こんにちは南国の離島石垣島
ついに、海に潜って水中撮影を行うために沖縄県の石垣島へ。石垣島は、八重山諸島の中でも西表島に続く面積を誇る大人気の離島で、最近は島の外から移住する人が後を絶たないという。また、ダイバーの憧れであるマンタ(オニイトマキエイ)に遭遇できる確率が非常に高いことでも有名だ。石垣島に限らず、沖縄やその周辺の離島は、世界でも有数のダイビングスポットである。いよいよ海に潜って水中撮影開始だ!
飛行機で羽田空港から那覇空港まで約2時間30分、那覇空港から乗り継いで約1時間、距離にしておよそ2,250km。ついに石垣島に降り立つ。石垣島のすぐ左隣(北を上にした場合)には西表島があり、その約130km先にはフジテレビで放映されたドラマ番組『Dr.コトー診療所』のロケ地にもなった日本最西端の島である与那国島がある(石垣島から飛行機で約30分)。また、その先は台湾であり(石垣島から約270kmしか離れていない)、本当に日本の端にある離島だ。このように書くと本州からかなり遠いように感じてしまうが、3時間30分という所要時間は、新幹線「のぞみ」に乗って東京と岡山の移動時間とほぼ同じ。そう考えると、それほど遠い場所でもないように思えてくる。
ダイビングショップだらけの島
石垣島は、まさに亜熱帯の森が広がる南国の島。周囲は全長130kmほどで、約4万5,000人が住んでいる。離島とはいえ、スーパーやコンビニ、ファーストフードは充実しているし、リゾートホテルは30軒以上と多い。またダイビングショップは80軒以上もあり、ダイバーにとってはまさにダイビング王国である。今回宿泊したのは「シーマンズクラブリゾートホテル」という名勝で名高い「川平(かびら)湾」の近くにあるホテル。選択した理由は、同ホテルのウェブサイトに書かれていた「ホテルならではの充実した設備&少人数制プログラムで、快適・安心に海で遊んでいただけます」という一文だ。9年ぶりに海に潜ることとなる私としては、自分自身でも不安が多いため、ガイドさんとコミュニケーションが取りやすい少人数制はとても心強い。また大型船を2艘保有し、「マンタスクランブル」ポイントまで10分の距離に位置するということで、ダイバー憧れのマンタを撮ることができるかもしれない。ホテル選びは、ダイビングの楽しみの一つでもあるので、皆さんもいろいろと調べて、自分に合った所を探してみよう。
到着した日の石垣島は快晴。シーマンズクラブリゾートホテルは、空港から車で40分ほどでの場所にある。ホテルは、「底地(すくじ)ビーチ」に隣接しているため、ホテルの部屋からすぐに砂浜に出ることができる。また、建物の脇にはマングローブの林が覆い繁り、南国に来たんだ……という気分を演出している。前回紹介した同行者のプロカメラマンN氏は、趣味でよく海に潜って撮影をしているそうで、今回の企画に快く協力してくださり、水中撮影は初めての筆者としては、実に心強いパートナーだ。そのN氏は到着するなり、「Kさん、さっそく潜りに行きましょうか?」と提案してきた。「えっ、でもまだ着いたばかりですよ、マジっすか? それにもう14時ぐらいですよ」と私が焦っていると「シュノーケリングだったら近くのビーチでできるはずなので行きましょう、行きましょう」ということで、ホテルに到着するなり、さっさと準備を始めた。おお、やる気満々である。
シュノーケリングで撮影
さて、これまでテストを重ねてきたオリンパスμ770SWをいよいよ勇気を出して海に入れる時がきた。水を張ったバケツや水槽での防水テストは行ったが、あくまでも今までは真水。塩辛い海水とは違う。まさか、デジタルカメラをそのまま海水に浸ける日が来るなんて夢にも思っていなかったから、正直なところドキドキである。もちろん、明日にはスキューバダイビングで10m以上潜るつもりなので、ハウジングも持ってきているが、シュノーケリングでの撮影は、勇気を出してハウジングを使わずに海に入れてみることにした。それにしても見た目はただのコンパクトデジタルカメラ。防水機能に問題がないことは確認済みでもどうしても躊躇してしまう。きっと読者の皆さんもこのような状況になったら、同じ気持ちになるのではないかと思う。
海から戻ってきたN氏に「どうですか?」と聞いたところ、「いやあ、結構難しいですね」という返事。遠浅の海でのシュノーケリングなので、当然波の影響を受けやすく、魚を見つけてもユラユラと揺れてしまいフレームにちゃんと入らないというのである。そんな状況なので、もちろんピントも合いにくい。しかも小魚なのでスピードも速く、もたもたしているうちに逃げてしまうらしい。これは困った。そこでN氏は、新兵器を取り出した。巨大なレンズとアームが装着された、とても立派なカメラだ。「あれ、μ770SW以外にもカメラを持ってきたんですか?」と尋ねると「いえ、これμ770SWですよ。ハウジングにストロボと魚眼レンズを装着したんです」なのだそうだ。この水深でハウジングは必要ないが、明日のダイビングに備えてテストもしておきたいということで、また潜っていった。いやあ、パワーあるなあ、N氏。
