Leopardのために進化したATOK
変換精度もさらに強化【2008年8月号掲載】


変換精度の良し悪しは、Macを使う上でのストレスに直結してくる。OS標準の入力環境であることえりも、バージョンアップごとに変換精度を高めてきたが、さらなる変換効率を望むなら、やはりATOKだ。最新バージョンのATOKは、変換エンジンの強化や辞書の拡充を図るとともに、使い勝手を向上させる細かなチューンアップが随所に施され、より完成度の高い日本語入力環境へと進化した。


スペック

[発売元] ジャストシステム [価格] 通常版 パッケージ価格:9,800円、ダウンロード価格:6,800円、プレミアム パッケージ価格:1万2,800円、プレミアム ダウンロード価格:9,800円、広辞苑第六版セット:1万5,400円、Mac+ウィンドウズ:1万2,800円(すべて税別価格) [OS] Mac OS X 10.3.9~10.5(10.4以上を推奨)
[備考] IntelプロセッサまたはPowerPC G3以上。クラシック環境では使用不可 [掲載号] 「Mac Fan」2008年8月号

OVERVIEW



(1) ATOKパレットアピアランスを一新
ATOKパレットのアピアランスに、ホワイト、ブラック、オーバルの3種類が用意された。さらに、パレットの透明度なども設定できる

本バージョンでは、より快適な入力/変換を行うための機能強化が図られているのはもちろん、Mac OS X 10.5 Leopardの進化に足並みを揃えた新機能もいくつか搭載している。

その1つが、64ビットアプリケーションへの対応だ。従来のサードパーティ製品では、64ビットアプリケーション上での文字入力が不可能だが、本バージョンを使えば、アプリケーションが32ビットか64ビットかを意識することなく入力ができる。現在はまだ64ビットアプリケーションはほとんどないが、将来を見据えた進化といえるだろう。

変換機能では、前バージョンから搭載した変換エンジン「ATOKハイブリッドコア」をさらに進化させて変換精度を向上させたうえ、モードを切り替えることなく話し言葉をスムーズに変換できるよう進化した。

(2) 話し言葉もキチンと変換
ATOKシリーズは、[話し言葉]モードと[一般]モードを切り替えて使用する機能があるが、本バージョンでは[一般]モードでも話し言葉がスムーズに変更できるようになった

ほかにも、誤りがちなカタカナ語の指摘(例えば、アフィリエイトをアフェリエイトと誤入力した時に訂正候補を表示)する機能や、漢字を1文字ずつ入力して変換していっても、単語として学習してくれる細切れ学習など、細かな改良が加えられている。

(3) 新語に威力を発揮する細切れ学習
1文字ずつ細切れに変換/確定しながら入力していけば、それ以後1単語として学習される。辞書に登録していない単語を入力する時に重宝する機能だ

(3) 変換候補が連動して変わる
上図のような作例で最初の数字を漢数字に変換すると、後続の数字も連動して変換される。変換のためにキーを叩く回数を減らすことができる

FOCUS ON

第一印象からいえば、派手な新機能は少ないが、堅実に進化した印象だ。特に、話し言葉の変換精度の向上は、多くの人にとってメリットがあるだろう。従来のATOKは、[一般]モードや[話し言葉]モードなど複数のモードが存在し、切り替えて使うことで変換の傾向を分けていたのだが、本バージョンでは[一般]モードでも多くの話し言葉を正しく変換できる。自分のWEBサイトやブログを持ち、情報や自分の意見を発信する読者も多いと思うが、そのような場では砕けた話し言葉表現を多用しがちだ。わざわざモードを切り替えることなく正しく変換できるのは、入力のストレスを大きく軽減してくれるだろう。

また、変換辞書の語彙が多いのも、ATOKシリーズのセールスポイントの1つ。今回も、気象用語やエコロジー用語、国内外の著名作家の名前など、さまざまなジャンルの語彙を拡充している。

(5) 最新の辞書・辞典を搭載
通常版では「乗換案内 駅名変換辞書」が、プレミアム版ではさらに、「会社四季報 企業名変換辞書」「明鏡国語辞典」「ジーニアス英和/和英辞典」「アスキー マック用語辞典」が付属する。これらの辞書を別途購入することを考えれば、ATOKのお得感はさらに増す

執筆中の世界史の雑学本で試してみたところ、さすがに「超運指流(正しくは趙雲子龍)」や「アイシン加倉付議(正しくは愛新覚羅溥儀)」などの固有名詞は一発変換とはいかなかったが、「劉備玄徳」や「李鴻章」などメジャーな人物の変換は問題なくできた。

加えてATOK2008では、外部のデータベースやインターネットコンテンツを利用できるATOKダイレクト(※)によって、辞書にない流行語なども利用できるようになる。この機能によりさらに砕けた表現が可能で、ブログ時代には有用である。

ブートキャンプの正式サポートに伴い、Macとウィンドウズを併用するユーザや、ウィンドウズからスイッチするユーザも、今後ますます多くなるだろう。Mac版とウィンドウズ版のATOK2008を同梱したセットもお得で、ユーザ本位のラインアップでありがたい。

(※)本製品発売と同時に「ATOKダイレクト for はてな」という追加機能のダウンロードが「ATOKバリューアップサービス[ベータ]」を通じて行われる。これは、「はてな 注目キーワード」などの情報を文字入力中にダイレクトに参照できる機能だという。

AFTER REVIEW

驚くような新機能は搭載しておらず、最初は一見地味なバージョンアップと感じてしまう。しかし、しばらく使っていると、旧バージョンよりもスムーズに入力できるようになっていることに気づく。細かな変換精度のチューンアップや語彙の拡充が利いている感じだ。最新の辞書を搭載していることも併せて考えれば、新規ユーザのみならず旧バージョンのユーザがアップグレードする価値も大きい。