前回、寝台特急の撮影に行ったものの、自然災害で列車の姿さえ見られなかったテツヤくん。復旧工事が行われるので、しばらく寝台特急の撮影はお預けです(記事中に登場する鉄道名や駅名などの設定は架空です)。

数週間後、復旧工事がほぼ終了し、現地も落ち着きを取り戻してきました。そんな時、「珍しい状況で寝台特急が撮れるぞ!! 」とベテラン鉄ちゃんからのお誘いがありました。このあたりは上り線と下り線が分かれていて、工事が長引いている下り線の代わりに、数日だけ特別に上り線を通すのだとか。テツヤくんにはその意味はよくわかりませんでしたが、「この際、1日でも早く撮影したい」と誘いに乗ることにしました。

現場に着いていたベテラン鉄ちゃん曰く、「この季節は、上り線だけぎりぎり日が当たるんだよ」。おかげで、テツヤくんが初めて撮影した寝台特急は、傑作写真になりました。

このように、何らかの理由で列車の通過が数分、あるいは通過場所が十数m違っただけでも、普段は撮れるはずのない写真が撮れることがあります。でも、前回解説したように、それを目当てに無理な行動をするのは慎むべきです。また、無理のない行動をした上でいい写真が撮れたとしても、無邪気に喜ぶわけにはいきませんよ。

テツヤくんは、この傑作を一刻も早く誰かに見せたくなりました。そこで思いついたのが、前から見ていた画像掲示板。鉄ちゃんたちが匿名でレアな鉄道画像を投稿できる人気サイトです。「ボクの写真も誉めてもらえるかなあ」と期待して投稿したところ、付いたコメントは意外なものでした。

「工事ですっごく不便。by近所の者」。

写真を誉められることしか考えていなかったテツヤくんは、ガックリしたのと、災害について全く考えていなかった自分に恥ずかしさを感じて、投稿を削除してしまいました。……後味の悪い画像掲示板デビューになってしまいましたね。

このような事態を避けるために、心がけておきたいことがあります。それは、アクシデントが転じていい写真が生まれた場合や、撮影した列車が何らかのアクシデントをかいくぐってきたと予想される場合には、投稿記事本文の冒頭にひとこと"お見舞いの言葉"を書くことです。

その言葉を選んでいるうちに、その写真を発表していいものかどうか、頭の中で整理ができてきます。例えば、慢性的な十数分の遅延と、犠牲者もあったような大規模な自然災害による遅延とでは、お見舞いの言葉は違ってきます。また、偶然撮れた写真をどの程度喜べるかも全く違いますよね。"急いで発表しない"というのもひとつの方法です。

鉄道は、被写体である以前に公共の乗り物であり、見る人によって全く違った存在なのです。こういった配慮も、鉄道写真というジャンル特有のものかもしれません。広く、長く鉄道写真を楽しむために、是非この「気遣い」を身につけていただきたいと思います。

ミニ情報
D51 498が故障
JR東日本のイベント列車として活躍する蒸気機関車D51 498が、昨年12月に整備中の事故で故障してしまいました。修繕には時間がかかるので、代役として他の蒸気機関車が使われることもあるようです。まずは、D51 498の修繕が無事進むように願うばかりです。