初日は、たまたま魚が少なかったことと、浅い場所でのシュノーケリングということもあって、N氏としては、かなり不満な結果のようだった。しかし、N氏もそこはプロ。翌日のダイビングに備えて、研究に余念がない。だが、筆者はN氏の様子を見て、ちょっと不安になってきた。水中撮影は、なかなか難しいようだ。N氏と違って、ただでさえダイビングは久しぶりなのにちゃんと水中撮影なんてできるのだろうか。
さあ、いよいよダイビングで水中撮影に挑戦
石垣島2日目は、いよいよダイビングでの水中撮影に挑戦。その顛末をご紹介する前に準備段階での注意点をいくつか挙げておこう。
まずはメモリ(記録メディア)。どんなに防水機能が優れていてもメモリの交換時には水が内部に入ってしまうので、できるだけ海上での交換作業は避けたほうがいい。理想的なのは、1枚で1日分の画像データ記録できる容量のメモリを用意することだ。μ770SWのメモリは、xD-ピクチャーカードという小型のタイプを採用しており、オリンパスからは最大で2GB(M-XD2GH)の製品が販売されている。μ770SWは、最高品質のSHQモードで3,072×2,304ピクセルの画像なので、1GBメモリで294枚、2GBメモリでは586枚まで記録できる。デジタル一眼レフカメラで連写するとあっという間に一杯になりそうだが、40分程度の水中撮影では、いくらがんばってもシャッターを切る回数は限られるため、1日分の撮影なら1GBのメモリでほぼ足りるだろう。
また、ハウジングには必ず防水のパッキンゴムにグリスを塗り、乾燥剤をカメラと一緒に入れておこう。水中は外気よりも温度が低いため、必ずと言っていいほどハウジングの内部が結露してしまう。乾燥剤はハウジングを購入すると付属している場合が多いが、何度も流用するのは危険だ。数日にわたって潜る人は、予備を用意しておくといいだろう。もちろん、バッテリをしっかりと充電しておくことは忘れずに。水中ではカメラの電源をこまめにオフにするのが面倒なため、メモリの容量を使い切る前にバッテリが切れてしまう可能性が高いからだ。
ダイビングはボートでポイントまで移動することが多く、1日に何本も潜ろうと思ったら午前中を有効に利用する必要があり、船に乗り込む時間も自ずと早くなる。ダイビングショップで機材をレンタルしたら、いよいよボートで出発だ。当日の1本目のポイントは「荒川ワクワクパラダイス」。2本目が「米原キャンプ前」だ。シーマンズクラブが保有する2艘の大型船の一つ「ラ・メール号」で出発。久しぶりのファンダイビングとなるため、ガイドさんに器材のセット方法などを質問していたら、あっという間にポイントに到着した。
確認したとおり、器材を装着して海に入る。確か、最初にBCジャケットに空気を入れて……とやっているうちにひっくり返ってしまった。完全に水中でのバランスの取り方を忘れている。や、やばい。ダイビングというのは、焦れば焦るほど悲惨な結果になる。ガイドさんが支えてくれなかったら、潜る前に沈没していたところだ。ブランクが長いことを最初に申告していたので、ガイドさんが注意してくれていて助かった。その後もガイドさんに幾度か手を引いてもらうなど、誠に情けない状態だったが、次第に昔の感覚が戻ってきて、なんとか一人でも移動できるようになった。ガイドさん、本当にありがとうございました。ブランクの長い人は、体験ダイビングで感覚を取り戻してから、ファンダイビングに挑むことをぜひおすすめしたい。
ダイビングでは、中性浮力という浮きも沈みもしない状態を保つことが重要である。これをマスターしていれば、肺の中の空気量である程度浮沈をコントロールできるため、BCジャケットにタンクから空気を入れる回数が減り、ムダに空気を消費せずにすむ。さらに中性浮力をコントロールできるとゆったりと移動することができるので、自然に呼吸回数も安定し、やはり空気の消費量が節約できる。また、深く潜ると耳に水圧がかかって痛くなるため、鼻を指でつまんで口を閉じながら息を吐くようにして耳の中の圧力を調整する「耳抜き」という作業が必須だが、久々のためできるかどうか心配だったが、これはなんとかできた。
(1)まもなくダイビングポイントの「荒川ワクワクパラダイス」に到着。気合いが入るN氏。筆者は緊張して体が固くなるばかり |
(2)船を降りてこれから潜るところ。ところが、この直後にひっくり返って溺れそうになり、大変なことになってしまう |
(3)ロープを伝ってゆっくりと沈む。ダイビング経験の浅い人はこの方法が安全だ。「耳抜き」もロープに掴まっていると体が安定するのでやりやすい |
(4)本当は中性浮力を保つだけで精一杯だったが、とりあえずシャッターを切る。魚はたくさんいるのに、なかなか思ったようにフレームに収まらない |
蒼い、碧い、なぜ青い?
