オリンパスμ770SWの水中撮影テストも無事終わったので、次はいよいよ海で撮影するための準備に取りかかりたい。重要なことは、「どんなシーンで撮影をしたいのか」、そして「どんなものを撮りたいのか」を事前に決めておくことだ。特に水中に潜って撮影したい場合は、シュノーケリング(スノーケリングともいう)にするのか、それともダイビングにするのかで準備する器材が大きく変わってくる。今回は、お手軽なシュノーケリングの装備から、本格的なダイビングの装備まで紹介していくが、どうせなら異次元を体験できるダイビングでの撮影に挑戦してみたい。

前回の検証結果でも10m防水のμ770SW(写真手前)は、海で心強い味方になりそうだということがわかった。シュノーケリングのレベルなら、5m防水のμ725SW(写真奥)でも十分だ

シュノーケリングとダイビングの違いは、潜る深さとその装備にある。シュノーケリングは主に水面を泳いで移動する場合を指し、その状態から少し潜ったりするとスキンダイビングという場合が多い。スキンダイビングは、水深15mぐらいまではいけると言われているが、実際には5m以上潜るのはかなり大変で、現実的には2~3mぐらい潜って楽しむのがほとんどだ。両者に使用する器材の違いはないため、ここでは両方を含めてシュノーケリングと呼ぶことにする。片や長時間にわたって5~30m近くまで潜るダイビングをスキューバ(スクーバ)ダイビングという。ここでは、単にダイビングと呼ぶが、こちらは水中で呼吸するための器材などが必要になってくる。ちなみに、呼び名や潜れる深さは人によって違うので、あくまでもこの記事における一例として捉えてもらいたい。

シュノーケリングはライセンスが必要なく数メートル程度の浅瀬で楽しむことが多く、ダイビングは30m近くまで潜ることがあり、潜るための装備がそれぞれ異なってくる

シュノーケリングに必要な道具は、マスク(水中メガネやゴーグルのようなもの)と息をするためのシュノーケル、そして足で履くためのフィンである。この3点を身に着けるだけで、何も着けない状態で泳ぐ場合より数段階上の機動性を手に入れることができる。誰もが「えっ、泳ぐのってこんなに楽なの? 」と驚くと思う。ダイビングでもこの3点は必須であり、両方に共通した基本的な装備である。マスクとシュノーケル、そしてフィンを合わせて「3点セット」と呼ぶ。

マスクは、プールで競泳用のゴーグルを使用する場合が多いので、その効果をご存知の方は結構いると思うが、シュノーケルとフィンは通常プールでの使用が禁止されているため、その効果を体験したことがある方は少ないのではないだろうか? シュノーケルは、単なる筒のように見えるが、息や水を吐き出した際に外部から水が入ってこないようにするための逆流防止弁が取り付けられている製品が多い。簡単な仕組みだが、実際に使ってみるとその効果は非常に高い。シュノーケルを使えば、海面上に顔を出さずに息継ぎができるため、長時間に渡って水中の観察が容易になるだけでなく、泳いで移動するのも楽になる。フィンは、魚の尾ヒレと同じような効果を得るためのもので、わずかに足を動かすだけでも推進力が増して、かなりの距離を楽に移動することができる。

ダイビング用のマスクは、ゴーグルと違って、鼻まで被うようになっている。サイズや形状によって、顔にフィットする感覚がかなり違うので、自分専用の物を購入することをオススメしたい。左は、オリジナルブレンドシリコンの採用によって顔にジャストフィットする「Bism MF-MAX MD2600」(11,550円)、右は広い視野を実現したカメラマン向けの製品「Bism MF-Fram MF2700K」(8,925円)

シュノーケル。シュノーケリングとダイビングの両方で必須の器材。左は、楕円形状のスタビライザーパイプの「Bism KF-BX KF2600」(6,300円/全4色)、右はX斧形状の「Bism KF-AX KF2610」(5,250円/全4色)

フィンは、直接履くオープンヒールタイプとブーツを履いてから装着するブーツタイプがある。オープンヒールタイプは手軽だが、慣れないと靴擦れのような現象が起きるため、初心者には装着が少しだけ面倒だがブーツタイプがいいだろう。写真は、左がブーツタイプのフィン「Bism FF-Frex FF2600」(15,540円)、右がフィンを履く際に足を保護するブーツ「Bism AB2600」(9,975円)

この3点を使うことによって、海面での活動範囲が飛躍的に広がるため、水中撮影ではぜひ揃えたい道具である。特に泳ぎが苦手な方には、強力なアイテムとなるはずだ。ただ、シュノーケルとフィンの使い方は簡単なように見えて少々テクニックが必要なため、できれば事前に講習を受けることをオススメしたい。しかし、それほど難しい技術ではないので、一度教えてもらえば、すぐに使えるようになるだろう。3点セットは、安い物なら数万円で購入できる。

でもやっぱりダイビングに挑戦したい!

