タブ機能で操作画面を一新した、老舗人気DAWソフト
【2008年11月号掲載】
「Digital Performer(デジタルパフォーマ)」(以下、DP)といえば、年季の入ったMacユーザであれば知らない人はいないといえるほどの、老舗のDAW(デジタルオーディオワークステーション)ソフトだ。そのDPの新バージョンでは、インターフェイスを大胆に変更。現代風のスッキリとしたウインドウデザインになった。価格も大幅に引き下げ、デジタルオーディオ業界に新たな挑戦を挑んだ。
スペック
[発売元] ミューズテクス [価格] オープンプライス [実勢価格] 7万4,800円前後 [OS] Mac OS X 10.4.7以上 [メモリ] 1GB以上 [HD] 1GB以上 [備考] 1GHz以上のPowerPC G4/G5もしくはインテルプロセッサを搭載したMac [掲載号] 「Mac Fan」2008年11月号
OVERVIEW
新バージョンの特徴としてまず挙げられるのは、インターフェイスの大幅な刷新だ。現在のDAWソフトのトレンドは、いくつもの細かなウインドウを開け散らかすのではなく、1枚のウインドウ内でさまざまな情報を別枠で表示することである。MacユーザにとってはガレージバンドやiPhotoで一般的になったウインドウ表示形式で、その後「Logic(ロジック)」もこれに倣っている。
(1) 2次元的に簡素化されたインターフェイス |
「Digital Performer」も、バージョン4から「コンソリデイトウインドウ」というオプションを初期設定でオンにしており、ウインドウを開け散らかさないようにする操作方法をユーザに提示してきた。ところが旧バージョンからのユーザには変化を好まない者もいて、コンソリデイトウインドウを使わないユーザも少なくなかった。
しかし、DP6では、コンソリデイトウインドウに加えてタブによる表示の切り替えも登場し、もう完全にコンソリデイトウインドウ主体で使ってほしいという制作者のメッセージを感じずにはいられない。もちろん単独ウインドウで表示したい内容はメニュー1つ(ショートカットあり)で別ウインドウとしてポップアップ表示させることができるので、従来のユーザも安心だ。
FOCUS ON
コンソリデイトウインドウとタブ機能に慣れないうちは、[ウインドウ]メニューからウインドウセットを選んで、その先のサイドメニューに表示されるさまざまなセットを選んでみるといいだろう。MIDIエディットに最適な画面構成や、ミキシングに最適な画面構成に瞬時に変えることができる。
本バージョンのもう1つの売りは、エフェクト・プラグインの強化だ。古いバージョンから搭載されていた「eVerb」は今となってはその残響成分に不自然さを感じてしまう。最近は、サンプリング技術を使って実際の残響を完全に再現するインパルス&レスポンスという方式が一般化している。ライバルソフトの「Logic」も「Space Designer(スペースデザイナー)」というハイグレードなリバーブを標準装備しており、DPのeVerbはかなり水を開けられていたのだが、今バージョンからは「Pro eVerb」という新型のリバーブで一気に互角になったといえるだろう。
その他にもマスタリングでの出力レベル調整に役立つ「MW Leveler(MWレベラー)」、音をリズム的なトレモロ処理で音楽的に表現する「Pattern Gate(パターンゲート)」など、エフェクトの強化は頼もしい限りだ。
(5) 操作性が飛躍的にアップしたトラック・コンプ |
AFTER REVIEW
アップグレードコストの3万5,700円は、インターフェイスの大きな改善、魅力的なエフェクトを天秤にかければ納得がいく。しかし、実際に使用してみると戸惑う部分が1つある。コンソリデイトウインドウとは別にウインドウを出すと、そのタイトルバーを認識しづらいことだ。本当のタイトルバーの下に一番太くグラデーションのかかっている部分があり、ついそこを掴んでしまう。次期バージョンでは改善を望みたい。