グラフィカルなパッケージ機能で、関連する書類をまとめ上げる
【2008年8月号掲載】



スペック

[発売元] アドビ システムズ [価格] 通常版:5万7,540円、特別提供版およびアップグレード版:2万1,735円、アカデミック版:2万1,735円 [OS] Mac OS X 10.4.11または10.5以上 [メモリ] 256MB以上 [HD] 1.19GB以上 [備考] PowerPC G4/G5、またはインテルプロセッサ搭載のMacに対応。1024×768ピクセル以上のディスプレイ、DVD-ROMドライブが必要 [掲載号] 「Mac Fan」2008年8月号

OVERVIEW

Acrobat(アクロバット)がメジャーアップデートを行った。本バージョンではいくつかの新機能の搭載や機能強化が図られているが、中でも「PDFポートフォリオ」は、今回の目玉ともいえる機能だ。この機能を使えば、文書や画像、電子メール、動画など、さまざまなファイルをインデックス付きで1つのコンパクトなPDFファイルに統合できる。【2008年8月号】

(1) 複数のファイルをひとまとめ
PDFだけでなく、画像やムービーなど、さまざまな形式のファイルをPDFポートフォリオとしてパッケージできる。ファイル単位、フォルダ単位での追加が可能で、表示方法も変更可能だ

さらに、PDFにフラッシュビデオを埋め込めるようになったほか、起動時間の短縮、WEBキャプチャ機能やフォーム機能の強化など、細かな機能の向上が図られている。

なお、本製品の登場に伴い、Creative Suiteのバージョンが3から3.3となった。Acrobat 8がバンドルされていた製品は9が同梱されるようになったほか、Design Premium(デザインプレミアム)には、「Adobe Fireworks CS3」も同梱されるようになった。価格はこれまでと同様で、CS3からCS3.3へのアップグレードは、Acrobat本体のバージョンアップ価格と同じ2万1,735円となっている。

FOCUS ON

PDFポートフォリオを使ってプロジェクトごとに関連ファイルをまとめておけば、取り扱いやバックアップが楽になるというメリットがある。例えば、印刷目的であれば、出力用PDFに元データ、さらにはリンクファイルやフォントなどをPDFポートフォリオとしてまとめておくとよいだろう。もちろん、必要に応じてファイルを取り出せる。

また、異なるフォーマットの文書でも、PDFポートフォリオにしておけば誰とでもデータの共有が可能になる点も評価できる。Microsoft Officeのファイルであっても、ポートフォリオに格納しておけばファイルを開くことなくAcrobat上でプレビューできる。さらには、ロゴや画像などをレイアウトし、オリジナルのテンプレートを作成することも可能だ。クライアントに対し、見栄えのよい文書やカタログを見せる用途にも使える機能だ。

(2) クライアントへの提出にも有効
PDFポートフォリオはレイアウトの変更もできるので、複数のファイルをクライアントに見せるときなどに見栄えを整えることができる。図のようにカバーフローのような表示を設定したり、カバーシート(表紙ページ)やヘッダの指定(図では、ロゴとテキストを追加)もできる

WEBキャプチャ機能の向上も見逃せない。これまでもWEBページをPDF化することは可能だったが、正直実用レベルにはちょっと無理があった。しかし、Acrobat 9では、再現性がかなり向上しており、WEBコンテンツのチェック作業にも使えるレベルになったといえるだろう。

(3) WEBページを正しくPDF化
Acrobat 8(左)とAcrobat 9(右)、それぞれのWEBキャプチャ機能の比較。本バージョンで再現性が大きく向上しているのがわかる。Mac OS XのプリントダイアログからPDF化したものより再現性は高い

(4) DTP向け機能も強化
出力プレビューの「表示」のプルダウンメニューには、特色や写真、テキスト、ラインアートといった項目が追加され、表示項目を絞り込めるようになった。例えば、そのドキュメントのどこに特色が使われているのかがすぐにわかる

AFTER REVIEW

PDFポートフォリオは優れたコミュニケーションツールとして評価できるが、ほかに大きな機能アップがなかったのは少々さびしい。とはいえ、WEBキャプチャの再現性向上など、細かい部分のブラッシュアップは確実に行われている。PDF/XやPDF/AのPDFを開いたときに国際規格に準拠したPDFになっているかチェックする機能などもあり、ビジネスでもDTPでも頼りがいのあるツールになっている。