「新しい列車が見たい!!」と突然家族にせがまれて、わざわざ見にいった経験はありませんか。新車を見ることにこだわるのは、鉄ちゃんよりむしろ普段は鉄道への興味が薄い人や、近隣の人々です。ですから、新車デビューの直後は鉄ちゃんにとっては少し勝手の違う混雑状況になります。今回は営業運転を開始した直後の新車の撮影について解説します(車両名などの設定はすべて架空です)。
新型車両N○系デビューの日は、小雨がパラつくあいにくの空模様。テツヤくんは、新聞で見るようなヘッドマーク付きの新車をバックにしたテープカットシーンを撮りたいと思い、早起きして出かけました。しかし、式典用の場所は報道陣や関係者のみが入場可となっており、一般人は近寄ることができません。式典には要人を迎えますから、仕方のないことなのです。
駅に集まってきたのは、お立ち台で見かけるようなベテラン鉄ちゃんたちではなく、コンパクトカメラを持った若者や、携帯電話のカメラを構えた近所の人たちでした。「引退のときには鉄ちゃんがたくさん来たから、デビューのときもそうかと思ったけど違うんだな」と、カメラの前にどんどん入ってくる人たちに少し戸惑ったテツヤくんでした。
普段の鉄道撮影や、鉄ちゃんがたくさん集まる列車の引退などのときには、鉄道に慣れている鉄ちゃんは知識もある分、場所取りなど一般の人に比べてやや有利に動ける部分もあることでしょう。しかし、今回のように一般の人々が多く集まる状況では、鉄ちゃんルールより"一般社会の常識"が優先されるのです。「立ち位置は先着優先」という鉄ちゃんルールを一般の人々に言ったところで理解はしてもらえないのです。トラブルのないよう、鉄ちゃんルールと一般常識をうまく使い分けましょう。
駅での撮影はうまくいかなかったテツヤくん。気を取り直していつものお立ち台に行ってみました。ここではいい立ち位置を確保できましたが、お天気が今ひとつです。「でもせっかく来たんだし、撮影しよう!」と張り切りましたが、太陽が出ていないのでパッとしません。こればかりは、腕前でカバーすることもできません。「初日でも、天気がよくないと新車らしく撮れないよ。もしかしたら、初日にこだわることはなかったのかもしれないな」と、日光の重要性を再認識したテツヤくんでした。
ここでちょっと豆知識。実は鉄ちゃん、引退時は引退当日の撮影にこだわる人が多いのですが、デビュー当日にはあまりこだわらない傾向があります。それはどうしてなのでしょうか。
とことん新しいものにこだわる鉄ちゃんは、前回お話した「甲種回送」や「試運転」で撮影済みであること、デビューした車両を撮影するチャンスは無理して初日に狙わなくても、これからいくらでもあるから、というのが理由です。むしろ鉄ちゃんは、デビュー日から時間が経過しても、新車にとっての「初めての桜」「初めての紅葉」など、新車と自然の美しさをからめられるタイミングを重視する傾向があります。
初日の雰囲気を楽しむのもいいですが、新車がデビューしてから1年は「四季それぞれにデビューする新車を撮る」と考えて、ゆったりと撮影計画を立てるのがいいですね。
ミニ情報
もうすぐ山形新幹線「つばさ」の新型車両が営業運転を開始 山形新幹線開業時から活躍してきた400系に代わり、12月からE3系2000代が投入されます。すでに「つばさ」として活躍しているE3系0代、1000代の改良型で、外観の変化は余りありませんが、内装にはかなりの変化があります。「やまびこ」と連結されて高速で走っている姿にどんな違いがあるのか、営業運転の開始が楽しみです。