プラグインへの対応を果たし、写真の柔軟な編集が可能に
【2008年7月号掲載】


2005年秋の発売以来、デジタル一眼レフカメラを駆使するプロフェッショナルやパワーユーザを中心に高評価を得てきた「Aperture(アパーチュア)」。単にRAWファイルの現像を行うだけでなく、デジタル写真の管理、比較、調整までを一本でこなすパワフルなツールだ。2008年2月には、100を越す新機能を引っさげAperture 2として登場、さらに3月末に公開された2.1アップデートでは、「覆い焼きと焼き込み」という使い勝手のよい編集機能を追加し、より使いやすく、実用性の高いツールへと進化した。


スペック

[発売元] アップルジャパン [価格] 2万3,800円 [OS] Mac OS X 10.4.11以上/10.5.2以上 [メモリ] 1GB以上(2GB以上を推奨) [HD] 5GB以上 [備考] 要DVDドライブ。インストール時に機種チェックあり [掲載号] 「Mac Fan」2008年7月号

OVERVIEW

2008年2月にメジャーアップデートを果たしたAperture 2は、インターフェイスを大幅に変更し、ボタン配置をすっきりとさせてより使いやすいソフトとなった。さらに、彩度を自然に調整できる「バイブランス」コントローラの搭載、RAW画像処理エンジンの改良などが行われ、RAW現像ソフトとしての完成度を向上させた。

(1) 整理されたインターフェイス
インターフェイスは2.0で大幅に変更が加えられた。ボタン類が整理されてスッキリとした印象になっている。画面下側に、サムネイルをフィルムストリップ表示できるようになったのも使い勝手がいい

(2) 自然な彩度アップが行える
[バイブランス]パラメータを使って彩度を上げると、色の飽和や肌の色味をなるべく変えずに彩度を変更することができる。普通に[彩度]パラメータを上げるより自然な仕上がりになる

そのAperture 2が、2008年3月末に2.1へと再度アップデート。パフォーマンスの改善や不具合の修正が行われたほか、さらなる新機能が追加された。無償アップデートにもかかわらずその中身は充実している。

新機能の目玉は、プラグインのサポート強化だ。サードパーティにも門戸を開き、アップル純正以外のプラグインを利用できるようになったのだ。サードパーティ各社も対応を表明しているほか、ソフトウェア開発キット(SDK)も無償公開されたため、今後プラグインの種類が増えていくと予想される。

FOCUS ON

(3) 8種類の調整が可能に
名称は「覆い焼きと焼き込み」だが、それだけでなく全8種類の調整を行うことができる。左上のプルダウンメニューで調整の種類を選択する

サンプルのプラグインとして、Aperture 2.1には「覆い焼きと焼き込み」が収録されている。アップルが開発したこのプラグインは、明るさやコントラスト、彩度、シャープネスといった項目をブラシを使い微調整できることが特徴だ。これで画像の一部を修正することが可能になり、レタッチソフトに頼らずに済む場面も増えることだろう。

プラグインを起動すると選択した画像が複製され、別ウインドウとして編集画面が現れる。そこでブラシベースの道具を使い、任意の位置をスクラッチすることで、覆い焼きや焼き込みなどの編集を行う仕組みだ。

(4) ブラシで調子を整えられる
「覆い焼きと焼き込み」プラグインを使えば、画像の部分的な修正が可能になる。編集画面は別ウインドウとして表示される

BEFORE

AFTER

(5) 適用範囲を細かく調整
「覆い焼き」でつぶれ気味だった部分を明るく修正。ブラシサイズやブラシの強さを調節できるので、適用範囲を細かく調整できる。適用部分をオーバーレイで確認する機能もある

操作性の改良も行われている。マルチタッチ対応のトラックパッドが装備されている場合、指2本でつまむ(ピンチする)ことで画像を縮小させたり、パッド上をなでる(スワイプ)ことでルーペの表示位置を変更したりできるようになったのだ。現時点における対象機種はMacBook Pro/Air限定だが、マルチタッチUIを先取りすることの意味は大きい。

セカンダリモニタにフルスクリーン用ツールバーを表示できるようになったことも、マルチディスプレイ環境で使うユーザには朗報だ。プライマリはブラウザとして使いセカンダリに候補を表示するという使い方をする場合、メニューバーのあるプライマリに視線を移す必要がなくなるため、セカンダリでの作業に集中できるようになる。斬新さはないが、実用的な新機能といえるだろう。

(6) セカンダリモニタにツールバーを表示
デュアルモニタ環境で使用しているユーザなら、セカンダリモニタにフルスクリーン用のツールバーを表示できる

AFTER REVIEW

プラグインという形ではあるが、これまでレタッチソフトに頼らざるを得なかった部分修正が標準の機能として提供されたことの意味は大きい。現在標準装備のプラグインは1種のみだが、「覆い焼きと焼き込み」1つでも十分利用価値がある。既存のレタッチソフトとどのような機能的棲み分けが行われるのか、また、「Adobe Photoshop Lightroom」など競合製品がどう反応するのか、今後に注目したい。