デジカメの欠点をソフトでカバー、簡単操作で明暗くっきり
【2008年12月号掲載】
スペック
[発売元] ジャングル [価格] 2万790円 [OS] Mac OS X 10.4/10.5 [メモリ] 256MB以上 [HD] 200MB以上 [備考] PowerPC G4/G5、もしくはインテルCPU搭載のMac。1024×768ピクセル以上が表示可能なモニタが必要 [掲載号] 「Mac Fan」2008年12月号
OVERVIEW
「抜けるような青空を背景に写真を撮ったはずなのに空が白く飛んでしまった」。そんな経験のある人は多いだろう。とはいえ、撮影時に空に露出を合わせると手前が真っ黒になってしまう。これは、写真のラチチュード(露出の許容範囲)が、人間の眼より狭いことが原因だ。
そんな状況のとき、露出をずらした複数枚の写真を撮り、それを合成しながらいいとこ取りをする「ハイダイナミックレンジ(HDR)」合成という手法がある。本製品は、簡単な操作でHDR合成を行い、人間の見る情景に近い階調を持つ写真を得ることのできるアプリケーションだ。
FOCUS ON
(1) 複数の写真をセットで読み込む |
操作は非常に簡単で、露出をずらして撮影した写真を複数枚読み込むと自動的にHDR画像を生成する。それぞれの写真からよい部分を抜き出すので、個々の写真は三脚を使って完全に固定された画角で撮られていることが望ましい。
読み込み時に写真のズレを微調整する機能もあり、素材によっては手持ちで撮った写真でもうまく合成してくれる。ただし、この微調整を手作業で調整できないのは少々惜しい。 なお、被写界深度が異なる画像を合成するとボケ味が不自然になる。だから、絞りを固定してシャッター速度で露出を調節するのがコツだ。
HDR画像は、合成時のしきい値調整が完成度を大きく左右するが、本製品の自動調整はかなり満足いくもので、ほとんどの場合、初期設定のままでも十分だと思える。階調や彩度などを自分で調整することもでき、パラメータも豊富で試行錯誤を繰り返すのが楽しい。欲をいえば、この調整のプレビュー表示がリアルタイムに追随してくれるともっと快適になるだろう。
HDR合成に魅力を感じていても、三脚を使って露出の違う写真を撮影するのは大変というユーザも多いだろう。本製品には、1枚のRAWデータから擬似的にHDR画像を作るモードがあり、なかなか面白い。
これは、RAWの現像時に、増感と減感した2枚の写真を作りHDRにまとめる手法を応用したものだ。想像以上に効果があり、手持ち撮影カットにも使えるので応用範囲が広い。HDRの魅力の一端を手軽に楽しめるモードだ。
総じて本製品は本格的なツールであると同時に、すべての写真愛好家が楽しめるソフトだといえる。
AFTER REVIEW
本製品はHDR画像処理の面白さを簡単な操作で味わえるという意味で非常にユニーク。「眼で見たまま」といわれるHDRだが、従来のラチチュードの狭い写真に慣れていると、HDRの深みのある画調に非現実的な美しさを感じさせられる。特に風景写真を趣味にしているユーザは間違いなくショックを受けるはずだ。安価な製品とはいえないが、表現の幅が拡がるツールであるのは間違いない。