実機の解析データを使った、高画質なRAW現像ソフト
【2008年9月号掲載】
デジタル一眼レフの普及とともに、RAW現像ソフトへの関心も高まってきた。RAW現像ソフトは、複数のソフトウェアメーカーが独自の機能を競い合う、現在もっともホットな分野といえるだろう。そんな市場の中、「DxO Optics Pro」は、膨大なカメラとレンズの分析データを使って現像を行うという長所で多くのユーザの支持を得ている。本バージョンでは、現像エンジンの刷新やノイズ除去テクノロジーなどを備え、RAW現像ソフト市場に新たな勝負をかけてきた。
スペック
[発売元] ソフトウェア・トゥー [価格] スタンダード版:1万9,800円、エリート版:3万9,800円 [OS] Mac OS X 10.4~10.5 [メモリ] 2GB [HD] 150MB以上(使用するモジュールの種類によっては追加容量が必要) [備考] PowerPC G4/G5、またはインテルプロセッサ搭載のMac [掲載号] 「Mac Fan」2008年9月号
OVERVIEW
本製品は、膨大なレンズとカメラの実機解析データを使って画像を補正するアプローチが大きな特徴だ。焦点距離や撮影距離、ISO感度などカメラが記録するあらゆる撮影パラメータを考慮して現像を行い、レンズ固有の収差も自動で補正することができる。
今回のバージョンでは、インターフェイスを刷新したほか、新たなRAW現像エンジンを搭載し、高品質なノイズ除去を実現した。DxOシリーズ3世代目となるこのエンジンは、色収差までおよぶ広範囲かつ高品質な自動補正を実現する。
(3) レンズの収差を自動補正 |
さらに、ダスト/汚れ除去ツールも備え、気になる箇所をユーザがマウスを使って修正できるようになった。また、「EOS Kiss X2」などの新型カメラのサポートもしっかりと行っている。
FOCUS ON
最近のRAW現像ソフトは、美しい画像が求められるのは当然として、レンズの収差や歪曲を補正することによる総合的な意味での高画質指向と、インターフェイスのシンプル化がトレンドだ。本製品は、実際のカメラ/レンズの分析データを核に補正を行うという手法で他の汎用RAW現像ソフトとは一線を画したクオリティを実現しているが、そのメリットは画質面だけでなく、ユーザがパラメータを複雑に操作する必要なしに、レンズとカメラボディの情報から自動的に高度な補正を行う点にもある。そのため、本バージョンで改良されたインターフェイスでは、ほとんどマウスで選ぶだけで高度な補正を行ってくれる。
(4) ハイライト情報も復元 |
(5) 部分的な色補正が可能 |
逆にいえば、自分のカメラ、レンズがサポートされていないとメリットは半減する。最近ではカメラメーカー純正のRAW現像ソフトでも、レンズの固有データを使った補正を積極的に行うようになってきた。純正ソフト同等のスピードでレンズやボディのサポート対象が拡大し続けるか否かが、本製品を使い続けるうえでの1つのキーになるだろう。
また、本製品の純正プラグインである「DxO FilmPack」は、同時使用が必須といえるほどユニークだ。銀塩フィルムはメーカーや銘柄ごとに発色や粒状性が異なり、狙いに合わせたフィルム選びも写真のテクニックの1つだった。DxOフィルムパックは、それをデジタル的にシミュレートするもので、古参ユーザには懐かしい、新しいユーザには新鮮な"あの"フィルムトーンがプルダウンメニューから選択するだけで再現できるのはDxOならではの楽しみの1つとなるだろう。
(6) フィルムの特性を再現 |
AFTER REVIEW
画像処理に対する深い知識なしに高精度な補正ができるのが本製品の魅力だ。一方で派手な効果を見せる機能は少ないので、ほかの画像処理ソフトの前段階としてうまく活かすのがポイントだろう。ほとんどの機能がRAWファイルにしか適用できないのは本ソフトの特性上仕方ないとして、操作時の画面への反映がワンテンポ遅れるのは微妙な試行錯誤を繰り返すときに気になる部分だ。