7月31日、日本銀行(以下、日銀)は、これまで継続していた大規模な金融緩和策を見直し、長期金利の一定程度の上昇を容認する決定をしました。

「大規模な金融緩和策って何だっけ?」とか、「ふーん、長期金利が上昇するのかあ」と悠長に構えている人もいるかもしれませんが、特にこれから住宅購入を検討している人にとっては流せる話ではありません。

日銀の金利政策には意識を向けよう

これまでゼロ金利政策、マイナス金利政策など、金利を実質ゼロ(あるいはマイナス)まで下げる政策をとってきました。長引く不況から脱却を目指すため金利を下げ、お金を借りやすくして、市場でお金の循環を良くしようとしたからです。

金融機関は、預金してくれた人に支払う預金金利と、融資している人から受け取る貸出金利の差が利益となりますが、預金金利の引き下げ幅より、貸出金利の引き下げ幅が大きいため、その差(利益)が縮小しているのです。「異次元」と称された金融緩和から5年経った現在、超低金利が長引くことで逆に金融機関への影響を放置しておくわけにいかなくなったわけです。

ただ、だからといってすぐに金利がカンカンと上がっていくわけではありません。今回は金利を上げることを決定したのではなく、金利が一定程度上昇することを容認するということ。引き続き長期金利の目標はゼロ%。ただし0.2%程度の変動は容認するという意味です。

金利が上がると債券価格、株価などにも影響があります。日銀の金利政策は(あまり詳細までわからなくても良いので)、その概要と、今後どのような影響が考えられるか程度は気に留めるようにしたいものです。

超低金利もいつまでも続くことはない

ところで、長期金利といえば住宅ローン金利に影響があることはご存知だと思います。ちなみに住宅ローン金利は各銀行が自由に決めているので、たとえば今月A銀行が金利を上げたからといって、すべての銀行も上げるとは限らず、逆に下げたり、変わらずというところもあります。

住宅購入を検討している人は、借り入れを検討している金融機関の金利すいい8月の各行の金利がどのように推移するのかはウォッチしておきましょう。

金融機関もまだしばらくは様子見かもしれません。しかし、これまでは「それほど金利が上がってくることはなさそうだよね」という感覚であっても、今後は「金利が上昇してきてもおかしくない」状況にはなりつつあると思っていたほうが良いでしょう。

具体的には、これまで以上に「購入予算は無理のない範囲」を意識すべきでしょう。特に変動金利を検討している場合は、金利の上昇幅を多めに見て試算しておくと安心です。

来年は消費税アップも予定。背中を押されてもプランはしっかり

さらに(もうすっかり忘れられているかもしれませんが)、来年10月には据え置かれていた消費税アップも予定されています。ますます「それまでに買わないと」という気持ちにさせられますが、消費税アップだからという理由で自己資金が準備できていないまま購入を決行してしまうことは避けましょう。

最近はファイナンシャル・プランナーに予算の相談にいらっしゃる人も増えてきました。それはとても良いことなのですが、実はタイミングの悪い人も少なくありません。

「今週末契約なのですが、この予算で大丈夫ですよね」とか、ひどい場合は「明日契約なのですが、最後に急に心配になって。これで大丈夫でしょうか」と前日の夕方近くに連絡をいただくことも。

私たちファイナンシャル。プランナーは、数字だけで見るわけはなく、相談者のライフプランやライフスタイルなども含めヒアリングし、その上でこの予算で妥当かどうかを検討します。必要に応じて購入に待ったをかけることもあります。

ですからそろそろ住宅購入を考えているという人は、「金利が上昇する前に」「消費税がアップする前に」と背中をす営業トークに踊らされることなく、無理のない予算、購入のタイミングを見誤らないよう、今から早めにプランの見直し、確認をしておくことをお勧めします。

鈴木暁子

鈴木暁子

ファイナンシャル・プランナー(CFP認定者)。キャリアコンサルタント。FPオフィス Next Yourself代表。
「多様化するライフスタイルに応じたライフプラン・マネープランづくりが重要」という視点で、企業、自治体、大学オープンカレッジなどで年間約50回のセミナー・講演を行うほか、新聞、雑誌・WEBなどで精力的に情報発信をしている。
「お金はいい使い方をしてこそ活きる」をモットーに、これまでに数百件の家計診断のほか、 個人コンサルティングも行っている。資産運用、ライフプランニングを得意とし、特に共働き夫婦のライフプランニング、リタイアメントプランニング、高齢期のお金と住まい、相続設計に力を入れている。著書に『100歳まで安心して暮らす生活設計』(実業之日本社)。