駅で列車の撮影をすることを、鉄ちゃん用語で「駅撮り」といいます。少年・少女時代に鉄道に興味を持った鉄ちゃんたちは、まずお出かけ途中で駅撮りを覚え、そのコツを自然に身に付けています。しかし、大人になってから鉄ちゃんになった人の場合はそうはいきませんよね。これから3回に渡って、意外と要注意な駅撮りについて解説していきます(鉄道名や駅名、路線図などの設定は架空です)。

前回、海外の鉄道に乗って楽しい旅をしたテツヤくん。日本に帰国した後、ちょっと趣向を変えて、マイコミ鉄道に乗車しながら駅で列車の撮影をしてみることにしました。マイコミ鉄道全線乗降自由の一日フリーきっぷを買って、気ままな旅のスタートです。

マイコミ鉄道の始発は「大都市駅」。JR線や新幹線と接続しており、マイコミ鉄道で一番大きな駅です。テツヤくんが改札を入ると、ちょうど2番線に臨時列車「クリスマス号」が入ってくるところでした。「臨時ってことは、ヘッドマークを付けているかな? 」と迷わず2番線に向かいました。

しかし、意外なことに2番線には鉄ちゃんの姿がありませんでした。ふと線路を挟んだ隣のホームである3番線に目を向けると、そこには鉄ちゃんが数人いました。「到着は3番線だったかなぁ……」と確認しましたが、やはり2番線。ちょっと不思議に思いながらも、以前駅で撮影した時の失敗を思い出し、周囲を確認してホームの先端部に陣取りました。

それからまもなく、ヘッドマークを付けた列車が入ってきました。テツヤくんが立っていたのは黄色い線の内側でしたが、まだ減速途中の列車からは強風が。思わず後ずさりしてしまい、写真は悲惨な手ぶれショットとなってしまいました……。その時テツヤくんは、鉄ちゃんたちが隣のホームにいた理由を理解したのです。

3番線にいれば、到着時の強風を受けることなく、安全に撮影ができます。しかも、ホームに隠れている床下まで撮影でき、いい記録にもなります(第5回参照)。もちろん、3番線にはそのホームに入ってくる列車がありますから、安全確認は怠らないようにしましょうね。

次にテツヤくんは、ヘッドマークのアップを撮ることにしたようです。しかし、珍しい列車の登場に、普通のお客さんも携帯電話を構えて撮影しており、ちょっとした人だかりができてきました。デジカメのディスプレイを見ながらいい構図を探してウロウロしていると、誰かが置いた旅行カバンに当たり、転びそうになってしまいました。ヒヤッとする一瞬です。

このように、デジカメのディスプレイを見るのに夢中で転んでしまうというのが、最近目立って来た事故です。衝突したのがスーツケースのような大きなものだと大事故にもなりかねません。

また、大きな駅では乗車口が列車ごとに違うことが多く、列車待ちの列の位置や長さは頻繁に変化します。撮影だけに気をとられるのではなく、足もとにも注意することが必要です。

駅撮りが上手なのは、意外にも小中高校生の鉄ちゃんです。中には、マナー違反をしている大人を注意する正義感溢れる子どももいます。私たち大人の鉄ちゃんも、そんな彼らの情熱やマナーを学びたいものですね。

ミニ情報
重要文化財の門司港駅
福岡県にあり、関門海峡を臨む門司港駅は、現役でありながら重要文化財の指定を受けている駅です。時代を感じさせる茶色い柱のあるホームに、JR九州のメタリックな列車が入ってくる様子に心ひかれるのは、鉄道ファンだけではないはず。長く使われ続けてきた鉄道施設には、単なるレトロ趣味の枠を超えた機能的な美しさがあります。文化財として、駅を見直してみませんか。