銀塩写真のテイストを詳細にコントロールして再現
【2008年11月号掲載】



スペック

[発売元] ソフトウェア・トゥー [価格] 2万5,200円 [OS] Mac OS X 10.4以上
[メモリ] 512MB以上 [備考] PowerPC G4/G5もしくはインテルプロセッサ搭載のMac。Adobe Photoshop CS2/CS3、Photoshop Elements 4.0/6.0、もしくはPhotoshopプラグインと互換性のある画像編集ソフト、Aperture 2.1以上のいずれかでプラグインとして動作 [掲載号] 「Mac Fan」2008年11月号

OVERVIEW

本製品は、PhotoshopおよびAperture用のモノクローム写真作成プラグインだ。

プラグインを使わなくても写真をグレースケールにしたり、彩度をゼロにしてモノクロにすることは簡単にできるが、本製品の特徴は、単に「それっぽい」モノクロを作成するのではなく、アナログ時代の銀塩写真を思わせる多彩なモノクロ手法のバリエーション、デリケートな粒状性の再現、そして使いやすい部分補正が一体化した、高品位で創造性を刺激するモノクロ写真を生成する点にある。

FOCUS ON

PhotoshopもしくはApertureから本製品を起動すると、左側にスタイル(プリセット)が並ぶ。そのスタイルの豊富さを確認していくと、単にモノクロといっても、露出、増感/減感処理、調色処理などによって多彩な表現があることに改めて気づかされる。アンティーク調ものやHolga(ホルガ、多くの愛好家に支持されるトイカメラ)風のものまであって楽しい。ここから好みのものを選ぶだけでもかなりの表現幅があるが、本製品の真骨頂は右側に並ぶ高度で多彩な調整パラメータだ。

(1) スタイルを選ぶのが基本
起動すると28種類のスタイル(プリセット)が作品作りを誘導する。選ぶと瞬時にプレビューが切り替わるなどレスポンスも高速。このシンプル&スピーディさがプロに愛される理由か

明るさ、コントラストといった標準的なものから、高精度なストラクチャ(明瞭度)調整を任意に行える。また、「Uポイントテクノロジー」という独自の部分補正機能も搭載しており、存分に試行錯誤を行える。

(2) 部分的な調整もマスクなしでOK
Nik Software独自のUポイントテクノロジーで、複雑なマスク作成を行うことなく、明るさなどの調整作業を部分的に適用できる

フィルムグレイン(粒子ノイズ)はフィルムテイスト再現に欠かせない技術だが、他の画像編集ソフトがノイズを重ねる手法をとるのに対し、本製品はハロゲン化銀による粒状化プロセスを再現するなど、自然なフィルムルックが特徴だ。この技術を盛り込んだモノクロフィルムシミュレートなど懐かしくも新鮮な表現を見せてくれる。

(3) 多彩なフィルムルックを再現
自然で美しい粒状性生成エンジンを持ち、往年の銘フィルムを含む18種類のモノクロフィルムの質感を再現。粒状感、色温度、トーンカーブをさらに微調整することもできる

(4) より創造性を深めるトーニング
デリケートなモノクローム色調を生成するトーニング(調色)は18種類のプリセットを基本に印画紙のベース色まで調整可能。ただし、プリンタマッチングは難しい作業となった

元データはデータ形式を問わず、8ビット、16ビットのどちらのモードでも対応する。なお、適用後はモノクロに見えるが実際はRGBデータで処理されたレイヤーになる。ここが難しいところで、インクジェットでプリントしてみたら、モノクロの濃度や階調などが思うように出なかった。微妙に意図していない色味が出てしまう場合もある。もちろんこれらはソフトウェアのせいではないが、思いどおりのモノクロ出力を行うのは大変なことだ。積極的な推奨機材、設定、用紙の情報公開を期待したい。

(5) スマートフィルタに対応
Photoshopプラグインとして起動すると、元画像を保持したまま効果パラメータをあとから修正できる「スマートフィルタ」に対応する。修正の入るビジネス用途では非常に便利だ

(6) 複数画像の編集に対応
Apertureのプラグインとして動作させると、複数画像を同時に取り込んで順次作業が可能となる。プロの求める効率的な作業フローが実現する

AFTER REVIEW

写真をモノクロにするだけで2万5,200円という高価なプラグイン。しかし、本製品の作るモノクロは、質感のよさ、バリエーションの豊富さにおいて別格だと感じた。特にプリセットから好みのものを選び、微調整して自分だけのモノクロ表現を作っていく行程は、昔、写真の自家現像を行った人間には堪らなく楽しい。ただし、画面で見たままのモノクロを出力するには、プリンタや用紙にも投資が必要になるのが悩ましい。