次にダイビング。ダイビングは「面倒なんじゃないの? 」とか「泳げないとダメなんでしょ? 」というイメージを持たれている方が多いと思う。そのため、「一度はやってみたい」と思っても諦めてしまうことがほとんどのようである。確かにシュノーケリングと比べると、ライセンスを取得したり、タンクやBCジャケットといった特殊な器材を用意する必要があるので、始めるための準備や費用が大変そうである。しかし、専用の器材を使用するため、水泳のように自分の力だけで浮いたり、前進する必要はない。そのため、泳ぎが苦手な人や年配の方でも楽しめる数少ないスポーツとして人気が高い。器材はほとんどの場合、現地のダイビングショップでレンタルできるので、最初は3点セットがあれば大丈夫だ。実際にはそれほど費用はかからない。

とはいえ、多少は煩わしい面もあるが、何よりもダイビングは面白い! のである。まるで宇宙空間に浮いているような感覚、色とりどりの珊瑚礁、群れになって泳ぐ小魚、マンタ(オニマキイトエイ)などの巨大な海洋生物との出会い。これらのは、ダイビングというスポーツによって、始めて遭遇することが可能だ。そして、一度体験すると、多くの人がその虜になってしまう。こればっかりは、文字や写真でいくら説明しても完全には理解してもらえないと思う。ライセンスが無くても体験できる「体験ダイビング」などもあるので、機会があればぜひその魅力に触れてもらいたい。

ダイビングでないとこの写真を撮ることは難しい。水中では、宇宙空間にでもいるような感覚が味わえる

ダイビング用の器材ってどんなもの?

では、ダイビングに必要な器材を一通り解説しよう。3点セットに加えて、スーツ、レギュレータ、BCジャケット、タンク、残圧計、ダイビングウォッチなどが必要になる。スーツは、体温の維持だけでなく、岩や危険な生物から体を守り、浮力を得る目的でも使用する。体とスーツの間に水が入るウェットタイプと入らないドライタイプがあるが、通常はウェットタイプを使用する場合が多い。レギュレータは、タンクから送られてくる空気を口で吸うための器材だが、ここにタンクの残圧計やBCジャケットのホースなども接続される。BCジャケットは、チョッキのようなもので、タンクを取り付けたり、空気を中に入れて浮き輪のように使用するためのものだ。タンクはスチール製とアルミ製があるが、基本的には現地で借りることになるので購入する必要はない。ダイビングウォッチは、潜水に必須の器材で、潜水時間や温度の計測、体内窒素量の表示などができるダイブコンピュータという便利な製品もある。

スーツは、ウェットタイプ(左「Bism Air Circle-Demo」5万2,250~9万7,650円)とドライタイプ(右「Bism Air Circle DP-Demo」21万9,450~23万1,000円)があり、特殊な素材の使用によって浮力を備えている。つまり、スーツを着ていれば勝手に体が浮くようになっているため、タンクなどの重い器材を装着してもうまくバランスが取れるようになっている。微調整は腰やジャケットにウェイトを付けて最終的に調整する。ほとんどの場合はウェットタイプが使用されるが、寒冷地などでは、ドライスーツを用いることがある

レギュレータ。タンクに接続して口で空気を吸うための装置。タンクからの圧力を減らして供給するためのファーストステージと口にくわえる部分のセカンドステージに分かれ、さらに予備のセカンドステージであるオクトパスが接続される。写真は、素材にチタンを採用した「Bism Titanium Regulator NELEUS Series RX2510」(16万2,750円)

女性にも似合うイルカが刻印された「Bism Beans Regulator RB2700」(9万3,450円/各色あり)。軽量で安定した吸気感を実現している

何かあった場合に使用する予備のセカンドステージ。チタンバルブ仕様のオクトパス「Bism NELEUS Octopus SX2310K」(6万8,250円)と「Bism Beans Octopus SB2600」オープンプライス/各色あり)。両製品とも360度回転できるスウィングヘッド機構を採用している

BCジャケット。タンクを取り付けて、チョッキのように着る浮力調整装置。タンクから空気を入れて内部にため、ボタン操作で海中に排出することによって浮力を調整できる。浮き輪や救命胴衣の役割も果たしてくれる。写真は、左が特殊形状のリブによって、フロートがウエストを包み込むように膨らむ「Bism NELEUS B.C.Jacket JX2710」(14万4,900円)、右は同様のフロート構造を持ち、女性に向けの機能を搭載している「Bism Beans B.C.Jacket JB2610W」(12万3,900円)

タンクの残圧=残りの潜水時間になるので、残圧計は重要な装置である。単独のものから深度計や水温計、コンパス、ダイブコンピュータがセットになっているものまでさまざまな種類が販売されている。写真は、左がコンパスがセットになっており、見やすい角度に調整できるアジャスター機構を装備した「Bism Navigation Gauge GK2121」(オープンプライス)、右が残圧計の針の先やコンパスカプセルにイルカがデザインされ、水深計もセットされているオシャレな「Bism Beans Gauge GB2130」(オープンプライス/各色あり)

