前回、新幹線の線路は安全のため近寄れないつくりになっているというお話をしました。しかし、新幹線から在来線へと直通運転をし、在来線の線路を走る「ミニ新幹線」は例外です。フル規格の新幹線にはない角度のカーブや、鄙びた風景の中を走る新幹線車両を、安全に撮影するための注意点を解説します(秋田新幹線、山形新幹線がそれに当たりますが、ここでは架空のミニ新幹線という設定です)。
出張の日程を終え、新幹線でひとつ先の駅にある温泉に寄ってから帰宅することにしたテツヤくん。新幹線に乗って高架からの風景を見ながら、「こういうところを走っていたら、撮影しにくいよなあ」とため息をついていると、いつしか新幹線は地上に下りてきて、普通列車が止まるようなローカル駅に停車しました。しかし、乗降はなく、「列車交換のためしばらく停車します」とのアナウンス。発車後も、スピードが今ひとつです。「変な新幹線だなあ。でも、これなら線路脇から撮影できそうだなあ」と、温泉に行く前に撮影を試みることにしました。テツヤくんが乗った新幹線は、在来線と直通運転をする「ミニ新幹線」だったのです。
駅の近くの踏切でしばらく待つと、新幹線がやってきました。体験したことのない速さで、しかも長い編成です。強い風にあおられて、恐怖で思わず後ずさりしてしまいました。そういえば、これまでテツヤくんが撮影してきた列車は、短い編成でのんびり走る地方私鉄がほとんど。ミニ新幹線は、これまでのものとは怖さが全く違いました。
このように、全くの鉄道撮影初心者よりも、少し慣れた人が鉄道撮影の危険に対して鈍感になっていることもあります。ミニ新幹線が走っているところでは、線路端の雰囲気に比べてかなり速い列車がやってきます。十分に線路から離れて撮影しましょう。
次にテツヤくんは、線路から離れたところに来てみました。このあたりは一面田んぼと果樹園で、線路まで遮るものがなく、列車の足下までよく見えます。「あれを近くから撮れたら迫力があるな」。また線路に近寄りたくなりましたが、近道だと思った道は私道で、地元の人に怪しまれてしまった上、水路があって先には行けませんでした。
スピードの出るミニ新幹線が通るにもかかわらず、線路のまわりに柵などがないということは、逆に人が近寄れないから柵を設ける必要がなかったともいえます。そういう場所こそ、遠くから撮影するのが安全でスマートです。
ミニ新幹線というシステムは、線路が隔離されていないということで、当初事故の多発が心配されましたが、懸念されたほどにはならず今日に至っています。事故を誘発するような行動は絶対にしないで、安全に撮影を楽しみたいものです。また、鉄道撮影で慣れほど怖いものはありません。日々初心を忘れずに。
ミニ情報 統一が検討されている東北新幹線の車両 0系に似た200系や、2階建てのE4系など、バラエティに富んだ車両が楽しめる東北新幹線。しかし、将来的には「ミニ新幹線」区間を除き"E5系(新青森開業時に登場)"への統一が検討されています。まだ数年先のことですが、余裕を持って東北新幹線を記録しておきたいですね。