2本のダイビングを終了して、筆者は久々のダイビングでもうヘロヘロになり、ホテルに戻ることにした。N氏は、まだまだμ770SWで試したいことがあるそうで、3本目に挑戦するためボートに残った。実に頼もしいことである。さて、シャワーを浴びてさっそくパソコンにカメラのデータを転送する。まずは、最初に撮影したハナミノカサゴ。カッコ良く撮れているはずだと思いきや「なんだこれは?」と叫んでしまった。全体が白んでいてボヤーっとしている。しかも気泡のようなツブツブが写っていて邪魔くさい。他の写真もブレているか、全体が青くて鮮やかさがないものばかり。なぜこんなに青いんだ? 結局、まともに撮れている写真はほとんどなく、石垣島まで来て惨憺たる結果となった。まずい、これは非常にまずいぞ。
透明度は20m、水深は最高で18m近く潜った。ハウジングに納まったμ770SWはまったく問題なし。しかし、鮮やかなハナミノカサゴ……のはずが、どこにカサゴがいるのかもわからないほど撮影は失敗に終わる |
μ770SWの内蔵ストロボを使用してハナミノカサゴを撮影。今度は大きな光の輪のようなものが出現してしまい肝心のカサゴが判別できない状態になった。何が起きているんだろう? |
3本目のダイビングを終えて戻ってきたN氏を掴まえて「撮れましたか?」と訊くと「いやあ、ダメでした」という返答。やばいじゃないですか、2人で全滅ですか!? このままじゃ、東京に帰れませんよ。と内心怯えながら写真を見せてもらう。あれ、結構ちゃんと撮れている。筆者の撮影したハナミノカサゴとはえらい違いだ。カメラは、同じμ770SWだから、特別装備(ハウジングにストロボと魚眼レンズの装着)のせいなのか? それとも技量の違いなのか? N氏的にはまだまだ不満だったようだが、私から見るとかなり良く撮れている。「まあ、外部ストロボとかも使ってますからね。露出も若干マイナスに設定したほうがきれいなんですよ」って、潜る前に教えてくださいよ! ああ、どうするんですか、私の写真。こんなになっちゃったじゃないですか、と落ち込んでいいたら、「大丈夫ですよ。ある程度だったら、ソフトウェアで見栄えを良くできますから」と慰めてくれた。「しかし、これだけボロボロだと補正するのは無理なんじゃないんですか?」と訊くと「私は、DigitalDarkroomというRAW現像ソフトを使っていますが、結構簡単に補正できますよ」とのことだ。しかし、RAWデータというのは、カメラ内部でJPEGデータに変換せず、そのままの状態でパソコンに取り込んで現像するためのフォーマット。今回使用したμ770SWはRAWデータでの保存ができない。「大丈夫です。DigitalDarkroomは、JPEGデータも同じように扱えますから」という。後でやり方を教えてくれるというので、やってみることにした。
これが、N氏が使用しているというRAW現像ソフト「ArcSoft DigitalDarkroom」Windows版。ジャングルから発売されている。筆者はMacを使うことが多いが、Mac版ってあるのだろうか |
さて次回は、N氏の指導を受けて、再度水中撮影に挑戦したい。そして、あのマンタにいよいよ挑む。果たして、マンタには出会えるのか?
「5週連続でオリンパスμ770SWを毎週1名様にプレゼント」は、8月1日が最後の締め切り! 詳細はこちら。