ダイビングは、急に浮上すると体内に溶け込んだ窒素が圧力低下によって気泡になり、減圧症(呼吸系障害、皮膚症、神経損傷)という障害が起きる。そのため、浮上する前に一定の水深で減圧のための停止をする必要がある。ダイビングウォッチは、全体の潜水時間の確認や減圧停止時に必須である。一般的にダイビングウォッチは、回転式ベゼルを装備し、水圧に耐えられる完全防水仕様となっているが、体内窒素残量や潜水可能時間を自動的に計算するダイブコンピュータというものもある。写真は、チタンボディで蓄光機能によりバッテリを使用せずに発光する「Bism DIVE DEMO Gratia DD951NXK」(10万3,950円)という時計型のダイブコンピュータ

カメラ機材も揃えよう

さて、これまで見てきたようにシュノーケリングとダイビングでは、潜る深さにかなり差があるので、μ770SWは、シュノーケリングなら問題ないが、ダイビングだと限界の深度である10mを超えてしまう可能性が高い。つまり、ダイビングでは、μ770SWをそのまま使用すると危険ということになる。では、どうすればいいのか? 結局のところ解決方法は、連載第一回で話題にのぼったハウジング(耐水圧ケース)を頼るしかないということになる。しかし、その回でハウジングについて「結構大きくてかさばるので、水中撮影以外に使うのは無理そうだ。しかもかなり高価で、そう簡単には手が出ない」と否定的なことを書いているとおり、出費や大きさが気になる。

一眼レフタイプのハウジングは、20万~30万円はするのが普通。やっぱり高価なのかなあと、おそるおそるμ770SW用ハウジングの価格を調べてみた。防水プロテクター「PT-035」という製品が対応しているが、価格はなんと2万6,250円。意外に安い。しかも耐圧水深は40mまで大丈夫だという。マジですか? 40mといえば、ダイビングでもかなりの深さで、ファンダイビングでは通常は潜らない。同じオリンパスのデジタル一眼レフカメラE-410のハウジングも水深40mまで対応なので、プロ用と同じ深さまで潜れるということになる。さらに、μ770SWがもともとコンパクトなので、ハウジング自体もかなり小さくできている。これだったら、持ち運ぶ際にじゃまにならないので、ダイビングの時だけハウジングを使うという方法がとれる。

μ770SW専用の防水プロテクター「PT-035」。価格は2万6,250円。水深40mまで潜れる。低価格ながら、構造は本格的だ。ほぼ同じ仕様でμ725SW用の「PT-033」も同価格で用意されている

背面のスイッチによって、ほとんどの操作を水中でも実行できる。カメラは、右の写真のようにパカッと開けて入れるだけ。非常に簡単である。これで水深40mまで耐えられるなんて、凄い時代になったものだ

しかし、ハウジングを使うのなら、μ770SWでなくてもいいじゃん、という意見もある。確かに非防水カメラでもハウジングを使えば、深く潜れるからμ770SWでなくても大丈夫だ。しかし、潮風や衝撃に強く、そのままシュノーケリング程度なら問題なく使えるという点では、他のコンパクトカメラと比べても断然有利である。それに、仮にハウジングを使用する場合でも、何と言っても防水カメラなので、万が一ハウジング内に水が浸入しても全然怖くない。これはμ770SWならではの強みといえよう。最近のハウジングは各社とも優秀なので、水が浸入するということはほとんどないが、フタの閉め方が悪かったり、防水パッキングのゴムのよじれや劣化などで、中に水が多少入る可能性もゼロではなく、防水仕様でないカメラは事故があった際に壊れる危険性が高い。この他にもカタログを見ていると「シリコンンジャケット」や「ウェアラブルケース」「フロートハンドストラップ」といった楽しそうな海用のグッズも掲載されていた。このあたりも防水カメラならではのアイテムで使ってみたくなる。

「シリコンカメラジャケット」は5,250円。ピッタリカメラが入り、衝撃やキズからカメラを守ってくれる。メモリやバッテリの交換は、ジャケットを被せたままできるように工夫されている。μ770SW用(CSCH-50)とμ725SW用(CSCH-42)がある

「ウェアラブルケース CSCH-40」(写真左)はベルトで腕に巻き付けて使用するケースで5,250円。ダイビングでも使えるが、サーフィンやシュノーケリングの際に便利そうだ。「フロートハンドストラップ CHS-05」(写真右)をカメラに付けておけば、もしカメラを水中で落としても水面に浮かんでくる。価格は2,520円で色は月グレー、水ブルー、睡蓮ピンクがある

次回は、ダイビングをする際に重要なライセンスの話、そしていよいよ憧れの海に向かって出発したい。

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