気軽に子どもとの記念撮影に応じてくれることもある駅員さん。働いている姿がかっこよく、ついつい写真撮影をお願いしたくなるものです。しかし、列車や乗客を扱っている最中は話が別です。では撮影させていただくには、どうすればいいのでしょうか。今回はタブレット交換を例に、作業中の駅員さんの撮影について解説します(設定は架空です)。
テツヤくんはテレビで、近くの駅で「タブレット交換」という昔ながらの列車交換作業を見られるということを知りました。珍しいもので、もうすぐ廃止になるようです。「仕組みはよくわからないけど、撮影したいな」と思い立ちました。
その駅に向かう一両編成の列車に乗ると、乗客はカメラを持った人がほとんどで、どうやら目的は同じようです。そして、タブレット交換のある駅に停車すると案の定、皆ホームに降りていき、テツヤくんも遅れまいと降りました。誰かが小声で「写真お願いします」と言うも、運転士さんと駅員さんは、無表情のまま淡々と作業をするだけ。テツヤくんが群がる鉄ちゃんたちの様子に圧倒されていると、「早く乗車して下さい!」と注意されてしまいました。
実際にタブレット交換をしている駅員さんによると、一番困るのがフラッシュ撮影。目視による安全確認の妨げとなってしまうのです。それに加えて「撮影の前に一声かけてほしい」そうです。駅員さんの立場を自分に置き換えて、「仕事中いきなり写真を撮られて、それが雑誌やWebサイトに掲載される可能性があったら……」と考え、場合によっては遠慮することも必要です。望遠レンズ等で遠くから撮影する場合も、一声かけたいものです。
また、交換駅での停車時間を利用して車外に出て撮影する場合は、発車時刻まで粘るようなことはしないで、早めに車内に戻って発車を待ちましょう。できれば一旦下車して、事前に撮の許可をもらう時間と気持ちの余裕を持ちたいですね。
いろいろな鉄道撮影の経験を積んできたテツヤくん。そろそろ、興味の対象が初心者という枠を越えてきました。「ボクって、それなりの鉄ちゃんかな? 」と自覚も出てきましたが、そんなときこそ初心を思い出して、安全を心がけたいものです。
「鉄ちゃんの掟」は世の中の変化とともに変わってゆきます。この連載では、なるべく普遍的な話題を扱うように心がけましたが、5年後、10年後も役に立つものかどうか、今は正直わかりません。常に鉄道の動向に興味を持って、最新の情報とマナーを感知したいものです。
最近、また一段と鉄道撮影がお手軽な趣味として語られることが増えました。しかし、鉄道事業が"お手軽"になることは絶対にありません。将来、撮影に制限がかかることがないように、鉄道は"被写体"である以前に"公共交通"であることを忘れずに。そして、鉄道そのものが輝いていられるように、撮影と乗車をバランスよく楽しんでいただきたいというのが、私の願いです。
ミニ情報
「何がいちばん普遍的なマナーなのか」
「鉄道と社会に対するマナー」としてはフラッシュを使用しないことと、立入禁止の場所と私有地には入らないこと、ゴミは持ち帰ること。「居合わせた鉄ちゃんに対するマナー」としては、先にいた人より前に入らないことと、声を掛け合うことです。