子どもを出産後、ママが働くためにはいくつかのハードルがあります。子どもをどこに預けるのか、家事や育児と両立できるのか、職場は通える範囲かどうか……。子どもが熱を出したらどうするかなどの心配ごともあるでしょう。小さい子どもは体調を崩しやすく、職場に迷惑をかけてしまうのなら働かない方がいいのかもしれないと、働き出すタイミングにも悩みます。

今回は、友人からのお誘いにより私が体験した「赤ちゃんをおんぶして働く」お話です。

初めての育児の現実

第一子である長男を出産後、私は慣れない育児と格闘していました。夫が転勤族であることなどもあり、私自身は妊娠を機に会社を退職していたため、赤ちゃんとの時間をゆっくり楽しむ予定でした。しかしいざ子どもが生まれると、とてもそんな余裕はありませんでした。

夫は仕事が忙しく頼れず、実家も遠かったため、近所に育児を手伝ってくれる人はなし。そんな中、少しずつ大きくなってきた子どもを連れて友人と会った時に、その友人が「親子カフェをオープンする」という話を聞いたのです。

子連れでも気兼ねなく過ごせる場所を

その友人にも小さい子どもがおり、子育ての大変さを実感しているところでした。そこで感じた「子どもと一緒にお出かけできる場所が少ないこと」「どうしても他人の目を気にしてしまうため、子連れで外出すると気が休まらないこと」をどうにかしたいという思いから、親子カフェをオープンすることにしたとのこと。お店のスタッフも全員が子どもを持つママで、子どもが一緒でも働けるようにキッズスペースもある、ママと子どもが笑顔で過ごせる場所です。

そんなコンセプトに感動し、素敵な場所になるよう私もお手伝いがしたい! という気持ちに。オープン前にお店の掃除などの手伝いをしてほしいと頼まれ、当時生後8カ月の息子と一緒にお店に向かいました。そこで、親子カフェで働きたいママ達と出会い、私も一緒に働かせてもらうことになりました。

ママでも安心して働けるように

お店の営業時間は10時から17時。私のように赤ちゃんをおんぶして働くママもいれば、実家などに子どもを預けて働くママや、子どもが幼稚園・小学校に行っている間に働くママもいました。午前中やお昼に働きたいママが多かったので、私はランチの終わったカフェタイムの15時から17時の時間帯に週1~2日働きました。

  • 働きたいけど預けるところがない……驚きの「子連れで働く」という選択肢

    お客さんもスタッフもみんなママ!

赤ちゃんをおんぶしながらだったので、私の勤務時間は長くても2時間。収入を重視するならば短いと思われるかもしれませんが、赤ちゃんをおんぶしているので長時間は無理です。働ける時間帯や事情もさまざまでしたが、全員がママであり、ママが働くことの大変さを知っているので、「困った時は助け合い」とみんな協力的でした。

もちろん、どうしても勤務時間中に子どもが泣いてしまうことや、おむつ替えが必要な時もありましたが、親子カフェでは、授乳室やおむつ替えスペースも完備していましたので、一緒に働いているスタッフに一声かけ、おむつ替えなどをすることができました。スタッフはそのシステムを事前に納得して働いているので、「お互いさまだから、大丈夫」と何度も言ってもらえ、安心して働くことができました。

子どもが高熱に! 仕事はどうする?

ある日、出勤の予定があるのに、息子が39度の高熱を出し焦ってしまいました。そんな時、この親子カフェには、スタッフがフォローし合う仕組みがあったのです。

事情があって仕事をお休みしなければならなくなった場合、スタッフ全員が登録しているSNSへメッセージを送り、代わりの人を募集します。私もお仕事当日の朝にメッセージしましたが、交代で仕事に入ってくれる人がすぐに見つかりました。

ママ達が忙しい朝の時間帯は、電話連絡だと気を遣いますし、相手が電話に出られないこともあります。しかしSNSのメッセージであれば、こちらが送っておくことで、相手の都合のよいタイミングで見てもらうことができます。店長など責任者に代わりの人を探してもらうのは、負担をかけることに罪悪感を抱いてしまうこともあります。

しかしこの方法であれば、休む本人が代わりの人を探すことができ、その情報が全員に共有されるため、経緯の説明などの連絡の煩わしさも軽減され、スムーズにお休みをもらうことができました。

子どもを3人育てたベテランママに相談も

当時、近所に子育ての疑問や悩みを相談できる人がいなかった私にとって、親子カフェで気軽に直接話をできる人がいるというのは、本当に心強いものでした。子どもが3人いるベテランママと一緒に働ける日は、お仕事が始まる前や終了後に、よく相談に乗ってもらっていました。

また、赤ちゃんだった息子も、家以外の場所で人と触れ合うことができ、たくさん可愛がってもらいました。まだ兄弟がいなかったので、子ども同士が仲良く遊ぶ姿も、嬉しいものでした。

おんぶ拒否でピンチ

しかし子どもが2歳になる頃、おんぶを拒否するようになってしまいました。キッズスペースで子どもだけで遊ぶにはまだ早い年齢だったこともあり、仕事はお休みすることに。そんな折に第二子の妊娠が判明し、お店を辞めることになりました。

登録スタッフもたくさんいましたし、子どもが複数いるママも多かったことから、「赤ちゃんが生まれたら、また戻っておいで」と祝福して送り出してもらいました。その後、夫の転勤で引っ越すことになり、親子カフェへの復帰は叶いませんでしたが、とてもいい体験になったと今でも思っています。

それまでは、子どもが小さいうちは、預け先もないため外に出て働くことはできないと思っていましたが、こんな選択肢があるのかと、まさに目から鱗の体験でした。産後、ママが働き始めることのハードルを下げてくれたと思います。必ずしも全員が保育園に預けられるとは限らない中で、働きたいママにも、さまざまな選択肢があるといいですね。

筆者プロフィール: 平井祥子

オフィスFP Lino 代表
理系出身の元エンジニアで2児のママ。結婚後、家計管理や資産運用などで行き詰まり、ファイナンシャルプランナーの資格を取得。夫の転勤のため正社員を退職。徳島と大阪で子育てをしながらママ向けにお金の情報を発信中。マネー講座・働き方や仕事と家庭の両立に悩む女性の個別相談を中心に活動し、お金の面からママや女性が『自分らしいライフスタイル』をつくるサポートをしている。ホームページ「ママと女性のお金と人生設計」を運営。
2級FP技能士/マイライフエフピー認定ライター

イラスト=オオノマサフミ