マルチコアCPUをサポートし、パワフルになった仮想化ソフト
【2009年2月号掲載】



スペック

[発売元] ラネクシー [価格] 通常版:1万2,500円、ダウンロード版:9,000円、アップグレード版:5,900円、特別優待版パッケージ価格:8,400円、特別優待版ダウンロード価格:6,800円 ※特別優待版は他社仮想化ソフトウェアの所有が条件 [OS] Mac OS X 10.4.11、10.5.2以上 [メモリ] 1GB以上(Windows Vista使用時には2GB推奨) [HD] 450MB+仮想マシンインストール容量 [備考] 1.66GHz以上のインテルCPUを搭載したMac [掲載号] 「Mac Fan」2009年2月号

OVERVIEW

Mac上でウィンドウズやLinaxを動作させる仮想化ソフトの分野で、定番製品として挙げられるのが、この「Parallels Desktop(パラレルズデスクトップ)」だ。

本製品は、約1年ぶりのメジャーバージョンアップとなるが、その一番の目玉はマルチコアCPUへの対応だ。試験的ではあるが、最大8コアまでサポートしているため、8コアのMac Proをフル活用できる。

(1) マルチコアCPU対応でパフォーマンス増大
3Dベンチマークソフト「CINEBENCH R10」でのテストでは、マルチコアCPU性能が7861を示した。ライバルの「VMware Fusion」は6321だったのに対して約20%高い数値を示している(数値が大きいほど高速)

また、3Dグラフィックスやゲーム向けの命令セットである「DirectX 9.0」や「OpenGL 2.1」もサポートしたほか、64ビットOSにも対応した。

(2) コヒーレンスモードでMacアプリのように
ウィンドウズのアプリケーションウインドウを直接Macのデスクトップ上に表示する「コヒーレンス」モードを備えている。Macからのファイルのドラッグ&ドロップなども可能で使いやすい

(3) Macに接続されているドライブがネットワークドライブに
今までのように仮想OS側でマウントさせることもできるが、このようにMacでマウントさせたまま仮想OS側でネットワークドライブとして認識させることも可能だ。どちらかのOSが占有することなく、両方で認識できるのは便利だ

FOCUS ON

マルチコアCPUに関しては、ライバル製品の「VMware Fusion(ヴイエムウェア・フュージョン)」が、一足先に対応を果たしている。しかし、フュージョンでは、マルチコアCPUをコアごとに1つのCPUとして認識する。それに対して、本製品ではあくまで1つのマルチコアCPUとして認識できるため、複数個のCPUをサポートしていないWindows XPやVistaのホームエディションでも、マルチコアの性能を発揮できる。

そして、このマルチコア対応などの進化により、体感速度が大幅に向上した。今回、Vistaをインストールしてみたが、今までのワンテンポ遅れるような反応速度の遅さはなく、キビキビとしたレスポンスが得られるようになった。今まで、仮想化ソフトはブートキャンプに比べ反応が遅いと感じていたため、ブートキャンプでウィンドウズを使用していたが、この反応速度ならばこちらを常用しようという気にさせてくれる。

また、DirectX 9.0、OpenGL 2.1がサポートされたことで、3DゲームやCADソフトなどの対応の幅が広がった。実際、前のバージョンでは動作しなかった3Dゲームを試してみたところ、無事プレイすることができた。ゲームに備わっているベンチマークテストの結果は決して高い数値ではなかったが、Mac自体の性能が上がれば、いずれ快適に動くようになるだろう。

(4) ダイレクトX 9.0対応でゲームも動く
以前は画面が真っ黒になって動かなかったDirectXを使用するゲームも動作するようになってきた。図は、バンダイナムコゲームスの「銀河英雄伝説」

なお、意外に重要なのが64ビットOSへの対応だ。Windows XPなど32ビットOSでは、1つのアプリケーションで扱えるメモリ容量が3GBまでと限られている。64ビット版のOSをゲストOSとして使用することで、大容量メモリに対応したアプリケーションで高いパフォーマンスを得られるだろう。

(5) セキュリティソフトが標準添付
本製品専用のカスペルスキー社のウィンドウズ用セキュリティソフトが付属する。しかも1年間のライセンスが付いてお得だ

AFTER REVIEW

マルチコアCPUへの対応を果たし、動作速度もかなり向上したという印象だ。今後の課題はいかにGPUを使うかという点になってくる。次期Mac OS Xのスノーレパードでは、OpenCLという機能が搭載されるという。この機能は、GPUをグラフィックス演算以外にも活用できるようになる機能だが、今後、仮想化ソフトがこの機能を活用できるようになれば、さらに快適なパフォーマンスが期待できそうだ。