吸排気は外部で行われるので、車内にガスは入らない |
キャブコン(キャブコンバージョン)と呼ばれるトラックなどをベースにしたキャンピングカーはトヨタの架装専用トラック"カムロード"が主役だったが、最近はハイエースを使う例も増えている。これはアネックスの最新モデル、リバティLE。ハイエンドユーザー向けにリリースした最上級モデルで、価格は829.5万円から |
アネックスらしいデザインのリヤビー。収納スペースが大きく使いやすそうだ |
運転席上のバンクベッドは広さは十分だが大人が寝るには天井が少々低い。そのためメーカーオプションでバンク部のルーフを50mmアップさせることもできる |
シンプル&クリーンという言葉がぴったりのトイレ&シャワールーム。まるで高級ホテルのような雰囲気だ |
電源などの集中パネルはエントランスドアの上にセットされている |
アネックスのいいところは質感はもちろん、こうしたスペースをムダにしないことだ。小物などを収納するのに便利なこうしたトレイは各所に付けられている |
木材加工が得意のビークルらしい美しし上がりだ。バックドアを開けると大きな荷室が用意されているから、バンコンの悩みである荷物スペースにも困らない |
会場には各種発電機が展示されていた。下はポータブルタイプで奥が車載用。ポータブル発電機はあると便利だが、騒音が出るため使える場所や時間が限られる |
来場者の目的はキャンピングカーを見るだけではなく、こうしたグッズを購入するためにくることも多い。専門ショップで手に入らないものがリーズナブルなプライスで販売されている |
手前に見える並んだボトルがカセットトイレに使う分解消臭剤や水洗用のリンスなど。消耗品のため今年分をこのショーで調達するという人もいる |
大人は2人掛けだが子供なら3人が座ることができる。子供3人をここに座らせれば、5人でテーブルを囲める。ヨーロピアンモデルの美点は3点式シートベルトを標準装備している点だ。日本車も見習ってほしい |
フルコンやクラスAの魅力がこのプルダウンベッド。普段は運転席の上に収納されているが、就寝時に引き下げるだけでベッドメイクが完了する。周りも囲まれているからゆっくり寝ることができる |
今乗っているクルマのルーフに装着するだけで、キャンピンクカーに変身。ジファージャパンがリリースするもので、いろいろなタイプがある |
会場には子供が遊べるスースが設けられていて、家族が一日楽しめるショーだった |
丸山 誠(まるやま まこと)
自動車専門誌での試乗インプレッションや新車解説のほかに燃料電池車など環境関連の取材も行っている。愛車は現行型プリウスでキャンピングトレーラーをトーイングしている。
日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員
RJCカー・オブ・ザ・イヤー選考委員